第十話「とあるゲームショップ。」
「か、和馬!落ち着いてくれ!」
「大丈夫だって!ほらっ、もう着いたから!」
見上げると、【ゲームショップ冒険屋】と書かれていた。
中に入ると、和馬の家で見たような薄く四角い箱が棚一面に飾られている。
「お疲れ様です~!店長いますか?」
ーちょっとまっての~
年配風の声とともに、カウンター奥の扉がギィ………と音を立てて開いた。
「なんじゃ、和馬じゃないか。どうしたんじゃ?」
出てきたのは、声と喋り方とは裏腹に30代くらいの体格のいい男だった。
「急で申し訳ないんですが、今からバイトの面接ってできますか?」
「いきなりじゃな。まぁ、丁度人を増やそうと思ってたところじゃし。そっちの子かい?」
「はい!リルドって言う友人なんですけど、ちょっと訳ありで……。」
「和馬、俺はまだやるとはー(ヒソヒソ)」
「お金必要だよね?(ヒソヒソ)」
(くっ……)「リルドだ。よろしく……頼む……。」
「(小声で)リルドです。よろしくお願いします。でしょっ」
軽く肩でつつく。
「ふむ。とりあえず、裏で話を聞こうかの。」
リルドは、店長に店の奥へと連れていかれた。
(ちょっと強引だったけど、大丈夫かなぁ……。)
***
「よし、改めて名前を教えてくれるかの?」
「リルドだ。いや、です。」
「リルド……君ね……。」(本名だったのか。いや、まさか……)
「どうかしたか?」
「ん?あぁ、すまんすまん。特技はあるかい?」
「剣、魔法、基本何でもできる。」
「ほっほっほっ!まるで勇者じゃの!」
「まるで、じゃなく勇者だ!」
……
(今どきの”オタク”ってやつかの?)
少し咳ばらいをしつつ、座りなおす店長。
「うちは、”ゲームショップ冒険屋”って名前の通り、ゲームの中でも特にRPGに力を入れている店なんじゃよ。」
「あのアールピージーか!」
(あのが、どれかわからんが……。)
「じゃから、リルド君みたいのが働いてくれたらいい宣伝になるかもしれんの。働いてみるかい?」
ーガタッ!
「い、いいのか!?恩に着る!」
「明日なら和馬もおるし、急だけど来れるかい?」
「任せておけ!」
と、ドンっと胸を叩き、勢いよく部屋から出て行った。
***
「お!もう終わったの?」
「ふっ。なんてことなかったな!」
「そっかそっか笑」
苦笑いしつつ、胸を撫でおろす。
「いつからだって?」
「和馬もいるから、明日から来いと言われた!」
「じゃあ、明日からビシバシ鍛えるね。」
「任せておけ!」




