15話 【side:サンタナ】追放した側は、クエスト失敗が連続した末に、泥沼へとしての道をいく。
引き続き宜しくお願いします。
ヨシュアが新たな栄光の道を歩み始めた一方、『彗星の一団』は受難の時を迎えていた。
「……僕がこんなに任務を失敗するなんて、ありえない」
上級ギルドのラウンジ。
ホセ・サンタナは、顔をやりどころのない怒りに歪めて、拳を握りしめる。
連戦連敗が進行形で続いているのだから、無理もないことだった。
それも、不調は顕著なものだった。
クエストの対象魔物にたどりつくどころか、その序盤も序盤で阻まれるのだ。
原因不明。
サンタナはそう決め付けていたが、他のパーティーメンバーまでは、同じでなかった。
(…………ヨシュアくんがいないせいだ。うちらが勝ってたのは、影で守ってもらっていたから……)
とくに、ソフィアははっきり理由に気づいていた。
幼い頃から、ヨシュアのそばにいただけのことはある。
その超越的な強さは、身にしみて分かっていた。
けれど、言えばサンタナの気に触れるのは間違いない。
そう考えた末、なにも言い出せていなかった。
ちなみに、ルリは不在にしていた。
ヨシュアがいないことに不満を露わにして、打ち合わせをボイコットしたのだ。
それに、なにやら実家でイザコザがあったらしく、忙しそうにしていた。
「……だ、大丈夫さ。きっと次の任務はうまくいくに違いない! なにせ僕がいるんだ」
明らかに、パーティーの空気は淀んでいた。
このままでは、今に誰かが辞めると言いかねない。
サンタナは、それをひしひしと感じ取っていた。
「というか、うまくいかせないわけにはいかないだろ? 今残ってる二つの依頼は、ローズさんから貰ったんだから」
それゆえの、このセリフ。
ローズとは、『彗星の一団』を贔屓にしてくれている伯爵家の女性当主のことだ。
手製ポーションなどアイテムの支援もしてもらっており、頭が上がらない恩人である。
パーティーにとっては、裏切れない存在だ。
その名を出されたら、
「……それはそうだけど」
ソフィアは言葉を失わざるを得なかった。
ほとんど脅迫に近い形でしか繋ぎ止められないパーティー。
その時点で破綻しているのだが、サンタナはそれに気づけない。
「ならば、決まりだね。予定通り、クエストは執り行うことにしよう」
たとえ、パーティーのゆく先に大きな沼が待っていようとも、彼は気づかない。
こんな時に諭してくれたヨシュアは、もういないのだ。
♢
打ち合わせ終わり。
気まずい空気に耐えかねたか、サンタナはさっさとラウンジを後にしていた。
ソフィアは一人、残される。
上級冒険者専用のフロアだけあって、間取りは広く取られていた。
内装は豪華絢爛、今座っているソファも、見たところ高級な革製だ。
けれど、
「……落ち着かない」
もたれかかってみても、しっくりこない。静かすぎて、逆に不安になる。
落ち着かず、ポケットの中、くたびれたハンカチを握る。
猫の絵が描かれた柄物だ。いつか、ヨシュアにもらったものである。
今の『彗星の一団』に、上級ほどの実力がないのは察していた。
本当に自分がこの場所にいていいのか、そういう思いもあった。
近くに置いていた武器や防具といった荷物をまとめ、外へと移動する。
下位の冒険者ラウンジを、なんの気無しに覗いた時だ。
「知ってる? レンタル冒険者ってサービスがあってねぇ。Aランク冒険者のミリリさんと、凄腕って噂のヨシュアさんが二人でやってるんだって!」
「え〜、なにそれっ! 私もレンタルしてみようかなぁ」
こんな会話が耳に飛び込んできた。
気づけば身体が動いて、
「…………そのお話、く、詳しく聞かせへっ」
ソフィアは、彼女らに声をかけていた。
突然の別れ以来、会っていないヨシュアの情報である。どうしても、知っておきたかった。
精一杯の勇気を、これでも振り絞ったのだ。
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