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シューティング・スター  作者: 白石来
16/41

ー16ー 【異世界~関所】

 空の旅は決して快適とは言い難かった。ナギサも空の運転には慣れておらず、気流を読むのに苦労していた。船は時に大きく揺れ、悟とタイガは船酔いで潰れてしまった。

 「サトルちゃん、大丈夫?」

 へろへろになりながら、タイガは悟を心配している。

 「タイガの方が辛そうだ。酔い止めを飲むといいよ」

 2人の関係は日を追うごとに、良好なものになっていた。


 その後、上昇気流にうまく乗ることができ、揺れもおさまってきた。ナギサは自動運転に切り替え、特製カレーを皆に振る舞った。

 「うめえ、うめえ。何杯でもいける」

 アリマは、ガツガツとカレーを掻き込んだ。

 「スパイシーなのに、後味に甘さを感じる。隠し味は何?」

 「さすがタイガね。星屑草の蜂蜜をちょっぴり入れてるの」

 「だから爽やかな甘さが残るのね」

 「うまけりゃなんでもいいぜ」

 「そういうガサツな人って、女子にモテないわよ」

 タイガにたしなめられ、アリマはショックに打ちひしがれていた。


 そうこうするうちに、天上世界の入口が見えてきた。他にも沢山の飛行機や飛空艇が列を成しており、順番に関所を通過していく。

 しばらく待って、悟達の順番がきた。

 「入界の目的は」

 関所の職員が尋ねてくる。

 「友人をお家に送ってあげるためです」

 悟は双子を指差して答えた。

 「『グルファの呪い』に侵されているじゃないか!君達は隔離対象だ、こっちのルートへ進め」

 職員の指示に従い、左のルートを進む。進んだ先はトンネルのようになっており、左右の赤いランプが定期的に明滅している。しばらく進むと行き止まりになった。背後のシャッターが締まり、左右から何らかのスプレーが噴射された。

 「一体何のつもりだよ」

 突然の展開に、アリマが憤る。


 しばらくスプレーのシャワーを浴びたアメノトリは、スプレーが止むと同時に開いた、正面のゲートからさらに奥へ進んだ。奥へ進むほど、通路は狭くなっていき、アメノトリは停止した。

 「一人ずつ、船から降りてくれ。さっきの双子は一番最後だ」

 スピーカーから、関所とは別の職員の指示が飛ぶ。

 悟達はしかたなく、指示に従った。

 船を降りると、防護服を着た職員が2名来て、さっきと同じであろうスプレーを浴びせてきた。

 ミコ・マコまで全員の儀式が済むと、防護服の職員に連れられ、ラボのような部屋に通された。

 「手荒な真似をしてすまない。呪いにかかった入界者は、消毒をしてからでないと入界できない法律なんだ」

 防護服のヘルメットを外した職員が説明した。白髪混じりの髪に銀縁の眼鏡を掛け、顎髭が綺麗に整えられている。

 「私は入界管理局の主任、ラムダだ。我々も消毒が呪いに効果があるとは微塵も思っていない。この世界は、くだらん法律ばかりで、それを直すのにも、くだらん手続が必要なんだ。申し訳ない」

 ラムダは丁寧に頭を下げた。

 「お詫びと言っては何だが、何か温かいものでも飲むかい。コッフェかチャムしか無いが」

 コッフェは珈琲、チャムは紅茶のような飲み物だ。悟達は遠慮なく頂いた。


 「君達も『グルファの呪い』にかかったんだね。天上世界では、この呪いが流行していてね。共通しているのは『片側が不能になる』ってことで、片目が見えなくなるとか、片脚が鉛のように動かなくなるとか、呪いの発現の仕方は様々みたいだ」

 「グルファの呪いなら、ウルマ様から聞いたことがあります。たしか、星降山に封印してあるはず」

 「君は、ウルマ大賢者のお弟子さんなのか!それは凄い。書物でしか存じあげないが『封印大戦争』の第一線で活躍した、名のある賢者様じゃないか」

 「あの戦争のことはあまり語ってくれません。沢山の同志を失った戦いなんだそうで」

 「そうか・・・壮絶な戦だったと記されていたよ。あ、すまんすまん、そのとおり、星降山の頂上に封印されたと伝えられているよ」

 「じゃあ、早速、星降山に向かいましょうよ。みんな、ミコちゃん、マコちゃんの呪いを封じてあげるつもりでしょ?」

 セトがみんなに同意を求めた。

 「すまんが今すぐ、って訳にはいかないな。まず、入界者は原則、王と面会する決まりだ。そして、天上世界に一定期間滞在する者は、滞在申請が必要だ。さらに、星降山は自然環境を保護している山だから、入山手続が必要になる」

 悟達はうんざりした顔になった。


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