56話 裏路地での奇襲もあっさり返り討ち?
別作品の書籍化作業のため、更新が止まっていましたが、区切りまで更新します。
一瞬、戦斧を手にしていた男が、怯んだように後退する。
しかし次の瞬間には唇の片方を痙攣らせながら、刃を振り下ろしてきた。
強烈な打撃だった。もしまともに受けようものなら、刀にヒビが入ってもおかしくない。俺は斜めにはたき落とすことで、勢いを殺す。
路地裏の、整備されぬ地面に突き刺さったのを見て、男の首元へ剣をあてがった。
「ふ、ふ、ふはは。終わったと思ったら大間違いだぜ」
なんのハッタリかと思うが、わらわらと武装した集団が姿を見せた。
俺はひとまず男の背中を峰で打って、意識を飛ばさせる。
「結構な数がいるもんだなぁ、おい」
一体なにが目的だと言うのだろう。
改めて、それが分からなくなる。昇格試験のライバルを減らすため? いやいや、だとすれば、俺に対してのみ兵力をかけすぎだろう。
「怯んでるんじゃねぇの、こいつ!! 報酬はもらった!!」
一番槍とばかり、切っ先が躊躇なく刺しにくる。
殺気と獲物だけは一人前だが、実に単純だ。
喧嘩と戦いは別物である。感情のみで振るわれた力ほど見破りやすいものもない。
俺は首を捻って避けると、槍の先へ、電撃魔法を流す。
「グァァッ!!」
カエルの潰れたような声を喉から絞り上げさせたら、同時に槍を奪い去る。
かなりの長尺だった。
下手なものほど、大きなものを使いたがると言うが……。
ここまできたら、達人でなければ扱えないかもしれない。
しかし、その点俺には、『無限変化』がある。大槍とて、使いようだ。
俺は柄の真ん中を持つと、そこを軸にして、回転を加えていく。
「な、な、見えないぞ!?」
思惑どおり、翻弄されてくれた。むやみに武器を突き入れてくる者もいたが、全て弾かれる。
……武器を無駄にするだけだから、やめとけよ。
思いつつも、敵に塩を送るような真似はするまい。
俺は、風の魔力でもって大槍を浮かせる。回転させたまま、手を離した。
スキル『隠密(中)』を発動し、気配を消して、屋根上へと飛び乗る。
「せこいぞ!? とっとと出てきやがれ、それでもAランクに昇格したい冒険者か!?」
「そうだ、正々堂々やりやがれってんだ、バーロー!」
いやいや、思いっきり集団で、それも影で襲ってきた奴らが何を言うのか。
うーん、ここまで綺麗に決まると、しばらく眺めていたくなるが、それほど暇でもない。
俺は後ろへと回り、揺動したそいつらを峰打ちで沈めていく。
最後の一人を、捕まえると、さきほどの大槍を手にした。
それを喉仏へと向ける。
「なんでこんなことをした。喋れ」
むろん、ただの脅しだ。こんな奴らを殺した罪に問われるなんて、考えられない。
レンタル冒険者的にも禁則だろう。
「ひっ、ひっ、ひっ!!」
「早く答えないと、突くぞ」
その男はケタケタと不気味な笑い声を漏らし、体を痙攣させた。
「もう作戦はうまくいってんだよ! 残念ながらな!」
「……は?」
「お前の大事なお仲間さんは、今頃俺たちの仲間が始末してるだろうぜ」
おしらせ
たかたの作品
『えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 血の力で急遽大覚醒。世界最強のオールラウンダーに成り上がり、美少女たちに溺愛されますが、本人は至って謙虚です』
ですが、8月下旬の出荷予定でアルファポリス様より書籍化いたします。
つきましては、近日中に取り下げさせていただきますので、大変申し訳ありませんがご了承くださいませ。
詳細は、活動報告をご覧くださいませ!




