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57話 間一髪?



お仲間というのが誰のことを指すのか。

そこまでは、その男も知らないらしかった。


もしかしたら土壇場で口をついた、虚言かもしれない。


そうは思うのだが、胸に走った嫌な予感が、俺をかき立てた。


すぐに『広範探知(高)』を使うと、仲間たちの居場所を把握する。


一つ一つ、候補を潰していくような時間はない。

誰の元へ向かうべきか選択しなければ、全てが中途半端に終わって、最悪の結果になる。


そして俺が向かったのはーーーー





まさか、こんなところに監禁されようとは、思いもしなかった。


私は口に巻かれた縄を噛みちぎろうとするが、失敗する。両手首を結んだ紐も、簡単には千切れてくれない。


どうやら、【強固】の魔法がかけられているらしかった。スキルの一つで、物体を壊れにくくする。


数分前までは、観客席で試験の模擬試合を見ていたはずだ。

大好きなヨシュアが敵をころっと倒すのを見て、ミリリちゃんと一緒に歓声を上げ、そこまでだった。


彼女が少し席を外した際に、警備員の服装をした男に呼び止められ、連れて行かれる。


そうと思えば、身体を拘束されてしまった。足も縛りつけられて、立つこともできない。


(……うちを捕まえて、どうするつもりなの)


私は身をよじり、唯一自由のきく目で、監視員を睨みつける。


「ソフィアだっけ、あんた。そう怖い目をしないでよ。女のそういう目が一番嫌いなのよっ」


女だった。

腕が立つのは、先ほど戦闘を交えたので知っている。


抵抗にならなかった。悔しいほどに打ち負かされて、弓をずたずたにされた。


「最悪あんたは殺してもいい、って聞いてんだよ、あたいは。質問に答えなよ、じゃないと本当に殺すよー」


私はただ、視線をきっとすがめて答える。


足手まといはもういやだった。

これ以上、ヨシュアにとっての枷になりたくなかった。


自分がヨシュアやミリリと比べて、弱いことは知っている。でも、心まで負けているわけじゃない。


「ミリリって冒険者が、手を貸した冒険者の名前を教えるだけでいいんだって。早く教えてくれよ」


女は、ばさばさの髪を振り乱して、あぁもう! と悪態をつく。


「あたいだって、馬鹿な話だと思うよ。昔の腐れ縁にこだわって、こんなしょうもない復讐するなんて、うちの大将らしくもない。

 汚いことやって、とんとん拍子に成り上がったのくせに、なにに囚われてんだって思うさ」


女は、床に唾を吐き捨てる。そのあとすぐ、短剣をこちらへ向けてきた。


「でも、命令は絶対だから。答えないなら、あんたとはここでお別れさね。ばいばーい」


手首が返される。

短剣が首に向かって弧を描くので、私はギュッと目を瞑る。


怖くないわけがないし、死んだらダメだとも分かっていた。


でも、それでも、それで好きな人たちを守れないのは嫌!

だからこれで終わりになっても、それはそれでしょうがない。


ぎりぎりのところでそう納得しようとしていたのだが、痛みがなかなかやってこなくて、目を開ける。


「お、お前は!! なんで、あたいの前にいるんだい?」


首元で刃が止まっていた。押し返していたのは、小さな魔力の塊だった。


女が、立ち上がって後ろを振り返る。


その隙に、私は自由になっていた。半ば混乱して、呆然と私は上を見上げる。


「もう大丈夫だぞ、ソフィア」


そこには、ヨシュアが立っていた。

彼はそっと私に微笑みかけてくれる。じわりじわり目元が熱くなってきて、泣きそうになるがそこで堪えた。


今は、戦わないと。

ヨシュアに守られてばかりにはなりたくないのだ。


自由になった足を使って、えいと女の足を蹴り上げる。

よろめいた結果、女は地面に這いつくばった。


「く、くそっ。あんた、いつの間に!?」

「さて、どういうわけだか教えてもらおうか」


ヨシュアが、女に刀を向ける。


「こ、こ、答えるものかっ!!」

「知ってたか? レンタル冒険者は、殺しも請け負ったたりするんだよ、裏稼業で」


嘘もいいところの大ハッタリがかまされる。

しかし、それを信じたらしい女は、白目を剥き泡を拭いてしまった。


…………逆に、話を聞けなくなってしまった。


「ヨシュア、脅しにしたってやりすぎ」

「…………だったみたいだな。えっと、怪我は?」

「ない。ありがとう、本当にありがとうね、ヨシュア」


私は我慢ならず、彼に抱きつく。


「間に合ってよかったよ。…………というかソフィアさ」

「なに?」

「匂い嗅いでただろ、今」


バレてしまったらしょうがない。いっそ振り切って、肩に思いっきり顔をうずめた。




新作始めています!!



『謝罪会見から始まるラブコメ! 「実は私、好きな人がいます」〜初恋だった国民的美少女アイドルちゃんが、突然休業宣言してまで貧乏学生な俺にグイグイくる件(俺の住むアパート買い上げたうえ、家も隣かよ!)〜』


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ぜひ合わせてチェックしてくださいませ!


(下部にリンクもあります)

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