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左耳に鈴虫が住んでるオッサンの話

 なろうのエッセイランキングを漁っていたときに、たまたまご自身の病歴を題材にされている作者様をお見かけしまして。

 その方の文章が面白くも為になったので、じゃあパク…… リスペクトしようかと思った訳です。


 さて、『突発性難聴』という病気をご存知でしょうか。ネタバレしてしまえば、筆者の持病はコレです。読んで字の如く、唐突に耳が聞こえにくくなるという病気で、原因は不明。

 食生活とかストレスとか糖尿が関係しているんじゃないかといわれてるらしいですが、少なくとも発病から10年以上経った現在でも筆者は糖尿病も鬱も発症していません。食生活は大変乱れていますが。

 症状としては、ある日突然耳鳴りがし始めて、それがずっと止まらないというモノです。


 筆者の場合は、仕事中に左耳に「キーン」という耳鳴りがし始めたのが最初でした。ある程度以上の年代の方には、『ブラウン管テレビが点いている時の音』と言えば想像しやすいかも知れません。

 耳鳴り自体は別に珍しくもなかったので最初はあまり気に留めていなかったのですが。大抵の耳鳴りは精々数分で治まるのに、ずっと続いて鬱陶しいと言うのがその時の正直な気持ちでした。

 「難聴なんだから、耳が聞こえにくくなれば分かるだろ」と思われるかも知れませんが、少なくとも私の場合、耳が聞こえ難いという認識はほとんどありませんでした。まあ、耳鳴りがしているので普段と全く同じでは無いのですが、それでも会話したりヘッドホンで音楽を聴いたりするのに特に不自由も感じませんでした。

 仕事が終わって家に帰ってもまだ耳鳴りが続いていたので、流石に少々イライラして、ネットで耳鳴りのことを検索し『重大な病気の初期症状かもよ』みたいな情報を見つけてかなりビビり、やっと病院に行くことを思いついたくらいです。とは言え、その時点でもそこまで深刻に受け止めていた訳ではありませんでしたが。正確な日付はもう忘れたのですが、確か最初の耳鳴りが水曜日に発生し、仕事を休むのも憚られたので土曜日に耳鼻科に行った事からも、それが分かると思います。

 ちなみに、その時見つけたのは突発性難聴ではなく、メニエール病とか腫瘍なんかの病気です。

 で、仕事休みの土曜日に耳鼻科に出掛けました。予約を取っていなかったので少し待たされてから問診を受け、水曜から耳鳴りが続いていること、原因に心当たりは無い事、四六時中(それこそ寝るときも)続いているので流石に鬱陶しい事を先生に話した所、聴力検査を受けることとなりました。

 さて、上でも述べましたが、筆者の耳鳴りは「キーン」という平坦な音です。で、聴力検査の音は周波数の違いはあれど「ピー、ピー」みたいな平坦な音です。見事に聞こえないんですよ。正確に言うと、ずっと音がしているので聴力検査の音が混じっても識別出来ないんです。ええ、もう散々な結果でしたね。

 そうして、結果を見た先生から「突発性難聴ですね」と言う診断を戴きました。恥ずかしながら、その瞬間まで難聴というのは耳が全く聞こえなくなる事だと思っていたので、診断を受けた際にはかなりショックでした。

 ちなみに後で知ったのですが、突発性難聴は発症から時間が経てば経つほど完治の見込みが低くなるらしく、水曜日に発症して土曜日に耳鼻科に行ったというのは、ベストで無いまでもベターな行動だったようです。読者の皆様も、耳鳴りが続くようであればなるべく早く診察を受けることをお勧めします。


 筆者が処方されたのはステロイド系のお薬と、メチコバールというビタミン剤、あとATP(アデノシン三リン酸)という血行を良くする薬です。この内、ステロイドは一回に処方する量が限られているらしく、少なくとも週に2回は通院しなければなりませんでした。

 ステロイドと聞くと『ドーピング』や『副作用』なんかのネガティブなワードが思い浮かびがちですが、少なくとも筆者は治療中に副作用を感じたことはありません。ドーピング検査を受ける機会がありませんでしたので、そちらはどうか分かりませんが。

