File42 惑星ランレイへの貨物輸送④ 初見で仲の悪い奴は、怨敵になるか腐れ縁になるかの2択
なんとかできあがり
惑星ランレイ。
銀河共和国内では、有名な鉱山惑星であり、磁気嵐がよく起こることでも有名だ。
開発当初、鉱山夫は稼げる仕事の筆頭であり、人も金も集まった。
その時建築された宇宙港は2万人収容の汎用スタジアムを有していて、ここで様々なスポーツ・コンサートなどが行われていた。
しかし、その老朽化に伴い、安全性や利便性が問題視され、スタジアムをはじめとした宇宙港そのものの閉鎖が決定され、現在は新しい宇宙港の建設計画がすすめられている。
そのランレイ宇宙港にあるお馴染みの店『サンライトイエローリップル』で、いつものメニューを食べていた。
到着したのが夜だったので、昼間営業のこの店のラストオーダーギリギリに飛び込めたのはラッキーだった。
そうしてゆっくり食事をしていると、不意に影が射した。
こういうときは大抵ろくでもない奴に絡まれる前兆だ。
「ようカタツムリ。飽きもせずにミックスグリルかぁ?」
そういって挑発してきたこいつはジャン・インフェッドといい、俺がじいさんと一緒に貨物輸送業者を始めたばかりの時に知り合った同業者で、ライティス・グラザールという人物と2人で仕事をしている。
男の時の俺より背が高く、歳も5歳ほど年上だ。
初見の時に、じいさんが横にいるにも関わらず、
「お前みたいなガキに貨物輸送業者ができる訳ねえだろ」
と、煽ってきたので、思いっきり急所を蹴りあげてやった。
さらには、俺が『月のもの』で女になっている時に、
「ねえ君!見たところ貨物輸送業者見習いってとこだろ?俺が色々教えてあげるからさ。ちょっとお茶でも付き合わない?」
と、ナンパをしてきたので、また急所を蹴りあげてやった。
それ以降、男の時も女の時も喧嘩を売ってくるようになった。
「うるさいから消えろ。店や他の客に迷惑だ」
「んだとコラァ!喧嘩売ってんのか?」
「食い終わったらたっぷりと売ってやるから、店の外で待ってろ」
体格で威圧してくるが、俺の方が強いのは間違いないので、
「まっ…まあ今日は夜も遅いから止めといてやる!」
こっちが本気で凄めば簡単に退散する。
とはいえ悪い人間ではないので、ブラックリストには入れていないし、じいさんがいたころにはメシを振る舞った事も多かった。
それに、相棒のライティス・グラザール。ライティスさんはまともで頼りになる人なので、ライティスさんとの縁は切りたくはない。
今日はもう遅いから、明日の朝にでも連絡をいれてみよう。
ところが翌日。
ピーンポーンパーンポーン!
『当惑星ランレイ宇宙港をご利用のお客様に、重要なお知らせがございます。本日、銀河標準時午前3時28分に、中規模の磁気嵐が観測されました。これにより、軍用艦船以外の全ての船舶の出港を禁止いたします。なお、この警告を無視して出港した場合、全てが自己責任となりますのでご注意・ご了承・ご理解いただけるようお願いいたします。繰り返します。本日…』
惑星ランレイ名物の磁気嵐が発生した。
この惑星にくるのだからある程度覚悟はしていたが、嫌なタイミングで発生してくれたもんだ。
中規模と言えど、どれだけ続くかわからないし、色々補充もしておくとしよう。
あと、時間のかかる料理の仕込みでもしておく事にする。
ライティスさんへの連絡は買い出しの後にするか。
そうして朝食を済ませたあと、宇宙港にある生鮮食品売場に向かった。
「…砂糖に塩に胡椒に、野菜も多めに買っとくか」
そうして買い物も終わりかけた時、またあいつが声をかけてきた。
「ようカタツムリ!相変わらず食材買ってんのか?船乗りとしての意識が低いんじゃあねーのかぁ?!」
ジャンのやつのカートには、プラボックス飲料が山盛りに積まれていた。
「船乗りとしての意識が低いのはお前だ」
「がっ!?」
そのジャンに、後ろから蹴りをいれたのは、カーゴパンツにTシャツの上からダークグレーのコートを羽織った、身長も俺ぐらい、綺麗なグリーンのサイバー義眼をもつ、ジャンの相棒のライティスさんだった。
「お久し振りですライティスさん」
「悪いねショウン。今日も昨日もこのバカが迷惑かけて」
ジャンの奴と違って常識をわきまえており、知恵も知識もあるこの人は、俺のお手本の一人だ。
