File49 惑星オルランゲアでの休暇① 墓参り
ついにブックマークが、1000件を越えました!
本当にありがとうございます!
他のSFの作品とちがって、宇宙での艦隊戦とか、権謀術数が渦巻くことはありませんが、楽しんでいただければ幸いです。
これからも頑張って行きたいとおもいます。
「あの…いまなんて?」
俺が拠点としている惑星オルランゲア宇宙港の病院で、俺は医者の先生から信じられない言葉を聞いた。
惑星ラットゼルに到着した後、4人のお客を降ろし、積み荷のワインを引き渡し、カウンターで報酬を受け取り、次の仕事であるヴォルダル経由オルランゲア行きと、ヴォルダル行きの貨物輸送を引き受けた。
そうしてヴォルダルまでの荷物を降ろして報酬をもらい、オルランゲアを目指して出発した翌日に『月のもの』がきた。
それは1日、もしくは2日で終了するはずだった。
特に俺は、1日で終了するタイプだったので、到着までには絶対に終了する。
しかし、その『月のもの』が2日たっても3日たっても終了しなかったのだ。
荷物を引き渡し、報酬をうけとると、以前世話になった病院に、直ぐ様に駆け込んだ。
そこで医者の診察と、色々な検査を受け、その結果を聞いた俺は、自分の耳を疑った。
「ですから。診察と検査の結果、君が女性体から男性体への転換が出来ない理由は、肉体的疲労と精神的疲労による自律神経の乱れが原因です。分かりやすく言えば仕事のストレスでの生理不順みたいなものですな。ですから、暫く仕事は控えたほうがよろしい。診断書は書きますからね」
好好爺といった風貌の先生は、慣れた手付きで診断書を書き始めた。
「いやいやいや。自宅同然の船で、操縦は自動。空き時間は好きなことやってるのにストレスが溜まるわけないですよね?」
仕事といっても、自宅である船に乗っているだけ、そんな状態でどうやってストレスが溜まるんだと言いたい。
「しかし、船が航行しているのは確かですし、なにかあったら対処しなければいけない。それは十分なストレスの原因です。それに、色々なトラブルがなかったわけではないでしょう?」
しかし、この先生は俺がガキの頃から世話になっている先生で、スタナーで昏倒した時の主治医でもあった。
腕の良い、しかもガキの頃から世話になっている先生なだけあって、異様な説得力がある。
「わかったらしっかり休むこと。いいね。暫く仕事から離れて、休暇を取りなさい。男性体にもどれたら、診察をしたいからまた来るように」
「わかりました…」
こうして俺は、暫く休暇を取らざるを得なくなった。
それにしてもあの先生、俺がガキの頃から姿が変わってないんだよな…。
俺は病院からでたその足で、貨物配達受付にむかった。
「やあショウン。聞いたよ。朝方に報酬を受け取りにきた時から女の子だったらしいね。なになに?好きな男でもできたの~?」
ササラがいつもの調子で話しかけてきた。
だが、スネイルとは言わなくなったのは、評議員補佐官の逮捕が原因とはいえ、成長といっていいだろう。
ちなみにさっきの、
『なになに?好きな男でもできたの~?』
というセリフをシュメール人以外の男に言った場合、怒るか呆れるか動揺するかに分かれる。
ちなみにササラいわく、動揺した奴が何人かいたらしい…。
「暫く休まないといけなくなった」
溜め息をつきながら診断書を渡す。
ササラはその内容を読むと、いつもの人をからかう雰囲気がなくなり、受付主任に相応しい雰囲気に変わった。
「男の姿に戻れないかあ…。私や他の人達にとっては問題ないけど、身体のことだからしっかり休みはとったほうがいいね。労災の申請と、停泊地の長期使用申請は任せてよ。特に労災は確実にたっぷりともぎ取るからさ」
普段は人をからかってイラつかせる天才だが、こういう時は頼りになる。
ちなみに診断書は労災の申請に必要だったりする。
