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7話 お試しレンタル冒険者、始まるようです。



引き続き、よろしくお願いします。


ちょうど、おあつらえ向きの依頼がきていたらしい。


翌日の昼下がり。

俺は指定された待ち合わせ場所でミリリと二人、依頼人を待っていた。


パーティーを追放されたときには考えもしなかった展開だ。


悲しいやら、ワクワクするやらで、昨日はなかなか寝つけなかった。

パーティーメンバーと鉢合わせぬよう、宿をかえたこともある。


気づけば日がのぼっていて、目の下にはクマができた。


初仕事では最悪の印象である。

必死に消して、今を迎えていた。


しかし、そんな寝不足も、


「はい、冒険者衣装返すね。ばっちり縫ってきたよっ、私の自信作だー!」

「…………なに、これ」


あっさり吹き飛んだ。


見慣れたモノトーン色の冒険者衣装。その裾に、紫のアサガオが踊っていたのだ。


わーお。

いや、すごすぎる。若干乙女っぽいが、これは中々できるものじゃない。


「ありがとう……。びっくりしたよ」

「えへへ、よかった〜。不評なら縫い直す覚悟だったから嬉しいかもっ」


それこそ、花をつけたような笑顔でミリリは笑う。


「じゃあ今日はよろしくね? やっぱりなにごともお試し、体験からだっ。今日は頑張ろう! おー!」


底抜けのパワフルぶりだった。

彼女は、腕を空へ向けて伸ばす。


昨日はあれから、二人でしばらく話し込んだ。

その中で、同い年の十八歳だと判明。一気に、俺たちの距離は縮まったのだ。


いや正確に言うなら、ほぼ一方的に詰められていた。


「あっ、ヨシュア! 刺繍の代金分、今度ご飯奢りね! たっぷりチーズな感じがいいかも。他にはチーズとか、チーズがいいかもっ」

「……チーズしかないじゃん。別にいいけど、それぐらい」

「もー、ミリリジョークだよ。もちろん、無償提供だっ! でも、二人でご飯は行きたいかなぁ」


天性の明るさ、恐るべしである。


ぐいぐい押してくる爆裂トークに俺が半ば気圧されていると、


「あの、ミリリさん、ですよね……? レンタル冒険者の」


彼女の肩口から、声がかかった。


少女は装備品である大きな盾に、体を隠すように丸めていた。

不安げなのが手に取るようにわかる。


「はいっ、あなたの想いに応えていつでもレンタル! ミリリですっ! サーニャちゃん、お待ちしておりましたっ!」


標語みたいなミリリの自己紹介はともかく。


「は、はい。よろしくお願いします。サーニャ・エスカルトです……」


本日の依頼人が到着したらしい。


基本情報はすでに依頼書で確認していた。


年齢は俺たちの二つ下、十六。魔法学校を出たての年齢だ。

今ではその数を減らしている、エルフ種族らしい。


といっても、耳が少し尖っている以外は、人と変わらない。

スカーフを結ぶことで隠れているため、尚更だ。


おっとりしているが、その抜け感がまた可愛らしかった。


「は、はいっ。まだ駆け出しなんですけど、武器は盾で、タンク職をさせていただいています……」

「うんうん、聞いてるよっ。

 それで、まだパーティーを組めてないから、試しに魔物狩りへ出てみたいんだよねっ。

 その心熱いっ、めっちゃ熱いよっ!」


ミリリは一人きゃあきゃあ興奮して、拳を握りしめる。


サーニャが引いているんだが……?


このままでは会話が成立しそうにもない。


「それで、今日はなにを狩りにいくんだっけ?」


代わって俺が尋ねる。


レンタルとはいえ、一時的にはパーティーを組むことになるため、あえて言葉遣いは崩していた。


この辺の交友能力も、『平均』でいるために鍛えてあった。


「あ、えっと、ゴブリンを……。その、ドロップアイテムの棍棒が欲しいんです、はい。武器の強化に使いたくて」

「ん。だったら、普通に棍棒を買えばいいんじゃ?」


下世話だが、昨日聞いた限り、レンタル代金はそれなりの額である。


「えっと、自分で倒してみたい、といいますか」

「なるほどなー。……うん、気持ちは分かるかもしれない」


自分で討伐した魔物のドロップアイテムというのは、それだけで特別に思えるものだ。

俺もはじめはそうだった。


「ゴブリンがよく出現するのは……、いにしえの丘あたりかな? そこに行くってことでいいか?」


初級者にはやや難度が高いが、ゴブリンが入ってすぐに現れるので、今回の依頼にはうってつけだ。


そうおもったのだが、少女は首を横に振る。


「その、こっち、かな。ツクヨ池のほうに行きたいかもしれません。

 ゴブリンも数は少ないですけど、一応出るみたいですし、あたし、初心者なので……」

「分かった。たしかに、そっちの方が初級向けではあるな」


冒険者が訪れる数も多く、比較的安全でもある。

ドロップアイテムを入手したいだけではなく、経験も兼ねるなら、その方がよかろう。


不意に、ミリリが「よーし!!」と天井へ向かって、腕を突き上げる。


「ここが冒険者のスタート地点だね。これから頑張っていこうね、サーニャちゃん!」

「えっ、あっ、はいっ! ミリリ、さん……」

「遠慮しなくていいよ、ミリリって呼び捨てにしてね。期間限定だけど、パーティーなんだからさ♪」


ミリリがどーんと、サーニャへ体をくっつける。

引き連れるようにして、先々歩きだした。


「……ミリリはすげぇな」


呟きつつ、俺は腰にさげた刀に目をやった。

昨日の短剣とは違い、長尺のものである。


前パーティー『彗星の一団』では、リーダーのサンタナが剣士だったため、しばらく使用する機会のなかった得物だ。


魔導師のミリリに、タンクのサーニャ。

バランスを見れば、今回の任務には刀が最適解なのは火を見るより明らか。


……と言いつつ、武器選びにはかなり時間がかかったわけだが。


前パーティーでは短剣しか使ってこなかったせいだ。

色々な武器を吟味する時間は、それだけで幸せなものだった。



次回、さっそく無双してしまうようです……!



お読みいただき、ありがとうございます。

楽しんでいただけますよう頑張ります。


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