File61 惑星オルランゲアでの休暇⑬ 快気した直後の連絡は嬉しいもの?
ほんのり短め
朝、目を覚まし病室のカーテンを開けると、朝日が入ってきた。
映像だとしても、なんとなく気分がいい。
そして顔を洗い、鏡を見た瞬間、俺は自分の目を疑った。
そこにあったのは、実に10日ぶりの男の姿の自分だった。
「いっっっっっっよしゃあっ!」
思わず声をあげ、直ぐ様看護アンドロイドを呼び、先生に診察の都合をつけてくれるようにお願いした。
朝食の後に、子供達が俺=オオキタ・ソーナの姿を探していたのには、ちょっとだけ罪悪感があったが、これが通常なのだからあきらめて貰うしかない。
幸いにも、診察開始時間直後に診察を受けることが出来た。
「検査の結果は問題なし。退院してくれてかまわないよ」
「ありがとうございます!」
俺は心の底から、お礼をいった。
「ストレスを溜めすぎるとまたなるからね。気を付けなさい。今日1日はゆっくりしておきなさい」
「はいご心配をお掛けしました」
診察が終わると、その足ですぐにカプセルホテルにいき、荷物を受け取った。
馴染みのところな上に、よく知るフロントマンだったこともあってか、すぐに荷物は帰ってきた。
そして、デニスから船を受けとるべく、ドックに急いだ。
「お、治ったのか?」
「ああ。ようやく落ち着けるぜ」
ドックにある事務所で、受け取り書類にサインをし、腕輪型端末と虹彩をチェックして本人確認をし、駆動キーを受けとる。
「No.500の停泊地を押さえてあるから、そこに停めてくれ」
そうしてようやく、俺は船に乗り込んだ。
セキュリティや扉の開閉などの最低限の機能は、蓄電池で作動しているが、それ以外は船内電源を立ち上げる必要がある。
俺は操縦席に座ると、駆動キーを差し込み、まずは船内電源を立ち上げる。
次にセンサー類を立ち上げて、全てのチェックを完了させると、管制塔に通信をいれる。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴII』。港内移動の許可を求む」
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅡ』港内移動を許可する。どうやら治ったみたいだね。身体は大丈夫なのかい?』
こちらの通信に答えたのは、昨日の事件でも世話になったサマンサだった。
「ああ。ばっちりだよ。No.500の停泊地に向かう。話は聞いてるか?」
『ああ。話は聞いてる。事故の無いようにね』
「エンジン点火。微速前進」
ゆっくりと船を前進させ、停泊地の方にそのままの速度で進んでいく。
停泊地エリアに到着すると、停泊地入り口より上部に位置し、目的のNo.500の停泊地まで進んでいく。
そして、目的の場所に到着すると、バックで入れるように位置取りをする。
「管制塔。No.500の停泊地に到着した」
『了解。扉を開けるよ』
停泊地の扉は、船が入っていない時は開放状態になっている。
これは、使用していない停泊地に対して空気の供給を止めることで空気の節約になり、現在の停泊地の空き状況を分かりやすくするためだ。
だが、このように予約をしたり、外壁清掃の場合は扉を閉め、空気は注入しない。
「船体安定。微速後退開始」
『牽引光線を射出。揺れるよ』
ビームに掴まれると、船はゆっくりと停泊地に収まっていく。
「停泊位置に到達。エンジン停止」
『固定用アーム放出。…固定完了。隔壁閉鎖完了。空気注入開始。あとは空気が入るまで我慢だよ』
「へいへい」
『よし!空気注入完了』
「サンキューサマンサ」
『感謝してるなら高級ワインの1本くらい差し入れなさい』
「そんな金はねえよ…」
サマンサは、コビー同様に信用できる管制官だが、隙あらば高級品を要求してくるのはどうにかしてほしい。
ともかく、船が固定できたら先ずは船内の掃除、それがすんだら買い出しだ。
掃除は昼前には終わったが、食材を買い出しにいくついでに、昼飯はどこかですませることにした。
とはいえ行くのはいつものフードコートだったりするが。
その後、収納箱とホバー式の台車を用意し、生鮮食品売場に向かい必要なものを買い足しに行った。
どうせなら、明日の朝はスムーズに出て行きたいと思ったので、貨物配達受付に向かい、仕事を受けておく事にした。
カウンターでは、いつも通りの業務が行われていた。
わずか7日程とはいえ、ずいぶんと久しぶりな感じがした。
ササラは俺の姿を見つけると、自分の方に手招きした。
なんとなく焦っているのは気のせいだろうが。
「おー完治したんだね♪」
「おかげさまでな」
とはいえ、俺が完治した事には喜んでくれたらしい。
しかし直ぐに表情を引き締め、
「て。それよりちょっとこっちきて!」
俺の背中を押し、配達依頼受付の方にある面談室のひとつに押し込んだ。
ちなみに、面談室というのは配達依頼をする内容を秘匿したい場合や、細かい条件がある場合の話し合いをするときに使用される部屋で、完全防音の処置がされてある。
そこにはいると、ササラは自分の端末を起動し、画面を見せてくる。
「これ見てこれ!」
「銀河ミルトシュランテのホームページじゃないか」
3国を跨いで、美味しいレストランを網羅する超有名グルメ冊子『銀河ミルトシュランテ』のホームページなだけあって、美味しそうな料理の画像が載っていた。
これがどうしたっていうんだ?
「この取材記者のコラムってとこ見て!」
「ん~?」
その画像には、晋蓬皇国の料理が写っていた。
「この写真に写ってる食器や、テーブルクロスってさ、ショウンの船のだよね?」
「いや、あれ普通に店で買った量販品だからいっぱい売ってるぞ」
「えっ!?そうなの?でも、一応記事を読んでみてよ」
言われた通りに記事を読んでみると、どうやら間違いなく、
「あの時の年寄り夫妻か!」
「あ、やっぱり…」
惑星ルブコールから惑星ラットゼル行きのワインの配達の時に乗せたウェンズ夫妻の事に間違いなかった。
だが幸いにも、記者の名前・船名・客や船長の名前などは伏せていたし、人物や船が特定できる画像はなかった。
「まあ、船名すら出てないから大丈夫だとは思うが…」
「わかる人にはわかるんじゃない?私みたいに」
「まさか…」
その瞬間、俺の腕輪型端末に着信が来た。
「…出ないの?」
「できれば着拒したい…」
この着信音は、絶対に嬉しいものではないはずだ。
長くなってしまいそうだったのでぶちきりました
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




