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シューティング・スター  作者: 白石来
19/41

ー19ー 【現実世界~岸輪久】

 「声紋鑑定の結果でました、岸輪久の声との合致率は97%、クロです」

 日下悟が消えて三週間が経過していた。声紋鑑定の結果は土御門が待ちに待ったものだった。この証拠があれば、岸の家宅捜索ができる。岸の行動を観察した限りにおいては、飛行物体の隠し場所は自宅マンション以外にあり得ない。

 「よし、令状を取れ。家宅捜索だ」

 特殊全員が浮き足立つのが、土御門にもわかった。全ての決着がつく日は近そうだ。


 家宅捜索当日。朝7時に特殊メンバーは集合し、管理人立ち会いの下、503号室のインターホンを鳴らす。しばらくして、少し寝ぼけた声で応答があった。

 「どちら様ですか」

 岸の声に間違いない。

 「警察です」

 10秒ほどの沈黙の後、玄関ドアが開いた。黒いスウェットの上下を着た岸が現れた。

 「岸輪久さん、ですね?」

 「そうですけど」

 「刑法第224条、未成年者略取及び誘拐の疑いで、岸輪久の自宅である、エトワール京橋503号室を捜索する」

 令状を読み終わるや否や、5人の警察官が、一斉に部屋の中へ踏み込んでいく。

 岸はその場に立ち尽くし、事の成り行きを静観している。表情にあまり変化は見られないが、半ば諦めているようにも見えた。


 家宅捜索が始まってから、ものの5分で、岸の部屋は、竜巻が通りすぎたかのような有り様だ。すると、寝室から間宮の声がした。

 「室長、クローゼットの中に金庫があります」

 「岸さん、開けていただけますか」

 岸は渋々寝室へ行き、金庫の鍵を開けた。

 中には、まさにあの日見た、黒い飛行物体が収められていた。

 「これは」

 土御門が岸に尋ねる。

 「さあ・・・」

 「我々はこれが何かを既に知っている。全て話してもらうぞ」

 「・・・わかりました」

 岸は項垂れながら答えた。


 「この装置は、我々の世界から持ち込んだもので、こちらの世界にはない物質、技術で造られたものです。『プロビデンス』と名付けられていて、とても神聖なものです」

 「なぜあなたがこれを持っているんです」

 「私はある使命を受けて、このプロビデンスを使って、単身こちらの世界へやってきました。我々の世界は大きな脅威に晒されつつあり、どうしても、こちらの世界の助けが必要になったんです」

 「それで誘拐を?」

 「手荒な真似をするつもりはなかったんです。ただ、こちらもあまり時間が無くて。説明したところで、とても信じてもらえる話でもありませんし」

 「我々もまだ半信半疑だ。そのプロビデンスとやら、確かに地球上のものとは思えないが、かと言って、こことは別の世界があるなどと言われて、はいそうですか、とはならない」

 「私は、我々の世界で賢者と呼ばれる役職に就いています。こちらの世界で言えば、科学者のようなもの。科学者は、目に見える事実を積み上げて結論を導き出します。私は自分の目で見たものしか語りません」

 「我々は、悟くんが無事に戻ってくれば良い。個人的に、プロビデンスやこことは別の世界に興味がないわけではないが、それは別の話だ」

 「日下悟くんこそが、我々が渇望していた救世主であると確信しています。悟くんは、まさに今、我々の世界を救おうと懸命に尽力してくれている最中。申し訳ありませんが、この期に及んで、今すぐに戻すことはできません」

 「年端もいかない少年を捕まえて、救世主だと身勝手に祭り上げることの、どこに正義がある?悟くんのご両親が、どれほど心配しているか、貴様には分からないのか!」

 土御門は岸の胸ぐらを掴み、激昂した。慌てて、鏑木が間に入る。土御門は掴んだ手を放すも、なお岸を睨み付けていた。

 「大変な罪を犯したことは百も承知です。全てが終わったら、罪は生涯をかけて償います」

 「人の命が懸かった話なんだ!貴様の罪などどうだっていい、今すぐその装置で悟くんを戻せ!」

 「こっちだって何千万という人の命が懸かった話なんです!できません!」

 土御門と岸は、お互い譲れずに膠着した。


 このままでは埒が明かないと判断した鏑木は、岸を連行、プロビデンスを押収して、警視庁へ一旦引き揚げることにした。


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