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シューティング・スター  作者: 白石来
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ー2ー 【異世界~出会い】

 セトは、牧場での仕事を終え、家路についた。夕陽が牧草を照らし、オレンジの海のようだ。力仕事の疲労感が、じわじわと身体から染み出してくる。

 セトの家は畜産業を営んでいる。裕福ではないが、素朴な暮らしにセトは満足していた。

家に着くと、裏口から入り、汚れた服を脱ぎ、風呂場へ直行する。家の中を清潔に保つための、暗黙のルールだ。

 風呂場のドアを開けると、知らない男が湯船に浸かっていた。

 「あなた、誰?」

 「うわわわわわわわ」

 これが、悟とセトの出会いだった。


 「はじめまして、サトルといいます。お邪魔してます・・・」

 セトの家人達に囲まれる中、悟は挨拶した

 「それにしてもおまえさん、あんな所で寝てたら風邪ひくべ」

 「実は自分でも何故あそこにいたのか、記憶がないんです」


 悟が目を覚ました時、視界には夕焼け空が広がっていた。朦朧とする頭を2、3度振り、ゆっくりと上半身を起こす。そこには牧草地が遥か先まで続いていた。なんだか懐かしい感じがする。その時、首筋に生暖かい息がかかった。

 「うわっ」

 悟が驚き振り返ると、大きな牛の顔が迫っていた。潤んだ目でじっとこちらを見つめ、口からは涎が垂れている。

 悟が怯えていると、老人の声がこだました。

 「こーれ、マリリン!その子は牛じゃねーべよ!禁断の恋だべか?ひゃっひゃっひゃっ」

 マリリンと呼ばれた牛は老人の方を向き、ぶるぶると鳴いたあと、丘を登って行ってしまった。

 「おまえさんも、そんなとこで寝てたら、マリリンも牛と勘違いすっぺ?」

 「すいません、あ、ありがとうございます」

 悟は老人に礼を言い、急いで立ち上がった。

 「オラ、ここで牛さ育ててる、ヤナギってんだ。おまえさん、ずいぶん汚れとるな。家で風呂入ってけ」

 こうして、ヤナギ婆さんに助けられ、セトの家で風呂をご馳走になったわけだ。


 「記憶がない?寝ていたのではなく、気絶していたということでは?」

 家長とおぼしき、口髭を蓄えた中年の男性が尋ねた。

 「どうやらそうみたいです。でも、何故気絶していたのか、気絶する前の記憶すらも曖昧で・・・」

 「お父さんやお母さんは?一緒じゃなかったの?」

 今度は、男性の妻と思われる、髪を後ろでひとつに結び、化粧気はないが、肌が透き通るように白い女性が尋ねた。

 「多分一緒じゃないです・・・」

 聞かれて初めて悟は絶句した。自分の名前くらいしか、まともに覚えていないのだ。

 「記憶喪失・・・」

 知らぬ間に、悟の目から涙が溢れ出していた。「どうしよう・・どうしたら・・」涙が止まらない。

 「大丈夫」

 悟の肩に手を置き、セトは真っ直ぐ悟の目を見た。

 「私はセト。あなたは私が護る。記憶はゆっくり取り戻せばいい」

 力強い眼差しに、悟は既視感を覚えた。誰だろう。いつも近くにいたような・・・。もう悟の涙は止まっていた。


 セトは5人家族だった。

 まず、セトの祖母、ヤナギ。

 次に、セトの父、ジン。冷静沈着で、物事を論理的に分析する。しかし、牛を溺愛しており、高級な飼料を使ったりと、牛に対しては冷静さが微塵もない。

 続いて、母のマキ。気遣いの人で、相手の先を読んで、手を差しのべてくれる。美肌。

 そして、長女のセトと、まだ三歳の長男、トキ。


 悟はこの家族をはじめ、様々な人達にに護られ、導かれ、この先の道を切り拓いてゆくことになる。

第二話です。まだ異世界要素ゼロですが、徐々に出てきますのでお付き合いください!

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