クッキーづくり 1
ひんやりと肌寒い2月14日のことでした。この日、苺ちゃんは普段よりも早くに起きて、台所に立ちました。
この日は女の子にとって大切な日、バレンタインデーです。
しかも今年は土曜日なものですから、学校もなく思う存分、愛を込めることができます。
髪が落ちないようにバンダナを頭に巻き、腕の袖をまくってエプロンを着て、いざ、調理開始です。
拳をぎゅっと握って力と気合を込めて、真剣な眼差しで材料を向き合います。
これから彼女はチョコレートをたっぷりと使ったクッキーを作ろうというのです。
「カイザー様、板チョコが好きかどうかわからないし、大きな板チョコを持っていって迷惑がられたら悲しいもの。でもクッキーなら幅も取らないし、枚数もあるから他のレスラーの仲間にも分けることができるもの。カイザー様はお優しい方だから、きっとクッキーを独り占めするような意地汚い真似はしないはずよ。私って頭いい♪」
自画自賛しながら、クッキー作りを始めていきます。ケーキ屋の娘だけのことはあり、菓子に関する腕は磨かれていたのか、慣れた手つきでクッキーの絞り器具から生地をプレートの上に出していきます。それからオーブンの温度と時間を調整してスイッチを押しました。
あとは焼きあがるのを待つばかりです。
「カイザー様が喜んでくれますように」
両手を合わせて願いを込めた苺ちゃんは、早起きと疲労からか、椅子に腰かけますと、そのままスヤスヤと静かな寝息を立てて夢の中へと旅立ちました。