File 47 惑星ラットゼルへの貨客輸送② 喜ぶ客と招かれざる客
気温が高くて湿気があると暑くてたまりませんね
夕食が終ったあとは、希望者から風呂に入ってもらうわけだが、まずはウェンズ夫妻から入ってもらい、そのあとにアマベルが入ることになった。
カーティは、小さめの瓶(四合瓶=約720㎖)を1瓶空けてしまい、ふらふらしていたので、一応女になってから部屋に運んでおいた。
ウェンズ夫妻は、それぞれ老人としては普通の時間であがり、アマベルは男にしては長風呂だった。
カーティを部屋に運ぶ時に、俺が何者かは解ったはずだから、申告してくれるかと思ったのだが、そうはならなかった。
だがまあ、問題を起こすような人物がいないのは本当にありがたいものだ。
視点変換 ◇アマベル・レスティス◇
僕は今、便乗させてもらった貨客船のお風呂に入らせてもらっている。
こういう貨客船に、しかも晋蓬皇国風のお風呂がついてる事は非常に珍しい。
でもそのお陰で、僕はいますごくリラックス出来ている。
今まで締め付けていた胸が、ようやく解放できたからだ。
しかしこれから残り約5日間、このお風呂以外では、常に男装していないといけない。
その理由は、男装したまま、バレずに合流できたら、次の仕事の報酬を全部くれるという友人の口車に乗ってしまったからだ。
最初に乗るはずだったスターフライト社の定期便は個室を取っていた。
だから、部屋のなかから鍵をかけておけばいいはずだった。
しかしスターフライト社の定期便がいきなりのストライキ。
しかもかなり長引きそうだった。
なので、便乗を希望し、個室がある貨客船を希望した。
でも僕以外にもお客さんがいて、その内2人も女性とは思わなかった。
今僕は男だから、部屋を無理矢理奪うわけにもいかなかったし、なによりお婆さんをソファーには寝かせられない。
友人は一緒に行動していないのだから、女の姿で行動すればよいのだが、なぜかバレてしまう。
盗聴機も隠しカメラもないのは確認している。
でもバレるのだ。
なので最近は『友人超能力者説』を疑っている。
それにもしバレたとしても、船長さんはシュメール人。男性もおじいさんで、奥さん大好きな人だから、襲われたりすることはないだろう。
それを差し引いても、この船に便乗出来たのはアタリだと思う。
お風呂は気持ちいいし、食事も美味しい。
特にスイーツ!
この船長さんがスイーツのお店だしてくれたらぜっっっったい通い詰めるんだけどなー。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
翌朝のニュースで、惑星ルブコールでのスターフライト社のストライキについての報道がされていた。
ストライキは今だ続き、話し合いは泥沼化しているらしい。
チケットの払い戻しは、応じてはいるものの、そうとう渋っているらしい。
迷惑をかけた客に詫びも入れないとなると、マジで倒産までのカウントダウンを刻み始めた感じだ。
そしてついに、スターフライト社に対して、政府主体のライフライン請け負い資格が剥奪されることが、評議会で決定したらしい。
とはいえ、そのかわりの企業の決定までは現状維持らしく、暫くはこの状態が続くらしい。
ちなみに、朝食に出したフレンチトーストは、カルデスさん以外には好評だった。
もちろん先にちゃんと好みを聞いてからだしたから、カルデスさんには普通のトーストとベーコンエッグを提供した。
視点変換 ◇カルデス・ウェンズ◇
まったく、あの会社は本当に迷惑極まりないわい。
長年勤めた証券会社を先月に定年退職し、旅行上級者のばあさんと一緒にやってきたせっかくの旅行にケチがついてしもうた。
出港して1日経った今でも、ストライキは続いているうえに、払い戻しまで渋っているとはな。
早めにねじ込んで、ぶんどって正解じゃったわい。
しかしそのお陰で、なかなかに旨い料理にありつけたのは僥倖じゃった。
ばあさんも若い娘みたいにはしゃいでいたからなあ。
しかし少しは歳を考えてくれんと…。
それと、わしもばあさんも歳相応に身体にガタがあるから、ベッドに寝ることができたのもありがたい。
ある意味、ストライキに感謝をせねばいかんな。
視点変換 ◇カーティ・ロトス◇
いまの私の状況はまさに天国だ♪
急に仕事が飛び込んで来ることもなければ、寝入りばなにたたき起こされることもない。
何時までも惰眠をむさぼることができる。
おまけに飯も酒も旨いとなれば、普段の激務を忘れてだらだらしたってバチはあたらないはずだ。
朝にはちゃんと連絡をいれてるし、なにかあったら連絡を入れてくれるようにも言ってある。
だから私は、遠慮なく惰眠をむさぼるつもりだ。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
惑星ラットゼルへの道程は順調だった。
あっという間に、出発から5日もたち、到着まであと19時間を切ろうとしていた時、突然、照準固定警報が鳴り響いた。
俺は即座に操縦席に座り、操縦桿を握った。
が、すぐに警報は収まり、通信音がなった。
取り敢えず、船内に会話の内容がながれるようにし、録画をスタートさせてから、通信にでてみる。
すると、あらわれたのは、白くて光沢のあるスーベニールジャケット。いわゆるスカジャンを着た男女3人がモニターに表れた。
そのなかでリーダーらしい男が、ヘラヘラと笑いながらはなしはじめた。
「いやー悪い悪い。凶悪犯の船を捜索中でよ。船影が見えたからおもわずロックオンしちまった」
明らかに謝っている様子はなく、その態度もなんとなくイラッときてしまった。
「何者だあんたら?」
その俺の様子など気にすることなく、リーダーの男は話をしてくる。
「俺達は賞金稼ぎ(バウンティハンター)チームの『プラチナスノー』。俺がリーダーのバルバス」
「俺はグリスだ」
「私はジェラよ。よろしくね♪」
3人とも10代後半から20代前半くらいだろう。
バルバスは、中肉中背で茶色の髪ににやついた顔の男。
グリスは巨漢なハゲで、顔はかなりいかつい。
ジェラは小柄な女だがスタイルはいい。
そして全員に共通しているのは、獲物を狙っている者の眼だと言うことだ。
「俺達はいま凶悪犯を捜している。一応あんたの船を調べさせてもらうぜ。あんたの荷物のなかに、知らないうちに凶悪犯が潜んでいるかもしれないんでな」
バルバスは、顔をにやつかせたまま、そう通達してきた。
協力しなかったら、なにかやらかしそうな雰囲気だ。
「ちょっと乗客に話をしてくる」
そういって操縦室をでると、ラウンジにいた乗客4人に声をかけた。
「申し訳ありませんが、要請に応じてかまいませんか?」
「まあ、仕方ないのう」
全員、俺とあいつらの会話をちゃんと聞いていたのだろうカルデスさんの一言に、全員がうなづく。
なので、十分に警戒しながら、停船するために通常空間に出ることにした。
「協力に感謝する。改めて自己紹介しよう。俺はトップランクバウンティハンターのバルバス・キューセスだ」
「同じくグリス・ボロンゴ」
「ジェラ・エルマーラよ。よろしくね♪」
オレの船に乗り込んできた3人は、上は揃いのスカジャン、下はバラバラではあったが、チームというイメージはあった。
リーダーのバルバスはあたりを見回すと、
「じゃあまず荷台を見せてくれ」
と、言ってきた。
その顔は、獲物を狙っているであろうことだけは、間違いがなかった。
用語説明
賞金稼ぎ(バウンティハンター):犯罪者を捕獲し、賞金を得る職業。
荒くれ者が多いイメージが強いが、実は採用審査が厳しい。
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