31話 特殊スキル『魔力保有(大)』は、大量の魔力を賄えます。
今日からも複数話投稿していければ、と思っています。
「原因が分からないんだよねぇ、疫病の。苦しんでるのは、お腹っぽいんだけど、全身なんて人もいて。
なんていうか、まとめて言うと、まじで手詰まり! みんな苦しんでるのに投げ出すわけにはいかないし……。
ほんと、嫌になっちゃう!」
ルリっぽく言えば、こうらしかった。
彼女は、患者たちの待合室をちらりと見せてくれる。
老若男女が集められていた。
青い顔をしていたり、うなだれていたり、ただごとではないのは明白だった。
「みんな。こっち入って。ヒールは、この部屋でやってるんだ」
ルリに促されるまま、俺たちは奥へ進む。
それなりに広いスペースは確保されていて、ポーションなどの用意もあるが……。
人は、ほかに誰もいなかった。
「あれ、ヒーラーを何人か呼んでるって話じゃなかったか」
「それなの、聞いてよ、ヨシュっち! あんまりにも過酷だって、みんなどこか行っちゃったんだ」
……サジを投げられた、ってわけか。
ヒーラーとしては、どうなのだろうと思うが。一概にその判断を否定もできなかった。
彼らの様子を見て、万が一自分も、などと思ったのかもしれない。
「もしかして、一人で治療してるの……?」
ソフィアが尋ねる。
「そうなの、もう鬼無理じゃん? ヒールしても、ヒールしても、あんな感じでね。いたちごっこなんだ。ルリの魔力の方がもう限界っていうかさあ」
ルリはため息と共に、肩を落とす。
彼女の両親も手伝ってはくれているようだが、ヒーラーは、彼女しかいないらしい。
「魔力が……、そっか。ルリちゃんも休んだ方がいいよっ! 治す側が倒れちゃったら、元も子もないもん」
「ミリリさん、ありがとうね。でも、放ってはおけないっていうか……」
「だよね、だよね、いい子すぎるよ」
ミリリは、しきりにルリの頭を撫で回す。まるで子犬を愛でるかのような可愛がりようだ。
「私の魔導を使えば、ヒール効果のサポートくらいはできると思うんだけど……。
魔力補給までは難しいかも…………」
転じて、心底恥じるように、ミリリは唇を引き締める。
なにか他に打つ手はないかと頭を捻り出す彼女と対照的に、俺の元には閃きが降りてきていた。
「できるよ、魔力補給なら」
「えっ、ヨシュア。ほんと!?」
「ほんと。こんな大真面目な時に嘘言えるような人間じゃないんだよ、あいにくな」
俺には、『魔力保有(大)』の特殊スキルがある。
これは恒常的に発動しており、人の何倍もの魔力を溜め込むことができるのだ。
ヒール魔法は、光属性の魔法を持つものが、治癒の鍛錬を積んだ末にスキルとして習得するもの。
前パーティーでは、ルリがそれを担っていたため、俺は身につけていないが、魔力量という形でなら力を貸せる。
「じゃあ、魔力流すぞ。気持ち悪くなったりしたら言えよ」
「…………う、うん」
俺は、ルリと両手を握り合い、目を瞑る。
魔力は、個人によってその性質が異なる。
簡単には受け入れられないこともあるのだが、
「きてる、もっといけるかも? あはっ、気持ちいい……かも。ヨシュっち、もっといける!? あっ、いいよ」
…………むしろ好相性だったみたいだ。
ルリは、悩ましい声を上げて、たまに息を詰まらせ、乱す。
「なんか、こう、官能的だ……。というか、背徳的? 犯罪っぽいかも」
ミリリがぼそり、そんな感想を述べる。
いや、違うんだけどね? ちょっとは思ったけど。
ルリとは一つしか歳離れてないし、というか、やましい行為ではなく、ただの魔力の供給だから!
「…………羨ましい」
ソフィアは、端的にこう呟いていた。
なにがだよ、と思うが、魔力を乱さないようにするためには、反応もできない。
ルリの魔力は、本当に枯渇する手前だったらしかった。
少し長めにかかって、魔力の供給が終わる。
俺が目を開けると、ルリは手を握っては開くを繰り返していた。
「……ものの数分だったのに、元気いっぱいかも。ルリ、こんなに力が湧いてくること最近じゃなかった! ねぇ、ヨシュっちは大丈夫なの? こんなにたくさん魔力をもらっちゃって。私が全回復ってかなりじゃない?」
「うん。その辺の心配はいらねぇよ。なんなら、まだまだ渡してやれるくらいだ」
「やっぱりヨシュっちは頼りになるね。よーし、ヒール再開!」
ルリは、にひっと笑う。
ミリリと一緒になって、おー! と拳を突き上げていた。
子供っぽさ全開なのだが、その心は十分に大人びている。
町の人にとったら、彼女の方が俺よりよっぽど頼りになると思われているはずだ。
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