File92 惑星オルランゲアでの休日⑤ 迂闊な行動は自分を不利にする
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VIP専用個室ラウンジを出た足で、マーケットに向かいながら、あの御嬢様2人に出すメニューを考える。
レイアナ・リオアース嬢は子供な上に、ハンバーグが好物だ。
まあ大人でも好きな人は多いが。
対して、ファルナ・ジョルカスト嬢は、見た目は小柄ではあるが、立派な大人の上にドラコニアル人だ。
何よりも量が大事になる。
それを考えると、大量に作りやすいものが良いわけだが…
うん。ハンバーグでいいな。
それぞれ別のものを作るのは手間がかかる。
ソースもデミグラスにしておけば問題はないだろう。
デミグラスソースは手間がかかるが…まあ間に合うだろう。
そうして決まったメニューはこんな感じだ
ライス
デミグラスハンバーグ(人参のグラッセ・グリンピース・フライドポテト付き)
大根の白味噌汁
我流コブサラダ
林檎とパイナップルのソルベとカスタードアイスクリーム
我流コブサラダは、以前帝国の少将閣下に出した賽の目切りにしたゆで卵・キュウリ・湯通しニンジン・湯通しじゃがいも・ロースハムをいれ、自家製のマヨネーズであえたサラダのことだ。
あのときは適当に作っていたが、たまたま見たサイトに名前と正しい作り方が載っていた。
カスタードアイスクリームってのは黄色身が濃いアイスクリームのことだが、わりと簡単だ。
材料は、牛乳・卵・薄力粉・砂糖の4つだけ。
作り方は、
1:容器に玉子を割り入れ、砂糖を加えて白っぽくなるまで混ぜる。
2:混ざったら薄力粉をふるいでふるいながら入れる。
3:牛乳を少しずつ加えてその都度混ぜる。
4:600wのレンジで2分加熱したのちに混ぜる。
5:もう一度600wのレンジで1分加熱したら、容器に流し入れ、冷凍庫で2時間程冷やした後、取り出して平らにする。
6:3時間冷やしたら完成。
玉子も使ってあるから、ファルナ・ジョルカスト嬢の受けも良いだろう。
俺は、全部の工程の手順を考えながら、包丁を手に取った。
それから数時間後。
御嬢様2人が、執事を伴ってやって来た。
レストランじゃないからラフな格好でと言っておいたので、レイアナは普段の服装、ジョルカスト嬢は派手さのないふわっとした感じのワンピースだった。
「お招きにあずかりありがとうごさいます」
レイアナは、普段の生意気な様子は微塵も見せない、綺麗なカーテシーをして見せた。が、
「大抵勝手に上がり込んでくるタイプな癖になに言ってるんだ」
「これでも経済界の有名人なんですけど?」
なんとなく『違うな』と、思ってしまった。
「お招きにあずかりありがとうごさいます」
次に、ジョルカスト嬢も綺麗なカーテシーを見せた。
こっちは、レイアナと違って本物の上品さがあった。
「狭い船ですがどうぞ」
「ありがとうございます」
「なんか私と対応がちがう…」
「品格の差だな」
その様子に、レイアナ御嬢様は不満を漏らすが、経験の差からくる品格の高さはいかんともしがたい。
そしてその後ろからやって来たのが、御嬢様2人の執事だ。
「改めまして。私はファルナ・ジョルカスト様の執事のカミル・テグツシアと申します。今宵は御嬢様がお世話になります」
ファルナ・ジョルカスト嬢の執事カミル・テグツシア氏は、白い鱗に茶色の髪に黒い眼のドラコニアル人の青年で、まさに良家のイケメン執事という感じだ。
「ショウン・ライアットです。朝にも言いましたが、一流レストランを期待しないで下さい」
俺が、謙遜と言い訳のためにそう言ったのだが、
「了解しております。失礼ではありますが、期待はしておりませんので」
という、失礼なセリフが返ってきた。
多分だけど、俺がジョルカスト嬢の危機を救っていなければ、
『御嬢様に無闇に近寄らないでいただきたい』
とか言ってそうだ。
あと、ドラコニアル人ではないから、たいした料理は出ないだろうとか思われてそうだな。
するとそこに、
「私は不満がありますよ!もてなすならちゃんと女性の姿を」がつん!
レイアナの執事のトーマス・フェイフォスが、欲望全開で迫ってきたが、
「みっともないからやめなさい」
「申し訳ありません…」
レイアナに、強化プラタイトの仕込まれた靴で脛を思いっきり蹴られて沈黙した。
4人が席に着くと、俺はキッチンに引っ込み、最後の仕上げをしてから料理を出した。
コース料理というわけもないので、デザート以外は全部同時だ。
レイアナとトーマスには普通のサイズを、
ジョルカスト嬢とテグツシア執事には、ドラコニアル人にとっての普通サイズを提供した。
実際、40cmはある楕円形の皿に、ハンバーグが山盛りになっているのは、自分が作ったとはいえ圧巻だ。
「ん~これこれ!美味しそう!」
「…」
レイアナは嬉しそうにしているが、ジョルカスト嬢はなにやら難しい顔をしている。
やっぱり大人の女性にこれはなかっただろうか。
その様子に、テグツシア執事が俺を睨み付けてきた。
「すみません。レイアナ嬢に合わせたメニューだったんですが、無理なら別のものを…」
もしかすると苦手だったのかもと思って、そう提案したのだが、返ってきたのは意外な答えだった。
「目玉焼きは乗せないのですか?」
「乗せた方がよかったですか?」
「ぜひ!」
「あ、私も!」
子供っぽい感じになるから乗せなかったのだが、要らぬ気遣いだったようだ。
ジョルカスト嬢は意外に子供っぽい所があるのかもしれない。
ともかく、残った生卵をまとめて目玉焼きにして、ハンバーグの上に乗せると、2人とも満面の笑みをうかべ、
「「いただきます(わ)!」」
流石は御嬢様だといわんばかりの綺麗な所作で食事を進めていく。
あ、執事2人も当然のように目玉焼きを要求した。
その間に俺はキッチンにもどり、残りの作業を始める。
それは、自分の食事だ。
といっても、お客に出すものとは違ってまかないみたいなものにはなってしまうが。
ちなみにメニューはロコモコもどきだ。
どんぶりにご飯をよそってからレタスを敷き、フライドオニオンを散らしてから素焼きのハンバーグを乗せる。
本来ならグレイビーソースなのだが、今回はデミグラスソースと、サラダの残りの材料で作ったタルタルソースをかけてみた。
ちなみに目玉焼きは、玉子を使ってしまったので、作り置きの煮卵を乗っけた。
そして味噌汁と一緒にテーブルにもっていった。
「ショウンさん。それ、なんですか?」
すると当然のごとく、レイアナが食いついてきた。
「俺の分の飯だよ。まだちょっと作業が残ってるからな。手早く食べられるようにしたんだ」
そういって軽く中身を見せる。
「なんかそっちも美味しそうですわね。そのサイズでいただいてみてもよろしいですか?」
すると、ジョルカスト嬢がおもいのほか食い付き、料理を要求してきた。
まあ、ドラコニアル人には小鉢が増えたぐらいにしかならないだろう。
「ああ。じゃあこれをどうぞ。テグツシアさんのは今から作ってきますので」
ロコモコもどきをジョルカスト嬢の前に置き、テグツシア執事と、自分の分を改めて作るために席を立った瞬間、
「これは…宝珠煮卵ですわ!」
ジョルカスト嬢が驚愕の声をあげた。
メニューにかなり悩んだ末のこのメニュー。
まあ、お子さまがいるからいいよね
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