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シューティング・スター  作者: 白石来
35/41

ー35ー 【異世界~ゲンム】

 「この北地区まで来たということは、スザク、ビャッコ、セイリュウの3人が倒されたということ。この怨み、晴らさでおくべきか!」

 ゲンムの声が、空気をビリビリと震わす。抑えきれない怒りが伝わってくる。

 「儂が相手になるからには、貴様らは終いだ。ガクト様には指一本触れさせぬ」

 鎧の奥の目が鋭く光る。ゲンムは、先に分銅が付いた鎖を振り回しはじめた。分銅が壁を擦ると、壁が脆く崩れ去った。人間に当たれば、壁と同じく骨を砕くだろう。

 「この狭い空間では、儂の鎖を避けられまい!」

 ゲンムは鎖を無数に放った。鎖が壁や地面にぶつかり、反射しながら、逃げる隙間なく悟達に襲いかかる。

 龍に変化し、楯となったインロンの身体に分銅が突き刺さる。さすがのインロンも苦痛の声をあげた。

 「サトル、あれ貸してくれ」

 アリマは、悟から蒼の玉を受け取り、ゲンムに向けた。

 「インロン、伏せろ!」

 蒼の玉から、滝のように水が噴射され、インロンの頭を通過し、ゲンムを襲った。

 「どうだ?」

 ゲンムはびしょ濡れになったが、微動だにせず立っている。

 「馬鹿にしてるのか?まず貴様から殺すぞ」

 滴る水が、焼けた分銅に落ちて蒸発する。その様子を見て、悟は閃いた。

 「アリマ、ちょっと耳貸して」

 悟の説明が理解できず、アリマは首を傾げた。

 「まあ、悟の言う通りやってみるけどよ。しばらく時間稼いでくれよ」

 アリマは蒼の玉に両手を当て、精神を集中させはじめた。

 「みんな、アリマに協力してくれ」

 悟の声に、全員が反応する。

 ミコ・マコは、翼の羽をゲンムへ矢の如く放つ。

 インロンは、翼を羽ばたかせて風を起こし、ゲンムのバランスを崩す。

 ナギサは漁業用の網を投げ、鎖の威力を軽減させる。

 タイガとセトは、網を抜けた分銅を蹴りや突きで払い落とす。

 悟は、白の玉で氷柱の楯を作り、朱の玉で鎖を焼き切る。

 「小賢しい真似を!」

 ゲンムは苛立たしげに吠えながら、さらに鎖を増して攻撃してくる。

 「そろそろ限界よ!アリマ!」

 ナギサが叫ぶ。

 「みんな、ありがとよ」

 アリマは蒼の玉から放した、何も持っていない両手を、ボールを投げるように振りかぶった。

 「?」

 ゲンムは拍子抜けした顔だ。

 悟はタイミングを見計らい、朱の玉を放り投げた。

 「みんな、伏せろ!」

 同時に、大爆発が起こった。伏せた悟達の背中に、岩の破片が降り注ぐ。爆発が止み、破片を払いながら身体を起こすと、ゲンムは跡形も無く砕け散り、黄金の玉だけが残されていた。壁に変化したガジャ達も砕け散っており、爆発の凄まじさを物語っていた。

 「一体何がどうなったの?」

 セトがアリマに尋ねる。

 「いや、俺もよくわからん」

 アリマは悟を見た。

 「『爆縮』だよ」

 全員の頭の上に、「?」が浮かんだ。

 「アリマに、蒼の玉の中の水を、水素と酸素に分けて、取り出してもらったんだ。そこに朱の玉の炎と反応させた。そうすると、水蒸気が生成される時に、物凄いエネルギーが発生して、爆発が起こるんだ。化学の実験でやったのを、偶然思い出した」

 悟の説明を聞いても全員よく分からなかったが、ゲンムを倒したことは理解できた。

 「後は、ガクトを倒すのみ、ね」

 タイガが噛み締めるように言った。

 「遂にラスボスか。気合い入れ直さないと」

 アリマが自らの頬を平手打ちする。

 「あんたは普段の気合いが足らないから、丁度いいわね」

 「何をー!」

 ナギサの茶々に、アリマが反応する。


 最後の戦いを前に、全員が昂りを感じていた。その時、プロビデンスに着信があった。

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