 ちなみにですが、お医者様の言う事には聴力検査というのは月に2回までしか受けられないらしく、週に2回通院していながらも、やっていることは「耳鳴りどうですか?」「まだしてます」というやりとりがほとんどです。で、処方箋を貰って薬局で薬貰って終わり。仕事先に事情を説明して、半休を取ってやることがコレというのは、かなり辛かったですね。

 そんな感じで治療を続ける内に、耳鳴りは少しだけ小さくなりました。また、聴力検査を何度か繰り返すと耳鳴りと聴力検査の音を聞き分けるコツを掴み、私の検査結果は次第に良くなりました。今思うと、後者は明らかにダメなんですが。

 で、左右の耳が大体同じくらい聞こえると判断された所で、治療は終わりとなりました。その時も、耳鳴りは残ったままです。てっきり治療が終われば耳鳴りも治まると思っていたので、地味にショックでした。

 それが、一度目の発症です。


 突発性難聴は再発しない病気と言われているらしいのですが、結論から言えば筆者は何度か再発しています。

 そもそも、耳鳴り自体はずっと残っているので、気になり出すと少しイラッとするんですよ。夜寝るときに時計の音が気になったりしますが、アレの耳鳴り版だと考えて貰えれば、分かりやすいかと。

 体調やストレスなんかで耳鳴りの大きさは結構変わるのですが、耳鳴りが大きくなって無視出来なくなると、耳鼻科に行く訳です。

 一度目は難聴再発の診断を受けて、治療再開となりました。治療方法は前回と同じく、お薬投与です。同じ耳鼻科だったので、処方される薬も全く同じでした。

 二度目は、聴力検査の結果特に問題なしという事で、特に治療はしませんでした。耳鳴りはかなりしていたのですが、その前に風邪を引いていたので、その影響だろうとのこと。

 その後も何度か耳鳴りが大きくなることはあったのですが、診察結果は問題なし。で、筆者も耳鳴りのある生活に慣れてしまい、その内「今日は耳鳴りが大きいからちょっと体調良くないんだな」とか考えるようになりました。思えば、コレが良くなかった。

 なにせ、判断材料が耳鳴りの大きさしかない上、ずっと鳴っていれば良くも悪くも慣れてしまう訳で。その内、耳鳴りが大きいのかどうかの基準すらも曖昧になって、耳鳴りで耳鼻科に行くのも止めてしまいました。

 賢明な読者様ならもうお気付きでしょう、ガッツリと耳が悪くなりました。馬鹿の末路とはこういうものです。

 気付いたのは、去年の健康診断の時です。耳鼻科で受ける聴力検査と違い、健康診断で聞く音なんて高いか低いかしかありません。その高い方の音が全く聞こえなくなっていました。それまでの聴力検査では「いやー、耳鳴りと区別が付かなくて」なんていう言い訳が出来たのですが、そんな言い訳も出来ないほどに聞こえない。

 ついでに言うと、耳鳴りの種類も増えています。最初は「キーン」という音だったのですが、今はそれに加えて鈴虫の声みたいな耳鳴りが鳴っています。冬のある日に「あれ、こんな時期でも鈴虫居るんだ」と思って窓の方を振り返ると、家の中の方から鈴虫の声が聞こえる…… 気付いた時は、愕然としましたね。


 それでも筆者は運の良い方で、症状の重い方はそれこそ四六時中耳元で飛行機が飛び立つ音がしている感覚を味わっているらしく、他人の声も全く聞こえないのだとか。

 そう言った方々からのインタビューをまとめた「淋しいのはアンタだけじゃない」という漫画もありますので、興味のある方は読んでみて下さい。ただ、著者の方は特に難聴を患っている訳では無いので、全体的な語り口が健常者よりで、難聴を抱えている方が読むとイラッとする部分もあるかも知れません。

 筆者の左耳は全く聞こえない訳では無く、ヘッドホンをして音楽を聴けば、左からも音がしているのは分かります。ただ、左隣に立った人とは会話しにくい程度に自覚症状はあるので、多少不便ではありますね。道を歩くときは、なるべく左側が壁になるようにしたりといったコツも必要だったりします。


 とにかく、耳鳴りがしたらすぐ耳鼻科へ行って下さい。放置して良い事は一つもありません。

 筆者みたいにならないで下さいと言うのが、このエッセイで言いたい唯一のことです。

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