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ジャックの笑い!

今回は試合なので「~だ」の文章で執筆しています。



眼帯の巨人は手を大きく広げ、力比べを挑んできた。正義の皇帝はその申し出を堂々と受け、真っ向からふたりは力で渡り合う。リングの中央で互いの上腕が盛り上がり、足を止めての力比べで汗が噴き出す。身長体重共に際立った差は見られないふたりのパワーは拮抗していた。力比べが開始されて2分が過ぎた頃、いきなりジャックは両手を離して力比べを終わると、いきなりカイザーの頭を右腕で固定して締め上げるヘッドロックに移行した。そこから容赦なく、顔面へ鉄拳の連打を浴びせていく。カイザーの額が割れ、血が噴き出す。

だが皇帝はやられっぱなしではなく、ヘッドロックを食らいつつも、ジャックの腰の辺りに手を伸ばし、彼を軽々と持ち上げてのバックドロップ一閃。

プロレス黎明期は必殺の威力を持った技も現代においては単なる繋ぎ技程度にしか扱われてはいなかった。けれど、カイザーのバックドロップは強烈で、たった一発で決着がついてしまうほどなのだ。脳天を強打し、仰向けに倒れるジャックにフォールをする。覆いかぶさろうとした刹那、両膝がカイザーの腹に食い込む。先ほどのダウンは擬態だったのだ。一瞬の隙を突き、足を4の字固め風に極めていく。だが、それはギブアップを奪う4の字ではなかった。


「会場に集まった善人の観客諸君! これぞ俺の死のジャイアントスィングだ!」


4の字の形にカイザーの足を極めたまま、彼の身体を振り回しジャイアントスィングを見舞うという荒業に観客は息を飲んだ。

試合を観戦していた苺も瞳孔を縮めた。


「アイツ、なんて馬鹿力なの!? 135キロのカイザー様を軽々と振り回すなんて、あり得ないわ!」


たっぷりと遠心力をつけて鉄柱に放り投げる。カイザーの背は赤く腫れあがるが、それで試合放棄するほど彼は軟な男ではない。すぐに立ち上がり、タックルで反撃する。猛牛のような一撃を受け、ロープまで吹き飛ばされたジャックは、バウンドして返ってきたところを一本背負いをかけられ、綺麗に背中から投げ落とされてしまった。続けざまに放たれたカイザーのニ―ドロップを転がって自爆させ、そのまま転がり続けて場外に落下。

この試合はリングアウトは取らないので、試合の外に逃れても問題は無い。逆に言えば、カウント20でリングアウト勝ちを狙うことができなくなる。

策をひとつ潰してさえも反則自由にこだわったジャック。そこには有り余るメリットが存在した。

掌で猫を招くようなポーズを取り、降りてこいと挑発するがカイザーは仁王立ちのまま、その場を離れようとしない。場外乱闘を恥だと考え、嫌うカイザーにとって決着はあくまでリング内でというのが信条だった。肩をすくめ諦めたポーズをするジャックだったが、次の瞬間、目に残忍な光を宿してかん高い笑い声をあげた。


「テメェが来ないのなら、こっちからいかせてもらうぜぇ!」


リングのエプロン下から取り出したのはアルミ製の椅子だ。

素早くリングに舞い戻ったジャックは椅子を振り上げる。

命中したが、二の矢が放たれることは無かった。

それどころか攻撃を仕掛けた方のジャックが硬直しているではないか。


「テメェ・・・・・・!」


椅子は腕の筋肉の鎧に阻まれ、カイザーの脳天を傷付けるには至らず。

逆にぐにゃりと折れ曲がってしまったではないか。

予想外の出来事にジャックは冷や汗を流し、椅子を放り投げて後退する。

ラフなファイターほど攻撃手段を失うと途端に脆くなるのだ。

手を振って近づくなとアピールするも、カイザーは構うことなく歩を進める。

これまで悪の限りを尽くしてきた男に同情するものは誰もおらず、カイザーには大歓声が鳴り響く。


「甘い野郎だッ!」

「!?」


右手に装備したメリケンサックがカイザーの胸から腹の皮膚を抉り、切り裂き、まるで噴水のように大量の血の雨を会場に降らせる。あまりに凄惨な光景に目を背けるものが続出する中、苺は双眼鏡から目をそらさない。

彼女は信じていた。たとえどれほど劣勢に追い込まれ傷つけられたとしても、最後には勝つのはカイザーであると。

リング上ではジャックが霧を吹きかけた目潰し、額への頭突き、チェーンを使った首絞めとあらゆる反則を行っている。反則自由なので止めるべくレフリーも存在しない。首を絞め上げつつ、ジャックはカイザーに語り掛ける。


「ようやくわかったかい。この試合の恐ろしさが」

「フフフフ。この程度の小細工で私を倒せると思わぬことだ」


カイザーの鍛え上げられた首は力を込めることで鎖の締め付けを弱め、首絞め地獄から脱出させると、ジャックをボディスラムで叩き落とした。


「キミも男なら反則などに頼ることなく、技で正々堂々勝負したらどうだ!

己の魂に恥ずかしいとは思わぬのか!」

「何とでも言え。卑怯こそが俺の性分よ。そうはいっても反則しか能がねえと思われるのは癪だからな・・・・・・ようし!

俺にお前の太陽の拳を放ってみろ!

見事に完全攻略してご覧に入れるぜ!!」


未だかつてだれも成し遂げたことのない太陽の拳の打倒。

まさかのジャックの口から放たれた完全攻略発言に観客は度肝を抜かされた。

ジャックの発言はハッタリなのか。

それとも本当に何らかの策があるのだろうか。

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