File95 首都惑星ヴォルダルへの貨物輸送からの災難② 汚職する奴はどこにでもいる
お待たせいたしました
船のローン返済の事でご指摘いただきましたので、修正いたしました。
俺は、わずかに離れていただけで、航行不能になったホワイトカーゴⅡをみて、呆然としてしまった。
幸いローンは払い終えて残っていないが、新しく船を買えるほどの金はない。せいぜい頭金ぐらいだ。
それにしてもなんで爆発した?
メインエンジンは完全に停止させていた。
荷物は降ろしたし、新しく積み込んでもいないから、爆発する原因なんかもあるはずがない。
とにかく、幸い形が残っている部分が多かったので、まだ使えそうな物や貴重品を引っ張りだそうと船に近づいた時、後ろから声が上がった。
「おい!さっきの音はなんなんだ?!」
「うわっなんだこりゃ?!」
「おい!誰か警備か警察に連絡を!」
俺は気がつかなかったが、当然警報が鳴り響いており、近くにいた同業者や作業員が集まってきていた。
すると、人混みを掻き分けて、おそらく一番近くにいたらしい2人の警官が、慌てた様子でやってきた。
まあ、爆発が有ったんだから当然だろう。
そして片方の警官が、
「おい貴様!なんてことしやがったんだ!」
と、まるで俺がこの爆発を引き起こした犯人であるかのように怒鳴り付けてきた。
「そりゃどういう意味だ?」
「お前の船が爆発したんだからお前の責任なのは当然だろうが!」
なんなんだこいつら?
ろくに事情聴取も現場検証もせずに、その場にいた人間をいきなり犯人扱いとは、強引にもほどがある。
服装を見た感じ、偽者には見えないから不良警官ってとこか。
「それはおかしいな。俺は自分がここにある船の持ち主だとは一言もいっていない。さらにいえば、俺の行動は火事場泥棒に見えなくはない。つまりお前らが本来かける言葉は『そんな所で何をしてるんだ?』じゃないのか?」
なので、矛盾点や理にかなってない部分を指摘してやると、
「うるさいっ!とにかくお前の船が爆発したせいで被害がでたんだ!署まできてもらおうか?」
その不良警官がそういうと、もう1人の不良警官が俺の腕を掴んできた。
おそらくこいつらは、事件の被害者に冤罪を擦り付け、何らかの取引を持ちかけるパターンだ。
場合によっては、自分達で事件を起こして、それを被害者に擦り付けているのかもしれない。
だとしたら、こいつらは相当に間抜けだな。
追い詰める理屈が矛盾だらけの穴だらけで、立証なんかできる訳がない。
しかしそこに、この間抜け共の味方が現れた。
その瞬間確信した。
やっぱりあの胡散臭さは間違いじゃなかったと。
「おやおや。大変なことになってますねえ」
その場に現れたこの間抜け共の味方は、さっきまで一緒にいたヘンリー・タダヤマだった。
そしてそこからは、三文以下のクソ茶番がはじまった。
「なんだお前は?こいつの知り合いか?」
「はい。ちょっとご縁がありまして。なにがありましたか?」
「こいつの船が爆発して、この施設をぶち壊しやがったんだ。もしかしたらテロリストかもな」
「そんなことはありませんよ。この人はテロリストではありませんし」
「そうなのか?だったら、被害の弁償をするというのなら、逮捕は勘弁してやってもいいが、被害額は10億クレジットは確実だろうな。こんなやつに払える額じゃあないなあ」
「でしたらどうでしょう?私どもの社が支払いましょう。その代わりライアットさんが我が社と契約いただくというのは?」
「お、そりゃあいい!おいおまえ!今すぐ契約とやらをしやがれ!」
ヘンリー・タダヤマと不良警官共は、にやついた笑いを浮かべていた。
「するかクソボケ!爆破テロとして警察を呼んでしっかり現場検証してもらう!」
俺は警察の腕を振りほどくと、汎用端末で緊急用番号に連絡しようとする。
「てってめえ!せっかく俺達が穏便に済ませてやろうってのに、どういうつもりだ?!」
「俺は普通の事をするだけだが?」
当然だが、そんなもの拒否するに決まっている。
すると不良警官共は、
「だったら逮捕しかねえな?」
平然と光線銃を突き付けてきた。
その時のヘンリー・タダヤマのにやついた顔が、死ぬほどムカついた。
そうして俺は犯人でもないのに手錠をかけられ、警察署に連行された。
到着すると、なぜかそこにはレストレイド・リュオウ警部が、強面の部下達を従えて待ち構えていた。
その中には、以前紹介してもらった、短くつんつんとしたライトブラウンの髪に黒い瞳、顔はシュメール人らしく中性的ではあるが、どちらかというとボーイッシュな女の子のような印象を受けるのはそのままだったが、捜査官としての自覚が身に付いてきている感じになったアーデント・ラツィムの姿もあった。
まあ、強面の連中に混ざっていると違和感しかないが。
「リュオウ警部!」
「意外なところで会うなショウン」
リュオウ警部は、口調はいつもと変わらなかったが、ものすごく厳しい表情をしていた。
すると不良警官の片方が、
「なんだお前は?」
と、脅しをかけた。
「GCPOのレストレイド・リュオウ警部だ。そいつをこっちに渡してもらおうか」
が、警部殿にこんな不良警官の脅しが効くわけはない。
逆に不良警官共は、GCPOの名前に怖じ気づいた感じだ。
「こっこいつは爆破テロの犯人です!渡すわけには…」
おいおいふざけるなよ!
