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File54 惑星オルランゲアでの休暇⑥ 食い違いの根源

SF要素が少なめですみません


昼食が終わると、ようやく交代の時間になる。

「じゃあ午後からは交代ですね。お疲れさまでした」

「ようやく解放か」

なんだか労働量の差があるように感じたが、買い出しは買い出しで、混雑の中を荷物をもって移動し、長蛇の列に並びを繰り返すのは、なかなかに重労働だと思ったので、黙っておく事にした。

ともかくこの恥ずかしい格好から解放されるべく、椅子からたちあがると更衣室に向かった。

のだが、

「ライアットさん。こっちですよ~」

ロナとアンに両腕を掴まれた。

「まて。売り子は終わったんだろ?着替えさせてくれ!」

「だめですよ~♪売り子としての最後のお仕事がのこってますからね~♪売り子としてちゃんとお仕事を(まっと)うしてくださいね~♪」

俺は必死になって訴えるが、ロナとアンは、有無を言わせない迫力の笑顔を向けてきた。


「こっち目線下さ~い!」

「刀抜いて下さ~い!」

「うおーっ!マジそっくり!ハンパない再現度でござる!」

「ソーナちゃん実在!もしかして他にも実在しているのか?」

「ソーナちゃん素敵すぎですわ…❤️」

俺が引きずられてきた所は『コスプレゾーン』といい、様々なキャラクターの格好をした連中の撮影をするスポットらしい。

そこに入ると、即座に汎用端末(ツール)やカメラを向けられ、撮影会が始まってしまった。

「なあ…帰っていいか?」

「だめですよ~♪」

「目線が恐いんだが?」

「キモいよりマシですよ~」

なんとか抜け出そうと、ロナや回りに打診するが、色好(いろよ)い答えは返って来なかった。

そんな時、

「あっ!私のバッグ!」

と、誰かの声があがった。

すると、若い男がバックパックを掴んだままこっちに向いて走ってきた。

おそらく置き引きをしようとして見つかったのだろう。

「どけっ!どけっ!」

犯人は人だかりを押し退けるために、ナイフを振り回していた。

そして犯人は俺のいる方に向かってきたのだ。

足運びは全くの素人。

俺だってプロではないが、訓練を受けている分、制圧は簡単だ。

「どけえっ!」

「離れて!」

俺は、ロナ達や他の連中を下げさせると、男が振りかぶってきたナイフをレプリカの刀で叩き落とし、その首筋にレプリカの刀を叩き込んだ。

男はそれにより気を失ったのか、力なく倒れてしまった。

すると、周りから拍手喝采が起こった。

「うおーっ!マジでソーナちゃんだ!」

「見事な剣戟。さすがにござる…」

「御姉様素敵…❤️」

そしてすぐに、バックパックの持ち主と警備員がやって来た。

犯人はすぐに捕縛され、すぐ警察に連絡された。

俺は警備員から事情を聴かれ、警察に事情を説明してくれと頼まれた。

「おおーっ!オオキタ・ソーナだ!まごうことなき我が嫁ソーナだ!」

そこに、イケメンではあるものの、頭の悪いことをほざきながら、カメラを構え、気持ち悪い視線を向けてくる男が現れた。

「なあ。嫁ってなんのことだ?」

「自分の気に入ったキャラクターのことをそう呼ぶんですよ」

その気持ち悪い発言の内容が分からなかったので、ロナに尋ねたところ、理解出来なくはないが、コスプレをしているだけの生身の人間に向けて言って良いのかは微妙な内容だった。

