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2、え?主人公?

私立白瑛学園。

幼稚舎から大学まである巨大な学園で、そこに通うのは大企業の社長、政治家、芸能人等が多く通う、所謂お金持ち学校。

始まりは明治の終わりに出来た元華族用の学校だったとか。


とにかく広い広いこの学園の一角に私の通う高等部はある。もちろん高等部の敷地や校舎も広い。

数年前に大幅に内装は改修工事され、近代的なものとなったけれど、外観は当時をなるべく残そうとしているためかレンガ造り。

まぁ普通のコンクリレンガタイルを貼り付けるという改修工事を昔したとかいう話も聞いた事あるけれど、タイルにしてはかなりリアルな感じではある。


正門から真っ直ぐ伸びる道には何台もの高級車が毎朝行き交い、これまた立派な玄関口の前にある車寄せのスペースでご子息ご令嬢をおろしていく。



うーん、やっぱり豪華ね。

ゲームの記憶と現実を改めて比べてみると画面で見るよりかなり立派、さすがお金持ち。

前世ではこんなに豪華なところホテルでも行ってない気がするんだけど。


前世の私はもちろん庶民、一般ピーポー。

父は普通の企業のサラリーマン、母はパートをする主婦。

どこにでもある普通の家庭だったはず。

現世の私は、父が一応小さな会社の社長をしているため大きめの家に住んではいるけれど生活はそんなに豪華なわけでもなく普通。

母が専業主婦出来るくらいではあるけれどそれでもお手伝いさんが家にいることもない。

ややランクアップはしている、という感じ?


なんでそんな家柄でありながらこのお金持ち学校に通うことになったというと、商売根性逞しい父が「通ってコネを作って来い!!!!」と言ってきたため。

普通娘を会社のために使う!?

でも一流企業の社長令嬢だと会社のために政略結婚とかあるのかも………そういう少女漫画読んだことあるな……



ともかく、そんなわけで高校から外部入学をしたわけで。

富裕層でないのに外部入学をするにはそれなりに高い学力がないといけないんだけれど、幸い現世の私は前世の影響かそこそこに頭が良く無事に合格。

記憶を取り戻したからには更なる成績アップも目指せるわ!!!なんて言ったって私は日本一の大学に現役合格した女!!勉強以外何も取り柄のなかった女!!…………言っててちょっと悲しくなってきた。





記憶を取り戻す前と違わず、電車通学をして来た私は横を通る高級車をぼんやり眺めつつ校舎に入る。

いやー改めて見れば見る程立派なとこだわ。

まず上履きがないもの。

大学なら割りと普通だけど上履きない高校なんてあるの??つまり土足で入ってるわけだけど床がキレイキレイ。毎日ワックス塗ってるのかってくらいピカピカ。


しかも校内にエスカレーターとエレベーターがたくさんあるのよ!非常階段以外なし!!

内装もなんか大理石っぽい床だったりオシャレな壁紙だったりと元庶民の私にはあまりよく分からないけれど豪華。

語彙力がないため表現出来ないわ!



大きな会社やテレビ局などで社員証を専用の機器にかざして社内に入るのと同じように、白瑛学園も学生証を駅の改札のようにピッとかざして中に入る。

いつものように何気なく学生証をかざして通り抜けた後、ふと自分の学生証を見て、立ち止まった。


朝、家の鏡で自分の顔を見た時は特に思わなかった。

だけれど学生証の自分の写真とその『春名彩未』という名前を見た瞬間、頭に雷が落ちたかのような衝撃を受けた。



「私、主人公(ヒロイン)じゃん………!!!!!」



ゲームでもよく見たステータス画面、学生証。主人公の顔は変えられないためもちろんデフォルト、そして私は名前も必ずデフォルトのものにする。

まんま、まんまゲームで見た学生証じゃない!!!!!!!!!!


嘘でしょ………と呟いてよろめき近くの壁にもたれかかる。

突然意味不明なことを割りと大きめの声で叫んだため周りから奇怪な物を見る目で見られているような気がするけれどそんなことは今は関係ない。


私が、ヒロイン、私がヒロイン………乙女ゲームのヒロイン……




頭の中が真っ白になりながらようやく自分の教室に辿り着き席につく。


「彩未さん、大丈夫ですか……?顔色があまりよろしくないようですが……」

「大丈夫、ちょっと衝撃的なことがあっただけだから…少しだけそっとしておいてもらえれば……」


よろよろとしていた私を気遣ったクラスメイトたちが優しく声を掛け、保健室でも……と言ってくれるが丁重にお断りをする。



少し頭が落ち着いてきた。

私がこの乙女ゲームの中の主人公。

それは間違いない。

なんですぐに気が付かなったのかと間抜けな自分を責めたいところだがそれをしたところでどうもならない。


私、推しカプを見ていたいタイプなのに……

乙女ゲームをする時は必ずデフォルトの名前を使うのが私のルール。

少女漫画と同じように主人公カップルを眺めているのが大好き。


大好きな乙女ゲームに転生して、ひゃっほーい!とか思ってた気持ちがやや下がってきた。

私はモブがいいんだ、なんなら観葉植物や壁だっていい、推したちを遠目で、出来たら近目で眺めていたいんだ……

乙女ゲームの主人公なんていう可愛らしいポジションじゃないのよ………!!!

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