File55 惑星オルランゲアでの休暇⑦ 目には目を、歯には歯を
ちょっと長めです。
警察が到着するまでの間、窃盗犯と盗撮犯は文化ホールの警備室に拘束することになった。
俺とロナとバッグを取られた人は、警察への説明のための参考人として同行していた。
窃盗犯の方は神妙にしていたが、盗撮犯の方は、
「俺の動画と写真は芸術だ!」
「写真は許可をとった!」
などと、反省するようすもなく無罪アピールをしていた。
すると、不意にドアが開き、
「失礼します!」
物凄い剣幕で誰かが入ってきた。
入ってきたのは、スーツ姿の女とゴシックロリータ姿の女の2人だった。
そしてスーツ姿の女は盗撮犯にツカツカと近寄ると、
「ハルスト!あんたなにやってるのよ!」
見事な右フックを盗撮犯に食らわせ、盗撮犯を吹き飛ばした。
これにはその場にいた全員、窃盗犯含む。が度肝を抜かれてしまった。
「ちっちがうんです部長!誤解なんです!」
盗撮犯・ハルストは殴られた方の頬を押さえながら自己弁護をしようとするが、
「基本的に盗撮とセクハラです。指紋やデータも確認済みなので、言い逃れは無理です。セクハラの被害者であり、捕縛したのはそちらのかたです」
と、女性スタッフからの事実の報告と、スタッフ全員からのゴミをみるような視線を受けると、そのまま黙り込んでしまった。
「申し訳ございません!当社の社員が大変なことを…ってオオキタ・ソーナ?!」
盗撮犯の関係者の女性は、丁寧に頭を下げて謝罪をしてきた。
が、俺を見て盛大に驚いた。
彼女も例のソーシャルゲームをしているのだろうか?
すると、一緒に来てたゴシックロリータの女とこそこそ話し始めた。
「もしか…のひ…か?」
「はい…とら…の…め…トです」
さっきスーツの女が当社っていってたから、このゴシックロリータも会社の人間なんだろう。
それにしても、あのゴシックロリータはどこかで見たような気がする。
「あの、改めて失礼します。私株式会社ダステム、企画部部長のミュエル・マルティと申します。今回、当社の社員が二重にご迷惑をかけてしまい、まことに申し訳ございませんでした」
「え!?ダステムの人?!」
スーツの女・企画部長のマルティさんの挨拶を聞いて、ロナが驚きの声を上げた。
「どうかしたのか?」
「ダステムは『ソードプリンセス・剣姫招来』の制作会社ですよ!」
なるほど。それなら俺を見て驚くわけだ。
そうとうに似ているらしいからな俺は。
しかし1つ気になったことがある。
「俺はシュメール人で、基本性別が男だからな。とくに気にしないよ。が、二重ってどういうことだ?」
俺の質問に、企画部長とゴシックロリータの2人は身体をビクッと震わせ、少ししてから企画部長が口を開いた。
「実は、あなたがいまコスプレをしている、ソーシャルゲーム『ソードプリンセス・剣姫招来』に登場する『オオキタ・ソーナ』と言うキャラクターは、あなたをモデルにして描かれたものなんです」
「「「「「「「「は?」」」」」」」」
俺とロナ、さらにその場にいたスタッフや犯人達までもが、意外すぎる言葉に一瞬頭の中が真っ白になった。
それからなんとかして再起動すると、企画部長が説明を始めた。
「こちらの同人作家でイラストレーター『スティックキャンディ』さんがあなたをモデルにして『オオキタ・ソーナ』を描いたんですが、彼女はそれを提出する気がなかったのに、当社の社員である、ライナルド・ハルストが勝手に使用し、作者のキャンディさんが差し止めを要求したにもかかわらず、全てを無視し、他の社員にも教えずに、販売をしてしまったんです!」
その告白に、まず反応したのは、なんと盗撮犯のハルストと言う男だった。
「やっぱりだ!ソーナ!僕だ!君の恋人のライナルド・ハルストだ!さあ、僕の無実を証明してくれ!」
こいつは『オオキタ・ソーナ』と俺を混同しているらしく、アホな発言をしている。
俺にはこいつをぶん殴ってもいい権利があると思う。
だが相手をする気はなかった。
「ところで。なんでそっちのなんとかキャンディさんは、俺をしってたんだ?」
それよりも重要な案件があったからだ。
なんでイラストレーターだか同人作家だかが、貨物輸送業者で、しかも大抵は男の姿をしている俺の女の姿をしっているかと言うことだ。
俺は、なんとかキャンディに視線を向ける。
そのとき、ふっと頭に浮かんだ人物がいた。
「なあロナ。この人は有名なのか?」
「はい。スティックキャンディさんは大手人気サークルさんですよ。私も何度かお会いしてますよ」
ということは他人の空似だろうか?
