3話 美少女ちゃんに『レンタル冒険者』に勧誘されたうえ、魔物から助けちゃったりなんかしました。
引き続きよろしくお願いします!
たぶん今夜もう1話いきます。
この森は、「深闇の森」という。
一人では攻略の難しいことで知られる上級ダンジョンだ。
とはいえ、中腹までのモンスターに、俺の敵となるものはいなかった。
俺は逃げるでも避けるでもなく、戦闘を繰り返す。
手応えなく、魔物が次々消えていった。
それらがドロップするアイテムを、俺は丹念に拾い集めていく。
なにせ、パーティー追放を食らったのだ。つまり、俺、無職。
大した価値のないものでも、売れるものは拾っておきたい。
別にこじきじゃないよ? 俺に権利あるからね?
ぬぐいきれぬ悔しさだけではなく、やや虚しい気持ちを抱えつつも、次々にモンスターを倒していく。
短剣に盾という武器は、バランス型の装備だけに奥が深い。
魔物を一殺するたびに、もっと右手で強く引いておけば、一歩踏み込めれば、なんて試行錯誤を繰り返す。
一人の鍛錬は、元来好きな方だ。
戦いの虫になっていたせい、声をかけられるまで、俺は気付けなかった。
「見つけた、見つけたよっ! あなただったんだ!」
淡い桃色のサイドテール、身の丈ほどに長い魔導杖を持った少女が、俺を熱心に観察していたのだ。
「は。だ、誰?」
「あ、やば。ばれた!? なんで!」
そりゃあ、いくら幹に身体を隠していても、あれだけ大声出されれば気づかない方がおかしい。
そうでなくとも、顔はしっかり突き出されていた。
「ごめんね! 勝手に見てたのはたしかだけど、やましい気持ちはなくて! ただ、ぐへへ〜見つけちゃったぁ、って感じで」
おずおず姿を見せた彼女は、とんでもない美少女。
薄手の黒タイツに締められた脚は、ほどよく肉づき、スカートの中へと続いていた。
お腹からトップスまでのラインも、綺麗な流線型を作る。
スタイルもさながら、顔の造形も綻びがない。
きらりと日を跳ね返す真紅の目、その下にちょこんとついたホクロまで。
可愛さも艶やかさも、なにから兼ね備えている。
ーー魔物が棲まう殺伐した森に、大輪の花が咲いた。
そんな錯覚をしてしまう。
セリフを除けば、という条件付きだが。
そんな美少女の背後、
「シャァァッ!!!!」
別個体のポイズンシャークが現れたので、俺は風魔法による剣技を使い、八つ裂きにする。
「……完全に油断してました。ありがとうございます」
「いいよ、そんなことぐらい」
それより、だ。
「で。なに、俺食べられるの?」
「えっ、た、食べませんよ! 自分を助けてくれた恩人を捕食するような趣味はありませんっ! 私は、ミリリ。ミリリ・エカチュリナ。
普段は魔導師ですが、今はさしずめスカウトの者ってところでしょうか」
「……あー、ミリリ……さん? なにのスカウトなんですか、あなた。俺はなにに勧誘されてるんですか、宗教? やべぇ宗教?」
「失礼ですよ、そんな怪しい者ではありません! そりゃあこれですよっ、とくとご覧あれっ」
ミリリは、胸元のフリルの下へ、大胆にも手を突っ込む。
立派に膨れた胸元は、タイトに絞められ、必要以上に強調されていた。
思わず目が白黒させられる。
ちょっと待って、そういう耐性ないんだけど……?
正直、火や水攻撃への耐性の方が幾らも高いと断言できる。
童貞じみた俺の反応に構わず、ミリリは取り出した半紙の上下を摘む。
こちらへ自信満々に突っ張って見せた。
「私がやっている新時代のサービス・『レンタル冒険者』のエースとして、ですよっ!」
「れ、レンタル冒険者?」
聴き慣れないだけに、ただ復唱してしまった。
「はいっ。詳しい話は、街に帰ってからします。とりあえず話しだけでも聞いてくださいっ。そこをなんとか! お茶だけでも〜! ごちそうしますからっ。
私、スカウトのためにここまで一人で来てたんです。そして現れたこんな逸材、逃せません!」
私を見捨てないで的なノリで言われても困る。
けれど、困ったなと思った時にはもう、無理矢理手を引かれていたので、俺は仕方なく話を聞くことにした。
決して、断じて、胸を押しつけられたから欲に駆られて流されたわけじゃないよ? それじゃあ本当に怪しい勧誘だ。
無職なのだ、俺は。
新しい職の話を聞くのは、もはや自然のことわりだろう。
「あれ、服の裾、破れてますよ?」
「あー……ちょっとな。仲間……だった奴にやられたんだ」
「ひどい人ですね。そうだっ! 帰ったらお礼も兼ねて、私が縫いますよっ」
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