55話 スキルを駆使して、追跡したところ……?
遅くなりました。申し訳ありません!
すぐ後に組まれていた第二試合は、それなりに競ったふうに見せかけ、勝利したのち。
俺は、もう動き出していた。
試合中にも、考えていた甲斐があった。
すでに、犯人の目星がついていたのだ。
俺がさっき、まきびしに引っかかりかけたのは、参加者と運営以外は立ち入れぬ区域だった。
そしてわざわざ人気のない道を通るよう誘導したのは、一人の係員である。
そいつが、なにか関係あるに違いない。
運営に変な人間が紛れ込んでいたなら、団体試験の際の妨害が黙認されたことにも説明がつく。
運営の腕章をつけた人間を、ざっと見回してみる。
一見したところ、その姿は見つからなかった。
だが、どこかで見ている。
その確信が、俺にはあった。
普通、狙う対象から目を切るということは考えられまい。
万が一にも勘づかれぬよう、ごく自然な振る舞い。
俺は、参加者たちの集う控え室を後にする。
何気なく、人気のいないところまで足を運んだところ、背後からわずかな視線を感じた。
スキル『広範探知(高)』を発動し、相手の場所を正確に把握する。
だが、ここでただ捕まえるわけじゃない。
俺は地面に風魔法を這わせ、そいつにひっそりと纏わせる。
続けて、『俊敏(高)』を発動して、その場を後にした。
「…………なっ!」
思わずだろう。
そんな声が漏れるのが聞こえたが、お構いなしだ。
俺は逆に男の背後へと回る。
尾けられたら、尾け返す。とまぁ、そういうわけだ。
俺の姿を見失った男は、挙動不審にあたりを歩き回る。
「君、持ち場はどこだ。早く戻りなさい」
他の運営員にそう声をかけられ、挙動不審な応対をしていた。
俺のことは完全に見失っている。気配がするわけもないのだから、彼の能力の問題ではない。
なぜなら、スキル『隠密(中)』を絶賛起動中だからである。
このスキルが影に隠れるのに有効なのは、証明済だ。
男は、しばらく俺を探したのち諦めたのか、裏手へと下がる。
運営員の制服とは違った衣装で、会場を後にして、街の中へと溶けていく。
蒼白した顔で向かったのは、
「す、すいません、見失ってしまいました」
お祭り騒ぎで混乱を極める街中の、裏路地であった。
ここまで予想通りに動いてくれるとは思わなかったが、まさしく大当たり。
尾行対象を見失った下っ端が取る行動はといえば、
「なんだと……? くそ、なんて使えねぇんだ」
「た、大変申し訳ありません!」
「もういい、別のものに行かせる。どーせ三戦目になったら、もう一回出てくるんだ」
上への報告しかない。
俺は、屋根瓦に乗って、その様子を眺める。
短髪で、筋肉隆々の男だった。見覚えがあると思えば、団体戦の時に襲いかかってきた集団の一人だ。
「……は、では私は…………」
「お前? そりゃあ、こうだろ」
男は葉巻を地面に吐き捨てると、踏みにじってニタリと笑う。
首元に一文字を切って、戦斧を手に取った。
俺は、とっさに割り入っていた。