もちろんジョークとしてなら構わないのだろうが、こいつはジョークではない気がした。

「嬉しいなぁ♪ようやくソーナが僕の所にきてくれた!」

案の定そいつは、俺の真横にやってきて、いきなり肩を抱いてきた。

すると、俺が反論するより前に、周りの連中がそいつを怒鳴り付けた。

「お前!勝手になにやってるんだ!」

「マナーも守れないの!?」

「無礼にも程があるにござる!」

「御姉様から離れなさいよ!」

さっきロナが、『キモいよりマシ』といっていた理由が理解できた。

周りにいた連中は、少なくともこの男のようにキモい視線を向けていなかったことが理解できたからだ。

そしてそのキモい視線の男は、俺の肩を抱き、手まで握り、

「うるさい!ソーナは俺の嫁だ!近寄るな!」

などとぬかしたので、

「誰がお前の嫁だ」

「あだだだだだだだだだだだだた!」

即座にその腕をねじりあげてやった。

その時、

「あっ!そいつそのまま確保してー!更衣室盗撮の犯人の可能性がありますー!」

という、女性の声が聞こえてきた。

するとそいつはその声に反応し、俺の腕を振りほどいて逃げ出そうとするが、即座に足払いをして床に叩きつけた。

追い付いたのは数人の女性スタッフで、そいつのカメラと汎用端末(ツール)を即座に回収した。

そしてそのデータをその場で確認すると、間違いなく女性更衣室の映像が記録されていた。

しかもそれだけではなく、女性のスカートの中の写真や動画も確認された。

その時、そいつの汎用端末(ツール)に着信があった。



少し時間はもどり


視点変換 ◇スティックキャンディことキャロライン・ウィルソン◇


「こんにちわ」

ブースにいた私の所に、ゲーム会社ダステムの企画部長のミュエル・マルティ女史がやってきた。

「たしかゲーム会社の部長さん。なんのご用でしょう?」

私はわざと名前を言わず、冷たい対応をしてやった。

マルティ部長は少し怯んだが、それでも私に話しかけてきた。

「実は、スティックキャンディさんが、『そちらとはもうかかわり合いならない』という連絡がなぜなのか気になりまして。こちらから連絡しても受けてくださらないので、ここなら会えるかもと思って足を運んだ次第でして」

マルティ部長は深々と頭をさげる。

その発言と態度に、私は腹が立った。

「白々しいですね。私が『オオキタ・ソーナは知り合いの似顔絵同然だから使わないでくれ』といったら、『使わない』といったのに勝手に採用して、削除してくれないなら訴えると言ったら、契約不履行だといって法外で非常識な額の慰謝料を要求してきたのはそちらでしょう?」

私は、出来るだけ冷静に発言したつもりだが、どうしてもトゲはでてしまうようだ。

「ちょっと待ってください!なんの話ですか!?私どもはそんな話は聞いていません!オオキタ・ソーナを始めとした全てのキャラクターは貴女の自信作だと、担当のハルストから報告されました!」

マルティ部長は白々しくも、今初めて知りましたという顔をして、長々と言い訳をしてきた。

「その担当のハルストさんから、訴えたものの全て貴女に却下され、強引に推し進められたとききましたが?」

なので私は、冷静に事実をつたえてやった。

「ねえ。それちょっとおかしくない?」

そこに、ずっと話をきいていたコロコロポックルさんが話に入ってきた。

「なんかさ、双方の話が食い違ってる原因って、そのハルストって人が間に入ってるからでしょ?なんかその人が怪しい気がするんだよね~」

そのコロコロポックルさんの言葉に、マルティ部長は汎用端末(ツール)を取り出してハルストに連絡を取ろうとした。

よくよく考えれば、最初に似顔絵を勝手に持って帰ったのはあの男だ。

どうしてあの男の発言を全面的に信用してしまったのだろうか。

「ハルスト!今どこ?あなたにちょっと聞きたいことがあるんだけど!」

マルティ部長は、かなりの剣幕でハルストに連絡を取ったが、帰ってきたのは意外な内容だった。

『失礼。こちらの端末の持ち主の知り合いの方でしょうか?私は惑星オルランゲア・ミャセエリアにあるエンファ(シティ)の市民文化ホールで開催中の、第142回オルランゲアコミックマルシェのスタッフですが、持ち主にご用ですか?』

「え?あの…本人はそこに?」

『はい。盗撮犯として捕縛していますが』

「「は?」」

今回の食い違いの原因かも知れない人物が、同じ所にいるとは思わなかった。

そして犯罪者になっているとはさらに思わなかった。


視点終了

用語説明

通信について:この世界の連絡手段は、携帯型と設置型の2つがあります。

携帯型は、汎用端末(ツール)腕輪型端末(リスト・コム)が主流で、通話の時には音声のみですが、画像・情報(ネット)写真(カメラ)などは自由に使えます。

つまりは、スマホやタブレットです。

設置型は、車両・船舶・建物に設置されるために、通話の時にも相手の映像が映り、大規模な通信量のため、複数と同時に通話ができる。

立体映像電話(ホロ・フォン)はそのバリエーションの1つで、高級品です。

つまりは、設置型PCです。


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