File40 惑星ランレイへの貨物輸送② 平穏な1日・昼
長くなりそうだったので、半分にしました。
惑星ランレイまでは6日かかる。
これは俺の船で、法定速度を守るならということで、飛ばせば4日くらいには短縮できる。
高速航行許可証がある速い船だと、2日半くらいで到着する。
もっと速い軍用の戦闘機なら4~5時間くらいだろうか。
出発した初日は何事もなく、できれば今日もトラブルなど起きないように祈りつつ、鳴り響く目覚まし時計の頭を叩いてアラームを止める。
時間は、銀河標準時午前6時30分。
まずは着替えて、顔を洗って目を覚ましてから、まず一番にやらないといけないことがある。
それは、操縦室の計器類をチェックする事だ。
自動航行装置の状態・航路にズレが生じていないか・燃料の残量・船体へのダメージ等をチェック、少しでもおかしければ、通常空間にでて修理なり、最悪救難信号を出す必要がある。
それが終われば朝食だ。
客がいるならともかく、自分1人なら、コーヒーにトーストに目玉焼きにサラダくらいで十分だ。
それがすんだら、洗濯機に洗濯物を放り込んでから洗い物。
それが終われば船内の掃除だ。
自分1人ならさして汚れることもないが、しておかないとなんとなく落ち着かない。
それが終われば、日課のトレーニングだ。
客が乗っている時はやらないが、チャーリー達のように、気心の知れた相手が客の場合は、するようにしている。
自室に設置してあるランニングマシンや、ゴムスプリング式のパンプアップマシン。
ティナ姉ちゃん直伝の武術の形や武器の素振りなんかを、集中して行う。
その最中に通信が入った。
『えーと、こちらは貨物船『ストームファルコン』。そっちは貨客船『ホワイトカーゴⅡ』で間違いないでしょうか?』
画面に現れたのは、高校生くらいの男だった。
それ自体は珍しくはないが、なぜかそいつは疲れたような顔をしていた。
「ああ、間違いないが…なんの用だ?」
『そうか!お前がカタツムリか!』
が、こちらの船名を確認した瞬間に態度が変わり、テンションが上がった。
『俺はジャック・ファルコン・ケイデイル!銀河最速の男だ!』
その発言を聞いた瞬間に、こいつがどういう類いの人間か理解できた。
「はいはいそうですかよかったねじゃあさようなら」
なので棒読みで対応し、即座に通信を切ろうとした。
『待って待って待って!話が終わってないから!切らないで下さいお願いします!』
「なんだよ?」
あまりにも哀れに思ったので、待ってやることにした。
すると、斜に構えた後に手で顔を覆い、こちらを指差してきた。
その顔を覆った手には革の手袋をしていて、その手袋には自分のイニシャルの『J・F・K』が焼き印されていた。
『俺たちトランスポーターは速さが命!なのになぜカタツムリなどと名乗っているのか?それはいわゆるカムフラージュ!遥か昔にはタートル(亀)なんて名前のついた銀河最速の船があったと聞く!お前の船もそれと見た!なので、この俺と勝負しろ!』
そう言いきると、指を指したポーズのまま俺の返答をまった。
なので、
「おいアホ。よく聞け。今は配達中だからそんな時間はないし、するつもりもない。俺がカタツムリっていわれるのは、俺がシュメール人だからってのと、無駄に飛ばさないことから付けられたあだ名だ。それと、お前は俺がシュメール人だってことを知らなかったみたいだから勘弁してやるが、シュメール人をカタツムリとかスネイルと呼ぶのは差別用語だからな?今度ぬかしたら、直接会った時にぶん殴るではすまさん」
と、キレ気味に一気に捲し立ててやった。
『あ…はい…。すみませんでした…失礼します…』
すると急に勢いがなくなり、丁寧にわびを入れて通信を切った。
なんだったんだあいつは…。
昼食は、簡単にペペロンチーノですました。
客が居ないなら、自分の食事なんか簡単なものだ。
それが終われば2回目の操縦室の計器類のチェックをし、異常がなければそのまま暇な時間になる。
今日は来客用の茶菓子でも作っておくことにする。
今回はダックワーズにしてみようと思う。
①卵の卵白を泡立て、砂糖を入れながらメレンゲをつくる。
②アーモンドプードルを入れてよくまぜる
③楕円形の形に入れ、上からパウダーシュガーを振りかけてから、200度のオーブンで15分焼く。
④半分に切って、間にクリームとジャムを塗る。
とまあ、簡単にできあがる。
残った黄身は、もったいないので醤油漬けか味噌漬けにしておく。
ダックワーズを作りはじめてからしばらくたったころ、リュオウ警部から通信がきた。
「珍しいですね。なにかあったんですか?」
この人が自分から連絡してくるのは、大抵は厄介事が多い。
『なに、何かあった時のために、お前に面通しさせておこうとおもってな。新人で、お前と同じシュメール人だ。運悪く指導係にされちまってな』
「シュメール人と付き合いがあるから。ですか」
『そんなとこだ』
今回は厄介事は厄介事でも、警部殿にとっての厄介事だったらしい。
すると、画面が切り替わって別の人間が姿を現した。
『初めまして!自分は研修生のアーデント・ラツィムです!よろしくお願いします!』
年齢は10代後半、GCPOの制服をきちんと着こなした、短くつんつんとしたライトブラウンの髪に黒い瞳、顔はシュメール人らしく中性的ではあるが、どちらかというとボーイッシュな女の子のような印象を受ける人物だった。
「ショウン・ライアットです。貨物輸送業者をやってます」
『こいつもお前と一緒の基本男でよかったよ。女の子は気を遣うからな』
「だからいまだに独身ですか」
『余計なお世話だ』
警部殿は憮然とした顔をする。
その警部殿をみるアーデント・ラツィムの顔が、なんとなく赤らんでいたのは、俺の気のせいだろう。
用語解説
◇銀河貨物輸送業者組合の料金
貨物の量や配達期限などは様々。
ショウンは配達期限に余裕があり、1回の配達で20~50万クレジットくらいの依頼を受けるようにしている。
便乗
客が荷物のついでに乗せてもらうこと。
例
①船主が惑星Aから惑星Bへの配達を請け負う
②客が、惑星Bへ向かうのでしたら乗せていってくれませんかと打診
③料金の交渉をして、納得なら乗船・不満なら終了
○いくらで乗せるかは船主次第。
あまりにも法外だと組合に罰則を食らう場合も
チャーター
客が行き先を指定してくる
例
①客が、惑星Bへ乗せていってくれと打診
②料金の交渉をして、納得なら乗船・不満なら終了
いくらで乗せるかは船主次第。
◯行き先を指定されることになるので料金は高めになる。
ショウンは、距離にもよるが、便乗は1人5万くらいまで、チャーターは10万から請け負っている
◇宇宙空間航行の基本設定
一番近距離のオルランゲア~ソアクル間の距離は100光年。
超空間航法を使用すると、距離は十分の一になる。
この作品内の宇宙空間を航行する乗り物の速度は、
時速1光年=時速100㎞の感覚
高速航行許可証
一般航路を規定速度以上で航行できる許可証。
企業用と個人用でわかれるが、審査はめちゃくちゃに厳しい
◇通信についての解釈
一般回線
インターネットや電話のための回線
特殊回線
警察・軍隊・企業・同一グループなどが使用する専用回線。
特殊な回路がないと、使用できない
色々細かい設定は意外に曖昧です。
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