9話 変な奴らに絡まれたので、返り討ちにしました。拍手喝采です。
引き続きよろしくお願いします!!
「……というか、見たことあると思えば。
ふんっ。落ちこぼれエルフのサーニャじゃねぇか。笑わせるぜ。パーティー組んだってのか? お前の実力で?」
「いやぁ傑作かもしれねぇわ」
センターライン以外を刈り上げた、いかつい髪型の男二人組が、こちらを指差して卑しく笑った。
俺は口に手を当て、声を潜める。
「サーニャ、知り合いなのか?」
「……うん。この春まで魔法学校の同級生だったの。だけど、仲良くはなかった、かな……。怖いって避けてたくらいで」
「なるほど。見るからに柄悪いしなぁ」
学生生活で関わりたくないランキングぶっちぎりの一位だ。
絶対面倒くさいじゃん?
防具に無駄な装飾をつけているあたり、より厄介そうだ。
「おい、そこのお前。聞こえてんぞ。斬り殺されてぇのか!?」
男の一方が、目を血走らせて、俺の方へと掴みかからんとする。
感情に支配された行動を読むことほど、楽なことはない。
はじめは避けていたのだが、
「ちっ、もういいっ! おら、こっちこいサーニャ!」
こうなれば話は別だ。
伸びてきた腕を捕まえ、ちょーっと手首を捻り返してやると、
「ぐ、ぐぁぁっ!?」
男は悲鳴を上げて、自分の拳を腹に抱え込んだ。
くそが、と謎の負け惜しみとともに、こちらへ唾を吐く。
輩どもはいよいよ怒りが頂点に達したらしい。
「てめぇ、絶対にゆるさねぇ!!」
かすれ声の絶叫とともに、ソードが抜かれる。
俺の剣は我流、最強、無敵などと、べらべら舌を回していた。
刀そのものの出来は、そこそこよさそうだが、腕が立たなければナマクラと大差ない。
けれど、サーニャは恐怖を植え付けられているのか、手を震わせていた。
俺は身体を割り入れてかばう。代わってミリリが前へ出てきた。
「ヨシュア。せっかく数もぴったりだし、一人ずつってどうかな?」
「……いいんじゃない」
「サーニャちゃん、ここは私たちに任せてよ。お姉さんたち、強いんだ〜。我流、最強、無敵なのっ」
めっちゃ煽るね、ミリリさん。
「てめぇこのアマ! 可愛いからって許されると思ってんじゃねぇぞ」
「こっちが許そうと思ってないよーだ」
「てめぇ、服はいでやらぁ!!」
彼女の思惑どおりか、それぞれ一対一で対峙することになった。
俺は剣を抜かず、ニュートラルの姿勢で、輩の一人を睨み付ける。
「な、なんだ、てめぇ! 本当にやっちまうぞ!?」
大きく刀が振りかざされる。
それが下されたと同時、サーニャの悲鳴がした。
けれど、もちろん俺は無事だ。
素早く鞘を走らせ、
「な、なんで、こっちが折れるんだぁ!?」
輩の手にしていた刀を割ってやった。
とくに魔法を使わずとも、完全に粉々である。
「せっかく卒業祝いに買ったのに!」
「残念ながら、もうそこまで刃が溢れたら直らないな」
「く、くそ。さては剣の師範もやってんのか。ば、化け物め……! 近づくな!」
長剣の習熟度はまだBなんだけど。
とは、わざわざ言わない。
「いいだろう。けど、交換条件だ。金輪際、サーニャに近づくな」
「わ、分かった、分かったから!」
さて、ミリリの方はと、俺は隣をふりみる。
彼女の敵も、もう地面にのされていた。
「えへん。念のため、念のため♪」
男の武器であった大鉈が、あっさり破壊される。
「固きものを砕け、魔の粉砕!」
魔道士は、ユニーク魔法を編み出すのにたけているらしい。
今使ったのも、それらしかった。属性をあえて使わない、無属性魔法だ。
男たちは阿鼻叫喚し、ショックのあまり気を失う。
近くにいた冒険者からの拍手が響き渡った。
「……やりすぎだな、こればかりは」
つい、やってしまった。
もっと適度にいい戦いを演じておけば、と思うが、後の祭りである。
サーニャは人見知りを発動したのか、きょろきょろと周囲を見回して落ち着きがなかった。
ミリリはといえば、
「レンタル冒険者! 私たち好評貸し出し中です!」
がっつり宣伝。
しかも、俺が今後も協力してくれることは既定路線らしい。
「ごめんな、サーニャ。無駄に目立っちゃって」
「えっ、あ、いや。……むしろ、ありがとうございます」
「あんなのを怖がることないからな。エルフが珍しいからって嫉妬してるんだ、きっと」
「……あの、ヨシュアさん。今日は一度帰ってもいいかな」
「おう。一度立て直そうか。ミリリにも聞いて、だけど」
注目の的となったままでは、色々とやりづらい。
「ほら帰るぞー、ミリリ」
「えー、もうちょっと! 大丈夫だよ、あいつらなら完全に伸びてるから! まだチラシ余ってるからー!」
商魂たくましいな、ミリリちゃん。
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