第十四話「魔王、再び。」
ーー勇者リルドは、16歳となり魔王アンデュバルを倒しに旅に出る。
タイトル画面が終わり、冒頭のナレーションが流れた。
「本当に俺と同じ名前だ……。魔王の名前まで……。」
コントローラーを握るリルドの手に少し力が入る。
和馬は、画面を見つめたまま静かに息をのんだ。
「す、進めればいいんだな?」
「う、うん。丸ボタンを押せば、次に進むよ。」
教わった通り、丸ボタンを押すと画面が切り替わり
見覚えのある村が映し出された。
「これは……俺が居た村とそっくり……どころか、まるで同じじゃないか!?」
「やっぱり、リルドの居た世界とリンク……繋がっているんじゃ……?」
「つ、次はどうしたらいいんだ?」
「普通のゲームなら、色々な人に話を聞きなが進めて行くんだけど……」
(元の世界と同じ行動をさせたほうが、手掛かりが見つかるかもしれないし……。)
「リルドは、旅立つ時どうした?」
「村長に挨拶に行ったな。」
「じゃあ、村長と話してみよう。十字キーで移動して、
話すときは、目の前に行って丸ボタンね。」
「こうか?」
画面内のリルドが動き出し、村の中央辺りにいる村長に話しかけた。
『おぉ、リルドか。くれぐれも油断せず、まずは村周辺でLV上げをするのじゃ。
できれば、仲間を作ると良いじゃろう。』
「あの時と、ほぼ同じ会話だ……。てことは……。」
再び操作をし、村の外に出た。
少し歩くと、戦闘になった。
ーースライムが現れた。
「やはりか……。和馬、これはどうしたらいいんだ?」
「戦闘は、十字キーで行動を選んで丸ボタンで決定だよ。」
「なるほど。」
操作に慣れてきたのか、スムーズに戦闘は終わった。すると、
ーーなんと、スライムは起き上がって仲間になりたそうにこちらを見ています。
ーー仲間にしますか?
「これも、十字キーで選択して丸ボタンで決定すればいいんだな?」
「うん。操作はもう大丈夫そうだね。」
ーーいいえ。
「え!?」
躊躇なくいいえを選んだことに少し驚いた、その時
《……》
「……ザックよ、リルドを……頼んじゃぞ。」
《……》
突然、聞き覚えのある年寄り風の声が聞こえた。
(ま、また!?……ザック?……リルドを頼む?一体なんなんだ……)
「どうした、和馬?」
「い、今何か喋った……!?」
「ん?俺は何も喋ってないぞ?」
「じゃあ気のせい……かな?」
(前より、はっきり聞こえた気がしたけど……。)
「ところで、なんで仲間にしなかったのさ?」
「ん?元の世界でも仲間にしなかったし、一人で十分だ。」
(スライムでも、仲間にすれば何か役に立つと思うんだけどな……。)
「じゃあとりあえず、そのまま進めてみようか。」
その後、道中大量の敵やレベル不足で苦戦することもあったが
何とか魔王の元に辿り着いた。
「やっと、魔王に辿り着いたな。」
「そう……だね。」
(これじゃあ倒せなかった……はず。)
戦闘を開始するも、リルドの攻撃はほとんどダメージを与えられず、数十ターンが過ぎたころ
「つ、強すぎないか!?」
愕然とするリルドをよそに、画面内に魔王のセリフが流れる。
『貴様では、我には勝てない。出直してくるがよい。』
ーーコンティニューしますか?
ーーはい。
ーー勇者リルドは、16歳となり魔王アンデュバルを倒しに旅に出る。




