30話 新たな依頼が来ました。魔物に囲まれましたが、大技で一掃です!
引き続きよろしくお願いします。
幼馴染である彼女が「レンタル冒険者」の仲間に加わり、約二週間。
彼女は、事務や依頼の受付を担当することとなっていた。
人と接するのは苦手ながら、「うちはまだ戦えないから、これぐらいのことはしなきゃ」と、奮闘してくれている。
そんな彼女が持ってきた依頼に、俺は目を見開く。
「えっ、もうルリから依頼が来たのか?」
「……うん。うちのところに、手紙が届いたんだ。これ、見て」
ソフィアは、向かいの席にいた俺とミリリへ一枚の便箋を見せる。
その乱れた筆致は、たしかにルリの字だった。
ただそれ以上に焦りのようなものも感じられる。
「ルリの故郷、ヤマタウンの疫病が大変なことになっているみたい。
重篤者がたくさん出ていて、ヒールが追いつかないんだって」
なかなか、重たい案件である。
ヒーラーを呼んだり、極力家に篭るようにしたり、手は尽くしているらしかった。
それでも、事態が好転しないらしい。
一応、その辺りの地域を治めている男爵家には掛け合っているようだが、期待はできないらしい。
「小さな町だから、黙殺されてるってことかなぁ」
ミリリが、珍しく眉にシワを寄せる。
「ほら、この街は都市だし、ちゃんと管理が行き届いてるけど、地方だとそうはいかないから。
場所によっては、半ば見捨てられるようなこともあるんだよ」
「…………世知辛い話だなぁ。貴族にしてみれば、大事なのは田舎の土地より、立場ってわけか。
男爵家側としては、騒ぎ立てられて大事にされたくないとでも思ってるのかもなぁ」
つまり、どれだけ破滅的なことになろうとも、公的な支援は望めないということになる。
「それで、どうしよう。専門外といえば、専門外の話だけど……」
ソフィアが、不安げに俺たちの顔色を窺う。
その瞳は願うように揺れていた。
どんな答えを望んでいるか、簡単に想像できた。
「もちろん、行くよ」
「うんっ、私も! 困ってる人のためのレンタルだからねっ!」
♢
ルリの故郷、ヤマタウン。
元パーティーメンバーの彼女とは、それなりに長い付き合いだったが……。
俺も、ソフィアも、足を運んだことはなかった。
前にはミリリを抱え、後ろにはソフィアを背負い、スキル『俊敏』を発動。
方角だけは間違えぬよう進んでいく。
うねった道に、鬱蒼とした森の中など。
かなり険しい道のりであったが、そう時間はかからなかった。
そして、夕暮れ時。
もう少しで到着するかというところで、
「……もう、すぐそこに町があるんだけどなぁ」
魔物の群れに出くわした。
「ポイズンシャークに、大オーク、アックストロール…………。ヨシュア、こいつら結構危険度高めなやつばっかだよっ?」
「Bランク以上がぞろぞろと………。なんか嫌な予感しかしないな」
魔物の唸り声が合わさって、不快な振動が伝わってくる。
……早急にどうにかしたい。
俺は一応、だれも周りにいないことを確認したのち、腰にさげた短剣を手にする。
依頼の内容から適切な武器が判断しにくかったため、習熟度で選んだ武器だ。
「電撃よ発散せよ、『雷の波』!」
半径三メートル以内に、円形状の高電磁波を放つ。
ミリリとソフィアは、盾を使って防御魔法。土属性仕様で、電気の一切を弾く。
うん、たまには使ってみようと思ったが、まだ威力は健在っぽい。
さっくり一斉掃討してやった。
さて、あたりに静寂が戻る。
「はやすぎだよ、ヨシュアったら。私も手伝おうとおもったのに!」
ミリリは、頬をぷくり膨らませていた。
隣のソフィアに、「ね? そう思うよね?」と、軽く肩をぶつけて同意を求める。
「うん、うちも矢を構えるまでもなかった」
「だよねだよね! 私なんて杖持ってただけだよ?」
そのまま、二人で戯れあっていった。
さすがはミリリ、距離感知らない系少女である。
内気なソフィアの懐にも、もう入り込んだらしい。
そうこう賑やかしくやっているうちに、いよいよ、町へとたどり着く。
空気が一変した気がした。
「……なんか、やけに静かだね。それに肌がゾワッとするというか、変な感じ…………」
ぴとり、ミリリが俺の左腕にくっつく。ソフィアも無言で、右腕を抱え込んだ。
うん、きっと、怖がっているだけだ。他意はないんだ。
そんな風に考え、両側からの柔らかな感触や、匂い、温度を意識しないよう努めていたら。
くん、と鼻が鳴る音がする。
「ソフィア、こんな時に匂い嗅いでる場合かよ」
「…………ごめんなさい、つい。ほっとするから」
気を取り直して、町全体を見渡す。
寂れている、と言うほどのことはなかった。
地方によくある町らしく、民家や農作地が、広がっている。
ただ一つ異様なのは、誰一人として出歩いていないこと。
そのせいか、大きな古井戸が悪目立ちしてしまっている。
そんな物足りない道を歩き、一軒の家の扉を叩いた。
そのすぐあと、扉が開け放たれる。
「あー、ヨシュっち! ソフィア! ミリリさん! 待ってたぁっ!!」
幼気にも目一杯腕を振って、見慣れた少女がかけてきた。
がばり、俺の腰に抱きつく。思いっきり、腹に頭が入った。
この重たい感触は、少し前まで毎日のように受け止めていたそれだ。
「……つぅー。勢いつけすぎだっての!」
「ごめんごめん、止まれなくてさ。ヨシュっちへの、ルリなりの信頼の証って言い換えても、さしつかえない的なあれだし!」
頭を擦り付けながら俺を見上げて、にししと笑うのは、ルリ・ルーカスだ。
皆様のおかげで、ランキング7位までこれました〜!
感激です………。これからも投稿頑張っていきます。
引き続き、当作品をよろしくお願いします。
(*´∇`*)
たかた




