21話 【side】リーダーはメンバーを引き止めるため、卑劣な手に出るが、パーティー瓦解は避けられない。
引き続きよろしくお願いします。
偽の遠征を口実に、無理にでもメンバーを自分の元へ引き止める。
サンタナに残された手段は、もうこれしかなかった。
本当はもっとうまくいくはずだったのだ、彼の中では。
ローズからの依頼だと偽って、難易度の高いクエストに臨み、勝利を掴む。
そうすれば、パーティーメンバーの心も自分に帰ってくるに違いない。
そう、楽観的に考えていた。
ただ、現実は厳しい。
「今度は、アイシングドラゴンって、当てはあるの? ルリ、実家に帰りたいんだけど……」
「なにを言うか。アテがあるから、予定より早く出発したんじゃないか。
僕を信じるといいよ」
「ほんとに? もう随分歩いたけど……信じられないんだけどぉー」
ルリは、つっかかるように言って、あからさまに不機嫌だった。
北上するほど冷え込む空気と同じく、凍てついていた。
ソフィアに至っては、黙って俯いたまま、少し後ろを歩く。
彼女に対して、少なからぬ好意や劣情を抱くサンタナである。
「どうしたんだい、ソフィア。僕に話してみるといい」
こう気遣うのだが、彼女は取り合おうともしない。
ソフィアには、サンタナのことなどどうでもよかったのである。
むしろ、その唐突な判断を憎んでさえいた。
(……クエストに出るのは、明日だって聞いてたのに)
ヨシュアやミリリには、クエストへの出立は明日だと伝えてしまった。
これでは、せっかくのレンタル冒険者も意味がない。
なんとか明日にしてくれるよう頼んだが、あえなくサンタナはそれを拒んだ。
それどころか逆上され、こうして無理に連れ出されてしまった。
動きやすいよう切れ込みを入れたスカートの後ろを、悔しさから掴む。
見た目ほど、彼女は強い人間ではない。
今に泣きそうではあったけれど、絶望しきってはいなかった。
ーーヨシュアくんなら、きっと。
そんな思いが、陰った彼女の心に少しの光を届けていた。
彼女にとって希望とは、ヨシュアとイコールだった。
彼の名前を頭の中に反芻する。
そうして少し、思った。自分は助けられてばかりだ、と。
彼にすがって、迷惑ばかりかけて。本当にそれでいいのだろうか。
頼ってばかりでは、いつまでも隣に並び立てないかもしれない。
そんな思いが、
「…………うち、行かない」
彼女を行動に至らしめた。
猫柄のハンカチを、きゅっと握る。
サンタナは、おいおいと詰め寄ってきた。が、彼女の決意は揺らがない。
「なにを言ってるんだ。ローズさんからの依頼だよ、ソフィア」
「ローズさんには謝る。だから、行かない。もうパーティーもやめる!」
ずっと言えなかったことを、はっきり告げた。
この場にはいなくとも、ソフィアの背を押したのは、たしかにヨシュアだった。
涙なんて流してはいられない。
精一杯の批判を込めて、サンタナを睨みつける。
「ルリも、ルリもやめたいっ」
「…………君たち、ふざけているのか?」
それが、彼の逆鱗に触れた。
その誇大な自尊心が、残虐性へと変貌した瞬間であった。
【恐れ入りますが、下記をよろしくお願いします。】
4/19〜4/20にかけて、連投し、二章終わりまで話を進めます(19日は4話、20日は4話以上投稿の予定です)。
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