File07 惑星ビーテンツへの貨客輸送④・余談
なんとかできあがり
短い上に、視点変換多め
6/6 サブタイトルを改編しました
じいちゃんの船での昼食は、賑やかなものになった。
お互いに持っている情報の交換からはじまり、
じいちゃんにプレゼントした煮卵を、姉ちゃん達が羨ましそうに見つめておねだりしたり。
チャーリーが興奮しながら自分のビジネスを語ったり。
サラ姉ちゃんがティラナにセクハラをしまくったり。
ティナ姉ちゃんが海賊と白兵戦をした自分の話でエキサイトしすぎてテーブルを壊したりなど、とにかく騒がしかった。
そして一番騒がしかったのが、サラ姉ちゃんだった。
「ねーショウンちゃん。いい加減うちの子になりなさいよぉ。女の子に固定して、ドラコニアル人になるための遺伝子操作受けてさぁ。四姉妹になろうよぉ」
「いやだっていってるだろ」
「どうして私がこんなに説得しようとしてるかわかってるの?」
瞳を潤ませて訴えてくるが、サラ姉ちゃんの魂胆はわかっている。
「果実酒が好きなだけ飲めて、酒の肴を作らせるためだろう?」
「当たりー!」
もちろん俺を心配しているのもわかるのだが、明らかに酒と料理目当てなのはいただけない。
今でも十分に家族みたいなものなのだからいまさらだ。
賑やかな昼食が終わった後、俺とチャーリー達は『ホワイトカーゴ』に戻った。
姉ちゃん達は泊まっていけと言ってきたが、そろそろ宇宙港の閉鎖が解除になるらしいという情報が入り、船にいた方がいいという判断をしたからだ。
当然、姉ちゃん達が夕食をたかりに来たのはいうまでもない。
昼食以上にやかましくなった夕食が終わると。洗い物を終わらせてから、すぐに眠ってしまった。
その夜の夢見は、良かったように思う。
視点変換 ◇アプリス・ユーレンド◇
惑星ビーテンツ宇宙港の停泊地を出ると、部下達が綺麗に整列している。
そして部下達以外は誰もいない。
実に気持ちがよい。
この私のような高貴な人間が通行する空間はこうでなくてはいけない。
下賎な愚民が宇宙港内に居ること自体が、この私に対する不敬だ。
本来なら此方から指示を出すまでもなく、自主的にこうあるべきなのだ。
「ユーレンド閣下。御待ち申上げておりました」
部下の筆頭が、うやうやしく頭をさげる。
名前はなんだったか?
まあ、些末なことだ。
「命令通り、3日前から無人にしておいたようだな」
「はい。空気を全て入れ替え、誘導に必要な管制官たちは、管制塔から誰一人出しておりません」
「うむ。当然だ」
私のような高貴な人間が通行する空間は、清浄でなければならない。
下賎な愚民が呼吸した空気など、吸いたくもない。
それだけ高貴な私が、銀河共和国評議員補佐官に甘んじているのは、高貴ではない出身の評議員を全て駆逐するためだ。
成り上がりの下賎な愚民。その下賎な愚民に媚びを売る愚か者。頭が良いだけの小娘。税政改革などという世迷言を吠える小僧など、評議員に相応しくない者共全てを駆逐し、評議員全てが高貴な者達で満たされた時、全ての評議員から懇願され、私が永世評議長に抜擢されるのだ。
これは銀河にとって、偉大なる歴史の転換点となるだろう。
「御待ちしておりましたユーレンド閣下」
私の前に現れたのは、惑星ビーテンツの評議員の部下で、私のように高貴な人間が評議員になることを望んでいる下賎にしては殊勝な者だ。
私が永世評議長になった時には、小間使いくらいには使ってやっても良いだろう。
だがなにより、そいつの後ろにいる者達の方が重要だ。
「お前などよりこちらだ」
私が向かったのは、私好みの、私に相応しい美しい女達の方だ。
女達は心得たもので、私に抱きつき、その身体を惜しみ無く擦り付けてくる。
特に、自分の胸を私の顔や頭に熱心に押し付けてくる。
私のような高貴な人間にふれることは、この女達にとっては、至上の喜びであろうからしかたのないことだ。
しかしなんだ。
随分と激しく抱き付いてくるな。
「おい。そろそろ離れろ。離れろというのが解らんのか!」
だが女達は私を離そうとしない。
それどころか、人間とは思えない力で締め上げてくる。
「殺せっ!この女を殺せっ!」
その瞬間、護衛が女の頭を吹き飛ばす。
案の定、女はアンドロイドだったが、それでも私を締め上げる力は緩まなかった。
私は目の前の、おろおろしている下賎な男を睨み付ける。
おそらくこいつの仕業だ。
やはり下賎な愚民など近寄らせるのではなかった。
「この愚民を殺せっ!いや、それよりこれを早く外せ!早くっ!早くしないかこの役立たずどもがぁっ!」
めきょっぐちゃっ
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
翌朝。
テレビをつけてみると、全部のチャンネルが、評議員補佐官アプリス・ユーレンド死亡のニュースをやっていた。
死亡した場所は目の前の惑星ビーテンツの宇宙港内部。
出迎えの女性型アンドロイドに、頭を絞め潰されたらしい。
チャンネルによって分析がまちまちで、事故死と報道するところもあれば、アンドロイドを用意したビーテンツの職員の仕業だとするところもあり、さらには銀河帝国の貴族至上主義者との確執から来る暗殺劇だという、荒唐無稽な癖に、やけに証拠らしきものが揃いすぎているものなど、バラエティーに溢れる内容ばかりだった。
だが一番重要なのは、ビーテンツの宇宙港が、銀河標準時で明日の朝には解放されるということだ。
惑星上への直接アプローチは銀河標準時で本日の正午から許可が下りるが、宇宙港の方は、職員の呼び戻し、修理・点検、商品や食材の搬入、軟禁同然だった管制塔管制官たちの病院への搬送と引き継ぎなどで、どうしても時間がかかるらしい。
じいちゃんの船は、直接アプローチをすることにしたらしい。
まあ、あの船なら燃料うんぬんのケチ臭いことは言わないから当たり前だ。
俺の船は直接アプローチができないことはないが、燃料を食うのでやりたくない。
配達期限は余裕があるし、今回のニュースは銀河中に流れているだろうから、理由を察してくれるだろう。
まあ、配達場所が、目の前だから問題はない。
ともかく、宇宙港が解放されるのなら、明日の朝までのんびりするにかぎる。
奪われた食材の代金もはらってもらったし、買い出しのリストでも作っておくかな。
抹消される通信記録
…私です。処理は完了しました
…はい
傲慢な男の惨めな死は、十分に演出できたはずです
まさか本人自らが、宇宙港や惑星への直接アプローチの全面封鎖を言い出すとは思いませんでしたが…
宇宙港の職員や船乗り達には申し訳なかったとおもいますが、おかげで彼等は疑われることがありません
…はい
後処理も完璧です
元々、帝国の貴族至上主義じみた考えをしていましたから、怪しまれることはないかと…
ビーテンツ政府としても、不良品処理のための足掛かりができたはずです
…ええ
…はい。ではそのように
では失礼いたします
評議長閣下…
通信抹消
三姉妹は、ショウンを四女にしようと画策しています。
目的はお酒とお菓子とお料理です。
四女がだめなら旦那さんでもいいかなと考えています。




