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第1話;シュウショク(前編)

「ぴぴ、ぴぴ、ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴっ!」

       がしゃっ!

「近頃の時計はうるさい!」

と叫んだところで何も起こらない。っていうか、目覚まし時計はいつもかけているはずだし、それだったら音も同じはずである。ってことは・・・今日のオレは本能的に感覚が鋭くなっているってことなんだろうな。なんでだろう、本能ってことでいいや。

辺りを見回してみると、な〜んだ。ここはジャングルでもビル街でもなく、フツウの風景じゃないか。俺の寝ていたベッドの反対側にはテレポートっていうテレビ電話があり、そのよこに大学の教科書が入っている《お値段以上、ミドリ》っていう、そんな感じの店で買った棚がある。確か35000円だったけ。10円の某まい棒というお菓子を3500本涙ながらにあきらめたのはいうまでもない。確か300年間伝統の味だったっけな。とにかく歴史あるお菓子だ。で、まんなかにてーブルがある。昨日は、ジャルクと経済学について話していたんだっけ。結局就職の話になったけど。

今日は日曜日である。よって大学は授業がお休み。月曜日も休日だから、事実上の3連休だ。大学は開いているのだが、開店休業状態って言うか、先生自体がいないから行き様がないのだ。残念ながら宿題はもう土曜日の暇になる時間に済ませ、卒業論文なんか一般論について述べた分なので、このごろの社会情勢にもぴったりフィットするだろう。だから心配は要らなかった。

じゃあ、何をする。そこで俺が考えたことは就職のことだ。うん・・・とにかくめんどくさい。将来のことを考えるのは小さいころから苦手だった。でも、まあフツウ世間一般的には将来のことを考えるのはシュウショクが初めてになるんだし、世間の奴らたちとは、オレは五分五分だ。どうにか、生まれながらたくさん持っているサルの脳を総動員して・・・・。


 とおもったが、五分間がえたら、頭の中がショートした。無理なんだよ。サルにこんなこと考えさせるの。5分間だけ考えて苦肉の策として考えたのが、ライフカード作戦だった。

 選択肢をとにかく絞ってみよう。

人生をあきらめる。 現実逃避する。 寝る。

どうしてもマイナス思考になってしまうようだ。全部結局は同じ意味になることに気がつき、具体的な会社名を挙げてみることにした。

 ヨトタ リルクート 総合商社

最初が名前を変えながら生き残ってきた自動車会社。2番目は求人専門店だ。10ぐらい前にこれと似た名前の派遣会社があったが、まったく違う会社だという。3番目はいまんとこ第一志望だ。幅が利きそうだし。

と、そこでだ。どうすればいい。総合商社の面接の時間、ていうか会社名すら知らない。

そこで、神山教授に電話をかけてみることにした。

p−−p−−−p−−−

「ただいま、神山教授は、留守にしてる。またの時間にかけるように。」

神山教授独特のカッコイイ声でいった。しかたない。そのカッコイイ声に免じて、許すことにしよう。じゃあ、大沢菜々だ。俺が頼りにしている、ある意味学級委員的存在。

p−−−p−−p−−

「はい、大沢です。」

「ああ、マライです。」

「ああ、マライ君?ひょっとして就職のこと?」

えっ・・・

「ああ、ああ、そうです。とりあえずどうすればいいですか?」

「ふつうなら明日の東京の就職広場にいくわね。」

「あした・・・・ですか?」

「そうよ。あした。」

「まじですか。」

「そのこと知らなかったようね。大丈夫よ。予約は要らないから。あと、スーツも要らないわ。会社のことを知るためだけのやつだから。」

「分かりました。」

「じゃあ」

pppp−p−−−pppp−

あしたか。何も用意しなくてもいいのか。なら大丈夫だな。

とりあえず決まったところで、再びヒマになる。昼飯を食べる気にもなれないし、再び寝るにしても、前日8時間寝てしまい、寝れるわけがない。DSとかIWWとかSPPなんて買うお金はないし、どうせここにいても暇なので、外に出てみることにした。外に出る。よくドラマなどでは、主人公が気まぐれに外に出て、通りかかった通行人とぶつかり、運命の再会を果たす・・・なんていうくさい展開が描かれているときがあるが、もしそんなことがいつも現実世界で起こっていたら、運命の再会が貴重なものではなくなり、ドラマに描くほどのものではなくなってしまうだろう。しかしそれでも、そのときのオレには砂一粒といいながらもかすかな期待を持っていた。

 外に5分間ばかり立ってみる。もちろんそんな運命の再会があるはずもなく、ただ砂5粒ぐらいのむなしさと寂しさをかんじていた。マンションに帰ろうとしたら、

   ダダダだだっ!

なにかとてつもなくすごい足音が聞こえたため、その足音の現場にいったら、前方にはきそいあっているおばさん5人衆がいた。競われると入り込みたくなる自分の本能を行かし、そのおばさん衆のよこにジョギングペースでつけた。

 向かう先はスーパー。なにかバーゲンがあるのかと思ったが、予想通り。たしかにスーパーの玄関のところに利益還元セールという幕が掲げられていた。まあおばさんたちは安いものしか買わないだろうし、利益還元の大部分はおばさん衆たちによってにぎられてしまうのだろうが、バナナ部門だけは譲れないと思った。

青果売り場は思っていたほど込んでいなくて、簡単にバナナの前に並ぶことが出来た。楽勝、である。よく福袋合戦でおばさんたちのあついバトルが繰り広げられていることがニュースでもとりあげられているが、意外とふくぶくろがっせんではオレの圧勝で終わった〜みたいな感じである。足には自信があるから、スパートダッシュをかければ勝ちなのだ。

 20分ばかりか。5人分のおばさんの体重を背に受けながら、苦しい戦いを強いられていた。おかげで靴ひももほどけているため、かなりの重荷である。この靴紐をおばさんたちに踏まれたりしたら、絶対に負けるであろう。それ以上に、スーパーであうおばさんは能力的に未知数なので、たとえ体重の軽さではこっちがかっても、(大学のウィングなのだ。オレは。でもオフシーズンは弱いんだよな〜〜)瞬発力やスピードは分からない。そこが不安要素だ。それよりも靴紐をナントカしなきゃ。

 オレは5人のおばさんの視線をみた。一人でも視線を崩せば・・・・しかし、運が悪いことに残り5分は集中タイムらしく、決してバナナの方向から視線をそらすことは無かった。

 残り1分。あたりに熱気が立ち込める。気がつくと後ろには20人ほどいて、かなりの激戦になるのは目に見えていた。俺はバーゲンの実況なんかしにきたのではないのに・・・・そういう突っ込みを自分に入れてはいけないと瞬時に察知し、残り10秒こそは緊張しないとと思っていた。〜タイムサービスをこれより開始しまーす〜

ダッ、シューン。

10m先にあるバナナの袋は上向きに口がそろえてある。すべての袋に腕を通し、かっぱらった。まあ、レジは通したのだが、後ろから刺さってくるおばさんたちの視線が背中に突き刺さった。

その視線が殺人光線に変わることを恐れ、さっさっと家に帰ったオレは、カレー袋にお湯を入れ、ゆっくりとかき混ぜた。それをご飯にかけ、食べる。ついこの前まで食べていた日本独特のカレーは品を切らし、今日は北海国特有のカレーを食べている。海の幸が多く入っていて、独特の食感だった。


明日無事に行きますように。ベットの中で、目を閉じた。


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