第十五話「リルドとザック。」
「くそっ、なぜだ!?」
コントローラーを放り投げる。
「一旦休憩しようか?」
気づけば、日も暮れていた。
……
コントローラーを放り投げたまま、呆然としている。
…………
「やってみて、何か思い出したりした?」
少し続いた沈黙を破った。
「いや、特には……。ただ、あの時と同じだったってことしか……。」
《お前が勇者リルドか。一人で来るとは無謀な奴だ。》
《去ねい!》
あの日の記憶が蘇り、歯を食いしばる。
(ゲームとは言え、二度も同じ経験をしたら悔しいよね……。
同じ経験……?そうか……!)
「次は、リルドがとらなそうな行動をしてみたら?」
「俺がやらなそうなこと?」
「うん。例えば、最初のスライムを仲間にするとか!」
急に立ち上がり、声を荒げる。
「仲間なんか必要ない!」
頑なに仲間はいらないと言うリルドに、和馬の中で何かが弾けた。
「一人でやってきた結果が今でしょ!?
リルドだって本当は気付いてるんじゃないの?それにー」
「ある意味、僕たちだって仲間でしょ?お互い足りないものを補って、
助け合って何がいけないのさ!仲間を否定するってことは、僕たちの関係も否定するんだよ!?」
(この感じ、前にも……)
”仲間を否定”その言葉が、旅に出る少し前の出来事を蘇らせた。
「ザック……」
《リルド!?やっぱりリルドじゃないか!》
《誰だ貴様は?気安く話しかけるな!》
《何言って……!ザックだよ!?小さいころ一緒に遊んだ仲間じゃないか!》
「……え!?今、ザックって……?」
気になっていた名前が飛び出し、困惑する和馬。
「いや、旅立つ少し前にザックと言う男が話しかけてきたが、
知らないと追い返したんだ。今思えば、和馬に似ていた気が……。」
(なぜあんな風にきつく追い返してしまったのか……。)
「僕に似ている……?」
「あぁ。よくは思い出せないが……。
それより、すまなかった和馬。いつの間にか、助けてもらっていることに慣れてしまってたみたいだ。」
深く頭を下げる。
「い、いや、僕の方こそ怒鳴っちゃってごめん。」
同じく頭を下げる。
「……なんだか、照れくさいな。」
「リルドも照れることあるんだ?」
「なっ!俺をなんだと思ってるんだ!」
握った拳を振り回すそぶりを見せる。
「ごめんごめん笑じゃあ、気を取り直して再挑戦してみようか!」
転がっていたコントローラーを手渡す。
「あぁ、今度こそ魔王を倒してやる!」
どこか吹っ切れた様子で、コントローラーを強く握る。
まだ少し、耳は赤いままだった。