「てめえライティスなにしやがる!?」
「船乗りの意識が低いのはお前の方だっていってるんだ!」
「なんだとぉ?」
ジャンの奴がライティスさんに食ってかかる。
「船乗りは閉鎖空間に長くいる事が多いから気分転換が重要だ。なかでも食事はかなり重要になる。なのになんでお前は毎度毎度、液状食品ばかり買ってくるんだよ?!」
「バカ野郎!これこそが船乗りの飯だろうが!伝統ある総合食のAランチにBランチ!カルボナーラにハンバーグ!海鮮サラダにフライドポテト!チョコレートパフェにドーナツだってあるんだぞ!」
「全部どろどろだよ!食感全く一緒だよ!」
ジャンが熱弁している液状食品は、手軽にとれる食事として、時間のないビジネスマンや、非常食・備蓄食として重宝されている。
俺も非常食として常備しているが、これを毎食の食事にしているのはこいつくらいだろう。
「そうですよ!そんなの全然食べた気がしません!」
不意に、2人とは全く違う高い声が上がった。
その方向をみると、背の低いドラコニアル人がいた。
俺が不思議そうに視線をむけていると、ライティスさんが紹介をしてくれた。
「ああ、新しいメンバーだよ。メカニックでドラコニアル人の」
「アルセリア・イーベッツと申します!」
アルセリアは、身長は145㎝ほどで、年齢は13~4歳ぐらい、紅い鱗に銀の髪に金色の目の、いわゆる美少年だった。
「ショウン・ライアットだ。よろしくな」
俺が挨拶をすると、なぜか眼をキラキラとさせながら俺の手を握ってくる。
そしてその尻尾は、パタパタと左右に揺れていた。
「貴方がショウンさんですか!お料理がお上手と聞きました!オルランゲアの受付の人達の間では、貴方のスイーツは末端価格が天井知らずだそうで!」
俺はいつかデザートの密造だか密売だかなんかでパクられそうだ…。
するとアルセリアはライティスさんのほうに顔を向ける。
「ライティスさん。ジャンさんよりこのショウンさんと組んだほうがいいんじゃないですか?」
ものすごく不満そうな顔で、ライティスさんに現状の不満をぶつけていた。
もちろんそれを聞き逃すジャンの奴ではなかった。
「あぁん?なにふざけたことぬかしてんだこのショタッ子!」
「誰がショタッ子ですか!私はれっきとした女です!」
アルセリアのその発言に一瞬思考が止まったが、よく考えれば体の丸みや名前の響きを考えれば、女の子であることは、まあ分からなくもない。
失礼な話ではあるが、女性としての象徴が皆無なのと、女の子にしてはキリッとした顔つきなので男の子に見えなくもないのも事実だった。
まあ、女性としての象徴の方は今後の成長に期待するしかない。
「女の子だったんですね」
「最初は僕も男の子だと思ったよ。でも、メカに関しては僕より数倍は上だからね。頼りになるお姫様さ」
そう語るライティスさんの眼は、まるで愛娘を見るような眼差しだった。
「そうだ、晩飯食いにきますか?暇になるんで時間がかかるのを仕込んじゃって」
「君が時間がかかるのを仕込んだってことは、大量にあるってことだね。確か君のお爺さんが生きてた時にやらかしたのはカレーだっけ」
俺のこだわりのひとつとして、『カレーとシチューは大量に煮込むべし』というものがある。
これは、俺が料理を習った、今は亡きばあちゃんと母さんからの教えだ。
1回作ると暫くそればかりになるが、好きな料理なので苦にはならない。
今回もそのつもりで作っていたのだが、知り合いのチームに新入りが入ったというなら、先輩としてご馳走してやるのも悪くない。
「どうする?お呼ばれするかい?」
「行きます!絶対に行きます!」
ライティスさんが、アルセリアに声をかけると、彼女は罵りあいを止め、即座に返事をした。
「てめーら!船長の俺を無視して勝手に決めてンじゃねえ!」
用語説明
プラボックス飲料:プラスチックペーパーで作られた長方形をした飲料容器に入った飲料のこと。
ようするに紙パックの飲み物のこと。
液状食品:食品に特殊な加工をほどこして液状にした食品。
時間のないビジネスマンや、災害時の備蓄としても活躍する。
古いSFの作品を見ると、現代では既に実用化されているものがチラホラでてくるんですよね~
いずれはあの猫型ロボットが!
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