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61話 意地を張った理由は、嫉妬?






「犯人の目星はついてるんだ。私だって、馬鹿じゃないもん」


部屋に入り、小机を囲むなり、ミリリが言う。


俺の粘り強さ(しつこさ、と言うべきか)に、すっかり堪忍したらしい。


俺があえて聞くまでもなく、彼女は語る。


「まぁちょっとした縁があってね。私が魔法学校に通ってた頃の同級生なんだよ。

 私がクラスの代議員で、今回の犯人、ゾリアルっていうんだけど。その子は言っちゃえば、手のかかる感じの男子生徒だったんだ」

「……それで? なんで、こんな噂を流されるようなことになるんだよ」

「うん、それなんだけどね……。そのゾリアルが悪い組織に勧誘されてるのを知っちゃってね、しつこく引き止めたんだよ」


言うによれば、わざわざ授業後につけまわしたり、家に出向いたりなんてことまでしたらしい。


……お節介焼きがすぎるミリリを思えば、ありえない行為ではない。


「でも、むしろ逆効果だったんだ。たぶん反抗したかったんだろうね、どんどん組織にのめり込んでいって、私は目の敵にされるようになったの。

 それから何度か、あーやって嫌がらせは受けたんだ。でも、ここまで酷いものじゃなかったから……」

「もしかしたら、そのゾリアルってやつの、組織での序列があがった、とかかもな」


ここからは想像の域を出ないが……。


どれだけ昇進しても、消えない過去として残るミリリとの因縁にケリをつけるため、今回のような謀略を仕掛けてきた、というところか。


「とにかく、これで分かったでしょ? 私が悪いの、この件は」

「どこがだよ、ミリリが悪いところなんてむしろ行方不明だっての」

「ううん、私がゾリアルをその組織に入れたようなもんじゃん! だから私が悪いし、これは私の問題なの」


俺は呆気にとられてしまう。


いっそ怖くなってくるくらいの正義感の強さだ。


自分の言うことを聞かなかったからそうなったのだ、と投げ捨てていいところを、わざわざ自分の責任として背負い込む。


俺にそこまでの正義感があるかと問われれば、たぶんない。


「とにかくヨシュアはもう気にしないで?」


でも、だからと言って引き下がれるような俺ではなかった。


「今更そんなことできるかよ、これまでずっと協力してやってきただろ?」

「こ、これまではこれまでだよ」

「これからも変わらないっての。俺はミリリがいるから、ここにいられるんだ。あのとき、ミリリに会ってなかったら今頃なにしてたかもわからん」


もしかしたら、やるべきことも見つからずいまだに無職を続けていたかもしれないし、仲間を持つということに抵抗感を覚えていたこともあるかもしれない。



でも、ミリリだったからそうならずに済んだのだ。


彼女の天性の明るさとそのペースが、俺を正しい方へ導いてくれた。


「1人で、敵の罠にわざと嵌るような真似しなくてもいい。俺を、頼ってくれよ」


だから、ただでは俺も引けない。


「でも……」

「でも、じゃないって」

「でも、なの! だって、だって、だって、どーせヨシュアはソフィアちゃん優先でしょっ!!」


そのセリフは、頭にのぼっていた血を一気に引き下げた。


……へ?


俺がキョトンとしていると、ミリリはビシッと一枚の便箋を俺につきつける。


そこには、


『どうせお前の味方をするものはいない。ヨシュア・エンリケという冒険者は、お前より先に髪の長い冒険者を助けたのだから』


だなんて書かれている。


俺は、ため息をついて頭を抱える。


「これ、本気にしたのか……?」


まさか、そんな子供だましの揺動に引っ掛かっていたとは。

さすがは純粋すぎる少女である。


「なっ、本気にしちゃ悪いっ? だって、幼馴染だし私より大事でしょっ」


「どっちがどうもない。俺は2人とも大切な仲間だと思ってるよ」

「でも、先にソフィアちゃん助けたって書いてるしぃ〜」


「そりゃあそうだけど。それはミリリを信用してたからだよ」

「…………し、信用?」

「なに信用って言葉初めて聞いたみたいな顔してるんだよ。そう、信用だ。ミリリの強さなら万が一にも、あんな奴らに負けない。

 そう思ったんだよ。純粋に、力で比べただけだ」


「……………なに、それ」

「なにそれはこっちのセリフだよ、まったく」


本当に、この子ときたら。


でも、これで誤解もとけた。すれ違いは終わりだ。


俺が手を差し出し握手を求めると、彼女はその手をぐっと掴んで、ぶんぶん雑に振る。


涙目にまでなっていた。

どうしたものか。思いながらも、ここは強引に、一方的に告げてやる。


「ミリリ、一緒に倒しに行こうぜ、その悪い組織。どうか俺を借りてくれ。

 もちろん、無料レンタルで結構だ。仲間だからな」


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たかた

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