37話 町の井戸に大量に水を貯めるのも、探知もあっという間です!
頑張りますよっ!!
できるだけ短時間で事を運ばねば、より事態が悪化しかねない。
そこで俺たちは、役割を分担することとなった。
「ルリはまたここで治療か〜。うん、やるしかないよねぇヒーラーのさだめ的な奴だし」
まずルリはここに残って治療。
「……うちは、『水を使わないように』って伝えてくる。が、頑張る」
そしてソフィアは、住民への呼びかけ。
内気な彼女には、ルリママが付き添ってくれるらしい。
ミリリはーーーー、
「わ、私、もう大丈夫だからねっ! ヨシュアと一緒に、山に入るよっ」
あくまで病み上がり。
置いていこうかと思っていたが、拳を握りしめ、俺を食い入るように見つめる双眸は気合十分だ。
「ほんとに大丈夫か? 無理してない?」
「うんっ! ヨシュアとルリちゃんのおかげでね。よーし、じゃあ急ごうっ!!」
ミリリは早速、駆け出そうとする。
「ちょっと待った」
俺は、はしっとその腕を掴んだ。
「……む。行くな〜、とか言うんでしょ? どうしても、行きます〜だ!」
「そうじゃないって。一緒に来てもらうつもりだよ」
ミリリのほっとした顔を見てから、俺はルリに問いかける。
「なぁ、どこかに大きな貯水槽とかって……ないか?」
「…………今は使ってない古井戸ならあるケド? もうどことも繋がってないやつ」
そういえば、来るときにも見かけていたっけ。
「それだ。よし、まずはそこだな」
「ヨシュっち、なにするつもりなの?」
「簡単なことだよ。そこに、水を溜めておくから、困ったらそっちを使ってもらってくれ」
今度こそ、俺はミリリを伴って、ルリの家を後にする。
人のいない通りに、ぽつんと目立つ古井戸を覗き込む。
多少の汚れはあったが、それは風魔法を使えば容易く除くことができた。
そして、
「水よ、我が申し出に答えて集まり、湖となれ。『大水召喚』!」
久しぶりの大技を発動してやった。
ミリリが強化魔法をかけてくれることにより、さらに勢いは増していく。
「……あっという間だ…………」
井戸に、目一杯の水が溜まった。
俺は上からそれを覗き込む。自分とミリリの顔が、綺麗に写り込んでいた。
水の純度は、魔法の精度に由来する。
上々の出来と言えよう。
「これ、生活用の水なら、悠に一ヶ月はみんな暮らせるんじゃない!?」
「って、半分はミリリのおかげだからな」
「私の補助魔法なんて、ちょこっとの話だよっ。ヨシュアすごすぎ…………。格好いいっ!
って、じゃなくて! うん、切り替えるよっ。よーし、山に乗り込みだ!」
「そうだな……。久々に、派手にやろうか」
誰一人として出歩いてないことが、魔法使用においては、まぁ都合がよかった。
俺は、すぐそばにそびえ立つ山々を見上げる。
用意をせずに突っ込めば、昼でも迷ってしまいそうなほど、木々が立派に茂っていた。
「なんか、嫌な感じがするよ、ヨシュア」
「ミリリもそう思うか」
魔物が寄り付かないはずの、ダンジョンの外。
けれど、鬱蒼とした緑からは、淀んだ空気がどろりと滲み出ている。
ヒールばかりに専念していて中にこもっていて、気づかなかったらしい。
「スキル発動『広範探知(高)』!」
「で、でたっ。激レアスキル! 数百万人に一人とかっていうーー」
それ、もうサーニャが言ってるから。
思いつつ、俺は魔物の発する瘴気を探知していく。
……なぜか、サンタナの魔力を感知した。
よからぬことが起きている気がしたが、ひとまずは後だ。
探知を続けて、見つけた。
森の中で唯一、瘴気が限りなく薄い地点である。そこだけは、むしろ清らかにさえ思える。
「なにがあるかは分からないけど、当たりはついたよ」
「さっすがヨシュア!」
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