「なあ。あんたどっかであったことないか?」
「いえ。初対面ですよ?」
俺が話しかけると、なんとかキャンディは不意に顔をそらす。
なので俺は、ある人物に電話をかける。
すると、目の前のなんとかキャンディのバッグから着信音が響いてきた。
もちろん、この段階では偶然ということもある。
「でないのか?」
が、なんとかキャンディはうつむいたまま出ようとしない。
ぷるるるるるるという着信音が4回ぐらい鳴ったあと、バッグから見覚えのある腕輪型端末を取り出した。
「もしもし…」
「ようキャシー。今どこにいるんだ?」
「…あなたの目の前です…」
やっぱりか。
服装や髪型は違っていたが、目元はそのままだったため、もしかしたらとは思っていた。
「ウィルソンさんだったんですね!ソアクルには余りいらっしゃらないから気がつきませんでした!」
ロナは何度かあっていたらしいが、気がついていなかったらしい。
というか、キャシーの方が正体を隠していたのだろう。
まあ、ハルストとかいうやつの裁きは、警察と会社にまかせるとして、問題はこっちだ
「なあキャシー。お前が故意に流したわけではないのは理解した。が、俺にとっては迷惑だってのは理解してるな?」
「ああ。猛省してるよ。データ自体を見せなければよかった…」
「まず描かないようにしろよ」
口調も、普段の男勝りなものになっており、どうやら本気で反省はしているらしい。
そこに、マルティさんが俺に声をかけてきた。
「あの、図々しいお願いではあるのですが、『オオキタ・ソーナ』の削除・差し替えはご勘弁いただけないでしょうか?この『ソードプリンセス・剣姫招来』は発売してから、全共和国150億ダウンロードを突破した我が社の大人気コンテンツです!そのなかでも、『オオキタ・ソーナ』は人気上位のキャラクターで、もし今になってキャラクターを削除となると、かなりの額の損害がでてしまうんです!モデル料はきちんと手続きをしてお支払いいたします!なのでどうにかお願いいたします!」
マルティさんは必死な様子で頭を下げて懇願をしてくる。
ふざけた話ではある。
人を勝手に使って金を稼いでおいて、もし今回の事がなかったら、だんまりを決め込まれていたかもしれない。
なにより、そんなことをしておいて、こっちに事情を説明しなかったキャロラインに、一番腹が立つ。
なので、一番効果的な仕返しを思い付いた。
「わかった。ただし条件がある。モデル料は当然支払ってもらうとして、
1つ目。今後なにがあろうと、俺がモデルだと公表しない。いまなら偶然ですむからな。
2つ目。俺同様に実在の人物をモデルにしてキャラクターを作成・使用すること。その人物がこれだ」
俺は、腕輪型端末に入っていたキャシーの映像を見せる。
「ちょっと!それは私じゃないか!」
キャシーは慌て俺の腕輪型端末を奪おうとするが、そうはいかない。
「なにいってるんだ。貨物輸送業者じゃあお前のあだ名は姫剣士じゃないか」
「あ、たしかにそうですよね!キャロラインさんは間違いなく姫剣士ですよ!」
ロナが援護射撃をした。
「いいですね!次のバージョンアップで剣姫・邪剣士双方の頂点キャラを出す予定だったので、スティックキャンディさん、いえ!キャロライン・ウィルソンさんをそのまま採用しましょう!デザインは本人にやらせると甘くなったり書き換えたりするので別の人にします!データいただけますか?」
「もちろん!」
そして味方であるはずのマルティ嬢の裏切り。
こうしてキャシーの牙城は脆くも崩された。
「いやーっ!」
俺と同じ目に遭えば、少しは堪えるだろう。
あ、窃盗犯と、盗撮犯のライナルド・ハルストは、速やかに警察に連行されていった。
後日になるが、
キャロライン・ウィルソンをモデルにしたキャラクター『剣神マリミナカタ』は、カッコいい!かわいい!エロい!
と、話題になり人気ナンバーワンになったらしい。
なおデザインは、あの北ポンが手掛けたそうだ。
相変わらず書く量が安定感しない…。
しばらくSFっぽくない話が続いてしまいました。
その辺りご指摘もいただいたので、今後はSFっぽい話をチョイスするように気をつけたいとおもいます。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




