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第零話 「勇者、魔王に挑む。」

―大抵のことはなんでもできる―


 これは、俺の口癖だ。なんでもやればすぐに覚えてしまう。物心付いた頃には、身の回りのことも全部一人でこなしてきた。きっと自分は特別なのだろう。そう思い続け、16年。

 特別だと思い続けたのは、なんでもできるからだけではない。どうやら俺は、勇者らしい。こんなへんぴな村で勇者なんて笑ってしまうが、


―リルド・ベルフェ―


 と書かれた紙と一緒に、村の入り口に置き去りにされていたと村長が言っていた。

 それでどうして勇者かって?

 これも村長から聞いた話だが、ベルフェとは代々勇者の受け継いできた名前らしい。

 まぁ、正直名前が正しいとも限らないが、大抵のことはすぐにできてしまうし

 何より、髪が青いからきっとそうなんだろう。歴代の勇者も、髪が青く、学習能力もずば抜けて高ったらしい。


 そして、今日は丁度16歳の誕生日。村を出て、魔王を倒す旅に出る記念すべき日だ。魔物と戦ったことはないが、まぁすぐに覚えるから問題ないだろう。

 俺は身支度を整え、村長の家に寄った。


「村長ー?、そろそろ行ってくるよ。」


 部屋の奥から髭の長い老人が出てきた。


「おぉ、リルドか。くれぐれも油断はせず、まずは村の周辺でLVを上げなさい。そしてできれば、仲間を―」

「はいはい。大丈夫だって。サクッと魔王倒してきちゃうからゆっくり茶でも飲んで待ってなよ。」


(大丈夫かのぉ、こやつは……。)


 サクッと挨拶を済ませて、俺は村を出た。

 まずは、山の向こうの街で装備を整えよう。そう思いながら歩いていると、スライムが現れた。


「何だ、スライムか。素手でもいいくらいだな。」

「ピギィ!!」

「いっちょ前に怒ってやがるのか。」


 めんどくさいけど、経験値の為か。

 そう思い、銅の剣を抜き一振りした。スライムは、あっけなく倒れてしまった。


―テレテレテレテレ―


 変な音とともに、勇者はLV2になった。


「やっぱスライムだな。」


 剣をしまい、歩き出そうとしたとき、何とスライムが起き上がって勇者を見ている。


「なんだこいつ、弱いくせに。そんな仲間になりたそうな目で見てこられても困る。さっさと消えろ。」


 すると、落ち込んだようにスライムは去って行った。

 程なくして、勇者は山に辿り着いた。


「ここを越えれば、最初の街だな。」


 山に入るとすぐに、ビックベアが現れた。


「今度は、ビッグベアか。さっきLVも上がったし、楽勝だろ。」


 勇者は、銅の剣を抜きビックベアに切りかかった。しかし、ビックベアの振り下ろした腕に吹っ飛ばされてしまいあっけなく倒されてしまった。


―おぉ、死んでしまうとは情けない―


 目が覚めると、そこは村の教会だった。


「どうして俺はここに?」

「シンダカラダヨ!ちゃんとLV上げしろって、村長にもイワレタデショ?シッカリシロ勇者よ。罰として所持金半分モラッタカラネ。」


(なんでこの神父はちょいちょいカタコトなんだ……)


「って、そんなこと思ってる場合じゃない。流石に舐めすぎてたか。」


 気を取り直し、再び村を出た勇者。すぐに山の麓まで戻ってきた。


「流石にもう少しLV上げないと。少しこの辺りで修行しよう。」


 麓周辺で、剣を振り、時に出てきた魔物を倒し、順調にLVを上げていった勇者。


「回復呪文も覚えたし、そろそろ行くか。」


 再び山に登り、道中の魔物に苦戦することもなく無事街に辿り着いた。



―その後、道中色々とあったが3年後、ついに魔王城に辿り着いた―


「ついに、ここまで来たぞ魔王アンデュ・パル!」


 剣を構え、いつでも切りかかれる態勢をとる。


「お前が勇者リルドか。一人で来るとは無謀な奴だ。」

「仲間など、ただ足手まといが増えるだけだ。貴様なんぞ俺一人で十分だ。」


 剣を振り、魔王の胸元目掛け飛び掛かる。


「去ねい!」


 魔王の振りかざした右手が勇者を弾き飛ばす。


「ぐはっ!!!こ、こんなはずじゃ……」


 勇者はあっけなく倒されてしまった。


「勇者リルドよ。貴様は確かに強い。ここまで一人で来れるくらいだからな。しかし、分かっていないようだ。このまま息の根を止めるのは容易いが、一つチャンスをやろう。」


 もはや勇者の耳には届いていない。

 魔王は、左手を勇者に向けて何やらつぶやいた。

 すると、勇者の体が光、そして消えていった。


「さて、どういった成長を遂げるのか。そして我を―」


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