停泊地は、最大2日は無料で停泊させてくれるが、それ以降は金がかかる。
長期使用申請は無料期間が伸び、その料金も安くなる申請だ。
「で、休みの間どうするの?」
申請の手続きをしながらササラが尋ねてくる。
「墓参りでもいくよ。デニスにオーバーホールたのんでな」
この惑星オルランゲアは、俺の生まれた惑星であり、亡くなった両親と祖父母の墓があるところでもある。
暫くいっていなかったことを思いだし、行ってみようと思い立った。
ちなみにドックは現在満杯で、空くのは4日後だったので、予約をして、料金を支払っておいた。
翌日。
俺は軌道エレベーターに乗り、惑星オルランゲアの地に降りた。
首都惑星ヴォルダルに近く、ほどよく都会でほどよく田舎なこの星が俺の生まれ故郷だ。
軌道エレベーターの基地は洋上にあり、そこからは高速超電導浮上式鉄道で大陸を目指すことになる。
所要時間は約1時間。
時速13000㎞という、長距離用の列車としては普通の速さだ。
そうしてたどり着いたところが、惑星オルランゲアの星都・サルフルップだ。
さらにここから、俺の両親・祖父母の墓があるヨルムイ=エリアまでは、フライトバスで1時間半だ。
急ぐこともなく、のんびりとバスに揺られ、久しぶりの生まれ故郷の景色をながめていた。
ヨルムイ=エリアにあるザフラ市。
ここに、両親と祖父母が眠る霊園がある。
小高い丘の上にあり、町と海が一緒に見渡せる、祖父母と両親の生前からの希望の場所だ。
どんな花が好きだ。なんて話はしたことがなかったので、供えるのは花屋で適当に買ったやつだ。
服装も、いつものフライトジャケットにブーツだ。
「じいちゃん、ばあちゃん、父さん、母さん。あんまりこれなくて悪いね」
花を供え、じいちゃんが好きだった酒の瓶を供える。
そこに、不意に影がさした。
それは1つ前の列の墓に、スーツ姿の男性が、花を供えていたからだった。
金髪に白髪の混じった頭をした、60の坂は越えていると思われるその男性は、俺の存在に気がつくと、軽く頭を下げてから話しかけてきた。
「ご家族のお墓参りかね?」
「はい。仕事が忙しくてなかなか。これたのが医者に休めって怒られたからなんですよ」
俺は愛想笑いをしながら、男に返事をし、墓参りにきた理由を普通に話した。
まあ、これぐらいなら当たり障りないだろう。
「私も滅多に来れなくてね。妻には寂しい思いをさせてしまっているよ」
その表情は、たしかに少し申し訳なさそうだった。
だとすれば、ナンパ目的で話しかけてきたわけではなさそうだ。
「ところでお嬢さんは、仕事はなにを?私は建設業を営んでいる」
「私は貨物輸送業を」
「ほう。では知らないうちに、うちの建築材を運んでくれていたりしたのかもしれませんな」
それから俺は、この自称建設会社社長と適当な話をしながら、霊園の入り口にむかった。
この自称建設会社社長が、なんの目的で俺に話しかけてきたのかわからないままに。
そうして霊園の入り口にたどり着くと、
「私は部下に車を回させますが、お嬢さんは?」
「私は近くのバスストップでバスに乗ります」
もしかして連れ去りでもするつもりか?
そんなことを考えていると、向こうから車の音が近寄ってきて、霊園の入り口に停車すると、複数の破裂音が辺りになり響いた。
用語説明
高速超電磁リニアトレイン:強力な電磁石と、専用のクリアチューブラインにより時速13000㎞(約マッハ10)で運行される長距離列車。
フライトバス:反重力を利用した空飛ぶバス。
星都:共和国・帝国・連邦における、惑星の統治機関と評議員が所在する都市のこと。
わかりやすくいえば県庁所在地。
主人公は暫く女のままになります。
ご了承ください。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




