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シューティング・スター  作者: 白石来
10/41

ー10ー 【異世界~ナギサ】

 「ズマイラの呪いは、ここから西の海に浮かぶクサリ島という無人島に封じてあった。船が必要になるから、この手紙を漁業組合の長に渡すといい。いい船乗りと船を見繕ってくれるだろう」


 ウルマの言葉を受け、悟達3人は港に隣接する漁業組合を訪ねた。

 「まあ、ウルマ様直々のお願いじゃあ、聞かないわけにいかないね。カモメ、父ちゃん呼んできて」

 組合長の妻らしき女性が、娘とおぼしき女の子に使いを頼んだ。

 「はーーーい」

 カモメは、眉根をぐっと寄せ、真剣な顔で駆け出していった。

 しばらくして、今度は満面の笑顔でカモメが戻ってきた。

 「父ちゃんいたーーー」

 カモメの後ろから、牛のように巨大な男がやってきた。

 「どうもお待たせしてしまって。あんまりいい陽気なんでちょっとうたた寝しちゃって」

 「馬鹿!お客さんにそんな恥ずかしいこと言うんじゃないよ。お客さんは急いでらっしゃるんだ。ウルマ様からのお願いで、いい船乗りと船をご所望なんだよ」

 奥さんに叱られて、しゅんとしている。この家はかかあ天下に違いない。

 「ウルマ様のお弟子さんかあ。俺、組合長やってる、ナルトってもんです。さっそく船、ご用意しますね」

 ナルトはそう言うと、港へ案内した。豪華客船のような巨大な船から、遠泳漁業用の中型船、小型のヨットまで、様々な船が並んでいる。

 「クサリ島まで、皆さん3人で行くってことなら、小型船で充分でしょうな」

 ナルトは並んだ船を見て歩きながら、検討をつけているようだ。ナルトの足がぴたりと止まった。

 「この船がおあつらえ向きだ」

 船首から船尾までピカピカに磨かれ、真っ白な帆が風にたなびく、こじんまりとしてはいるが、威厳のある船だった。船体には「アメノトリ」と刻んである。

 アリマが船体に触れようとした瞬間、船内から叫び声がこだました。

 「勝手に触るな!」

 アリマは驚いて尻餅をついた。

 船内の階段を昇って現れたのは、全身ツナギを着ており、大きなゴーグルを架けた、背の低い華奢な女性だった。船の整備をしていたらしく、油で顔も身体もギトギトに汚れている。

 「ごごごごめんなさいいい」

 アリマは、叱られたショックと、発した人物とのギャップとで混乱をきたし、尻餅のまま後退りした。

 「この子は、あたしが手間暇かけて育てた最高傑作なの。気安く触れてもらっちゃ困るわ」

 「ごめんな、ナギサ。まずはナギサに話を通して、それから交渉、だよな。ルール破って悪かったよ」

 ナルトは大きな身体を折り曲げてナギサに謝った。

 「ナルトに謝られるとなぁ・・・。オッケー、平気よ。それで?どういう話?」

 ナルトは悟達の目的をかいつまんで話してくれた。ナギサは腕組みした姿勢のまま、黙って耳を傾けていた。

 「クサリ島に呪いが封じてあるのは、あたしも婆ちゃんから聞いたことある。サトルとセトっていうのね、2人とも辛かったね、」

 ナギサは唇を噛みしめてから、続けた。

 「光栄だよ。この子にはそういう皆のためになる働きをさせたかったんだ。力になろうじゃないか」

 船体の「アメノトリ」の刻印を指でなぞりながら、ナギサは答えた。

 「この子の名は『神の使い』って意味なの。貴方達に出逢ったのも、ガルーダの神のお導きね。よろしく」

 ナギサは手を伸ばし、3人と固く握手を交わした。ナギサの手は豆だらけでごつごつしていたが、悟の手には温もりが残った。


どのキャラクターにも思い入れがありますが、ナギサは特に好きなキャラクターの一人です。自分の好きにまっすぐ正直な姿は純粋で、自然と親しみが湧いてきます。

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