俺がいつ爆破テロの犯人になったんだ?
「だからこそ引き渡せといってるんだ」
てっきり否定してくれるものだと思っていたが、庇うこともなく、不良警官共に俺の引き渡しを要求した。
「はっ…はいっ!」
不良警官共はリュオウ警部とその部下数人に囲まれてビビりまくり、俺をリュオウ警部に引き渡すと、逃げるようにその場から立ち去っていった。
「ありがとうごさいます。助かりました」
俺は安堵のため息をつき、リュオウ警部にお礼を言う。
しかし、
「話は取り調べ室で聞こうか」
リュオウ警部は厳しい表情のまま、部下に命じて俺の腕を捕ませ、警察署内へ入っていった。
取り調べ室は、刑事ドラマで見た光景そのままだった。
取り調べ用のテーブルに椅子が2脚。
俺の対面には、リュオウ警部が座り、その横にはアーデント・ラツィムが立っていた。
「それで、なんでお前の船が爆発したんだ?」
「知らないよ!あのヘンリー・タダヤマって奴にスターフライト社に転職しないかって話をされて、断ってから停泊地に戻ってきたらいきなり爆発したんだ!」
「メインエンジンをかけっぱなしにしていたとかは?」
「駆動キーを持ち歩いていたから絶対に動かねえよ!」
「本当か?実は爆破テロを計画していて、誤爆したんじゃないのか?だとしたら、たとえ昔からの知り合いでも容赦はせんからな」
明らかに、俺が爆破テロリストだと決めつけたようなことを言ってくる。
おかしい。リュオウ警部なら、俺がテロなんかやらないことはよくわかってるはずだ。
すると不意に、横にいる部下のラツィム巡査の持っている立体投影型板状端末を指差した。
そこには、
『こういった不自然な爆発事件が共和国各地で起こっています。その大元はスターフライト社らしいのですが、地元警察内部に協力者がいるらしいので、このような手段をとりました。
申し訳ありませんが、その調査のためにしばらく拘束されてください』
と、表示してあり、警部がお願いするというジェスチャーを小さくしてきたので、こちらも小さく承知の合図をだす。
「とにかく俺は爆破テロなんか考えてねーよ!長い付き合いなんだからわかりそうなもんだろ!」
承知したうえで、取り調べの続きをする。
「まあ、自分の船を再起不能にしてまでテロはしないとしても、施設の破壊は事実だからな。宇宙港から損害賠償請求がきている。100億クレジットだそうだ」
「被害者だぞ俺は!」
どうやら取り調べのやり取りに乗じて情報をくれるらしい。
くそっ!わかっちゃいたが船はダメか。
それになんなんだよその理不尽な請求額は!
するとラツィム巡査が、
『あきらかな不当請求なのは間違いありません。貴方の船が爆破され扉が吹き飛び、床や壁が少し焦げただけでその額はあり得ません。今までのものと同じ手口です。宇宙港内部にも協力者がいるようです』
と、教えてくれた。
「まあ、爆破テロはともかく、施設の器物破損は覚悟するんだな」
リュオウ警部のその顔は、なんとなく面白がっているようにも見えた。
次話から暫くは、主人公視点が減ります
申し訳ございません
ちなみに描写するのを忘れていましたが、船のローンは報酬をもらったあと、すぐに振り込みにいっていました。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




