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シューティング・スター  作者: 白石来
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ー3ー 【異世界~流星】

 「サトル、マリリンとシンディに餌あげてきて」

 「了解」

 「サトル、その後、搾乳手伝って」

 「わかった」

 「サトル、今夜はマドンナが出産しそうだから、仮眠しとけよ」

 「おじ・・父さん、先に仮眠とって。僕はその後とるよ」

 「わかった、そうさせてもらうよ」


 悟がセトの家に来てから長い時が流れていた。悟の記憶はほとんど回復せず、悟は半ば諦めていた。セト達も、それについてはあえて触れなかった。

 ヤナギ婆さんの「働かざる者、食うべからず」の方針の下、悟は牧場を手伝った。ジンの指導は的確で、悟はどんどん仕事を覚えていき、今では一人前として働けるまでになっていた。

 また、マキが悟の寂しさを察してか、

 「サトル、私達を本当の家族と思ってくれてもいいんだよ」

 と言ってくれたことがきっかけとなり、悟も、ジンを「父さん」、マキを「母さん」と呼ぶようになっていった。


 仕事が終わると、走り回れるまでに成長したトキと鬼ごっこで遊んだり、ヤナギ婆さんから土地に纏わる言い伝えを聞いたりした。ヤナギ婆さんの話は落語のように表現豊かで面白く、悟は毎回話に引き込まれるのだった。

 たまの休日(全員が休む日は1日もなかったが)には、買い出しのために隣の町まで出掛けた。市場では、肉や魚、野菜、調味料などを調達し、道具屋街では鍬やブラシなどを購入した。

 ある日の休日、悟は道具屋街を抜けた路地を曲がった所に、一軒の骨董屋を見つけた。看板には「地球屋」とある。悟は店に入ってみた。

 中には皿や壺がところ狭しと並んでいる。壁には小さな油絵が飾られ、天井には古びたシャンデリアがあった。無数の商品がひしめく一角に、アクセサリー売場があった。悟は歩を止め、ネックレスをひとつ手にとった。流れ星を象ったデザインで、星の部分には碧い石が嵌められ、淡く輝いている。碧い石の輝きの中に、セトの眼差しが浮かんだ。悟は僅かな貯金をはたいて、ネックレスを購入した。


 数日後の満月の夜、悟はセトを天体観測に誘った。牧場の先に小高い丘があるのだが、その頂上に、今は無人の小さな天文台があるのだ。二人は無言で月や金星を眺め、オリオン座を見つけては、冬の訪れを感じていた。

 「流れ星」

 一筋の光が夜空を走った。夜空を見上げるセトの横顔を、悟は見つめていた。

 「セト、これ」

 ポケットからネックレスを取り出す。セトは一瞬目を凝らし、その後、笑顔がこぼれた。

 「きれい」

 悟は留め金を外し、セトの首の後ろに手を回し、留め金をはめてあげた。

 「嬉しい。大事にする」

 セトは小鳥を抱くように、流れ星の飾りに触れた。

 「セト、僕、セトのことが」

 向き合ったセトの目から涙が流れた。涙は頬に薄い筋を描き、まるで流れ星のように、儚く消えた。

 そして、二人は恋人になった。


セトは自立していて純粋な女性。私の理想の女性像が投影されています。

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