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シューティング・スター  作者: 白石来
38/41

ー38ー 【異世界~渦の奥】

 「あいつの目には恐ろしい力があるみたいだな」

 アリマが呟く。

 「私達が行く。二手に分かれて攻撃すれば、目を見れないはず」

 ミコ・マコは、左右に分かれて飛び立った。

 ガクトは、両手から暗い渦のようなものを出現させ、宙に浮かべた。

 徐ろに渦に腕を突っ込む。すると、ミコ、マコの脇からも同じ渦が出現し、2人は喉輪を掴まれて、渦の中に引き摺り込まれた。

 渦から腕を引き抜くと、ガクトの両手はミコ・マコを捕らえていた。

 「何が起きた!?」

 自分の目で見た光景すら疑わしい。

 「目を見るな!」

 再び悟が叫ぶが、ミコ・マコの耳には届かなかった。

 ガクトは2人の顔を無理矢理引き寄せ、目を合わせた。


 「妹のくせに目立ちやがって!目障りなんだよ!」

 どうしたのミコ?私達いつも一緒でしょ?

 「可愛い子ぶってるのが鼻につくのよ!ああ忌々しい!こうしてやる!」

 やめて、ミコ!苦しい!苦しいってば!


 「ミコって、双子なのになんでいつもお姉ちゃん面なの?何でも仕切りたがって、うんざりなんだけど」

 マコ、いきなり何?私、そんなつもりないわ。

 「自分だけ良い子ぶりやがって!ああムシャクシャする!あんたなんてこうよ!」

 やめて、マコ!やめてったら!苦しい!


 ミコとマコの手足が、だらりと力なく垂れた。ガクトは首に食い込んだ両手を開き、2人は合わせ鏡のように倒れた。

 「くそっ!」

 アリマは歯を食い縛り悔しがった。

 「双子の天使、ミコくん、マコくん。せっかく飛べなくしてあげたのに、懲りない子達だ。さて、残り4人。もう目は見てくれないかな。戦法を変えよう」

 ガクトは、先刻の渦を次々に生み出し、部屋の各所に点在させた。

 「あの渦は空間を越えて繋がっているみたいだ。渦の近くには近づかない方がいい」

 悟が分析する。

 「そうだ。四天王から手に入れた玉、1つずつ持っておこう。役に立つかもしれない」

 セトが白、アリマが蒼、ナギサが朱、悟が黄金の玉を手に取った。


 渦の奥には、奈落の如き深い闇が広がっている。

 ここへ手を突っ込むなんて、想像するだけでもぞっとする。こんなものを生み出し、いとも簡単に手を入れるガクトは正気ではない、と悟は改めて思った。


 ナギサは、機関銃の弾を抜き、朱の玉を嵌め込んだ。

 ガクトはあの渦を通じて攻撃してくる。つまり、渦を攻撃すればガクトへ通じる、ということだ。

 10数個ある全ての渦に向かって、ナギサは火焔砲を発射する。

 気付いたガクトは渦を閉じようとしたが一足遅く、背中の渦から火焔砲をしたたかに浴びた。

 「ぐうぅ。小癪な」

 初めてガクトから笑いが消え、苦悶の表情が浮かぶ。

 が、次の瞬間、ナギサの眼前にガクトが迫っていた。渦を通過し、ショートカットしてきたのだ。

 ナギサは驚き、思わずガクトの目を覗いてしまう。

 「あと3人」

 ナギサは崩れ落ち、ガクトには笑みが戻っている。

 「ナギサくん。創意工夫溢れた君の戦いぶりには感心させられたよ、ありがとう!」

 そう言うと、ガクトはナギサの腹を蹴りあげた。


 「そこまでだ、ガクト!」

 アリマは、ゲンムを倒した「爆縮」を、マグマの熱で再現しようとしていた。

 「いけー!」

 右手から水素、左手から酸素を、マグマに向かって投げる。

 「そうはいかない」

 ガクトはマグマの前に渦を生成し、水素と酸素は熱に反応する前に渦に飲まれてしまった。

 「君はアリマくん。いい賢者に成長したね。ただ、まだまだ経験が足りていないようだ。例えば、」

 ガクトは、マコの髪を掴んで宙に浮かせ、マグマへと近づけた。

 「やめろ!」

 思わず、アリマが叫ぶ。

 「例えば、恋愛経験とかね。どうする?まだ僕とやるかい?」

 「卑怯者!」

 アリマは歯を食い縛り、ガクトを睨み付けた。

 「僕1人相手に、よってたかって虐めていたじゃないか。こんな真似でもしないとフェアじゃないからね」

 アリマは蒼の玉を投げ捨てた。

 「・・・降参だ。マコちゃんを助けてくれ、頼む」

 「僕も一介の王だ。降参した相手に追い討ちはかけないよ。この子は殺さずにおこう」

 ガクトは壊れた玩具を捨てるように、マコを床へ放り投げた。

 「あと2人」


 その時、悟とセトの後ろでドスンと物が落ちる音がした。

 振り返ると、そこにはジンとマキがいた。

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