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File04 惑星ビーテンツへの貨客輸送①  恋い焦がれる男の真面目な仕事

ためすぎはよくないと思って、小出しにしてみました


6/6 サブタイトルを改編しました


4/21 内容を一部変更(軍艦の改名)しました

 1日ゆっくり休んだ次の日。

 宇宙港(ポート)の37番停泊地(アンカーレイジ)に、コンテナが運ばれてきた。

 チャーリー・レックに依頼された事務用品だ。

『ホワイトカーゴ』の貨物室には120tは載せれるので、60tなら十分に余裕がある。

 宇宙港(ポート)のリフトキャリアーが自動的(オート)で丁寧に詰め込んで行くのを横目で見ながら、渡された商品一覧(リスト)を眺めている。

 燃料や水や食料その他は、きっちりと満タンにしてある。

 そこに、チャーリーがティラナと一緒にあくびをしながらやってきた。

「おはようございますショウン様。遅れて申し訳御座いません」

「積み込みはそろそろ終わりそうだな」

 ティラナは丁寧にお辞儀をし、チャーリーの奴は身体をほぐしながら貨物室(カーゴルーム)を覗いた。

「一応確認はしておいたが、ヤバイもんは入ってないだろうな?」

 商品一覧(リスト)をチャーリーに渡しながら念を押した。

 信用はしているが、万が一と言うことがあるからだ。

「安心しろ。変な荷物を預かったりもしてねえよ」

 出発直前に変な荷物を預かったら、その中身がドラッグだったってのは良くある話だ。

 チャーリーは商品一覧(リスト)を受け取りながら、俺をじろじろと見つめると、残念そうにため息をついた。

「にしても、『月のもの』は終わっちまったんだな」

「まあな」

 休みのうちに強制労働が来なかったのもありがたかったが、『月のもの』が終わったのもありがたい話だ。

 本来は惑星オルランゲアに着いた時に、『月のもの』が終了するまで休むつもりだったのだ。

 これでようやく通常運転ができる。

「せっかく両手に花で移動が出来ると思ったのによお。割り増しするから女になってくれよ。なろうと思えばなれるんだよな?」

「10分で1千万クレジット払うならなってやるよ」

「払えるか!」

 とはいえ、払うからなれと言われたらたまったものじゃないが。

 そこに、ぱんぱんと手を叩く音が響き、

「お2人とも、積み込みは終了したので、無駄話をやめてそろそろ出発しましょう」

「「はい」」

 ティラナに叱られたので、出発準備をはじめた。


 コンテナがきっちりと固定されているのを確認した後、貨物室(カーゴルーム)の扉を閉めると、がっちりとロックをかける。

 船体の回りに怪しいものがないかどうか確認する。

 客を乗せ、自分も乗り込んでからタラップを外して扉を閉めてロックする。

 操縦室(コックピット)に入り、各部のチェックを完了させると、管制塔(コントロール)通信(コール)をいれる。

管制塔(コントロール)。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴ』。出港許可を求む」

『こちら管制塔(コントロール)『ホワイトカーゴ』出港を許可する。一昨日はうちの馬鹿が大変失礼した』

 またあの馬鹿(テバル)が出てくるかとおもったが、今回対応してくれたのは、管制塔責任者(コントロールバイザー)エルゼリア・コールマン女史だった。

「フッティのお陰でスムーズにいきましたよ。よろしく言っといてください」

『了解した。では良い航海を(ボンボヤージュ)

 嫌がらせと下品なナンパで迎えられた入港の時とは違い、美人の笑顔で送り出される出航時は良い事がありそうな予感がした。



 予感は外れた。

 あの馬鹿(テバル)の呪いは意外に強力らしい。

 惑星ソアクルの宇宙港(ポート)を離れ、超空間跳躍(ハイパースペースジャンプ)が、許可される宙域に近づいた時、こちらの進路を塞ぐ船があったからだ。

 みるからに戦闘用の船で、軍のマークがあるから、いきなり撃ち落とされることはないだろう。

 が、だからこそ厄介だ。

「おーい。関所が出来てるぞ」

 船内マイクでチャーリー達に呼び掛けると、二人揃って慌てて操縦室(コックピット)にやってきた。

「ちっ!また軍人の小遣い稼ぎかよ!」

 チャーリーは軍艦を睨み付けて舌打ちをする。


 正式には銀河共和国防衛軍。

 つまりは政府の持ってる軍隊だ。

 銀河帝国・星域連邦との三つ巴の戦争が終わってから50年。

 今ではテロリストや海賊を退治するだけだが、その戦力はもう一度戦争をおっぱじめる事ができるだけそろっている。

 とはいえ、四六時中戦闘があるわけはなく、暇をもて余した不良軍人は、適当な理由で検問を行って小遣い稼ぎをするものがいる。

 この行為の(たち)の悪いところは、GCPO(銀河刑事警察機構)の要請を受けて、本当に検問をしているものと区別がつかないところだ。

 情報を手に入れようにも、検問の情報なんか教えてくれるわけがない。

 そして案の定、向こうから通信(コール)がきた。

『こちらは銀河共和国防衛軍、第212派遣艦隊所属、軽巡洋艦『バルディッシュ』だ。現在麻薬密輸に対する検問を行っている。速やかに停船し、調査を受け入れたまえ』

 通信士(オペレーター)がゴツいのは、やっぱり威嚇のためなんだろうと思いながら、隣にいるチャーリーに、

「ヤバイもんはないから止まっていいよな?」

 と、停船の許可を求めた。

「ああ。まともでも小遣い稼ぎでも、止まらねえとぶっぱなされるしな」

 まあ、無くても止まる。

 砲撃はもちろん、この船の足では軽巡洋艦に食いつかれるし、艦載機を出されたら絶対にアウトだ。

 ともかく船を止め、向こうが連結通路を伸ばしてくるのを待つことにする。

「こちらは貨客船『ホワイトカーゴ』。調査を受け入れる。このまま待機でいいだろうか?」

『了解した。協力を感謝する。連結通路を取り付けるので、そのまま待機してくれ』

 話が終わると、こちらからのマイクを切り、3人ともため息をついた。

「どうみる?」

「真面目そうな奴だったから大丈夫だとは思う」

「乗り込んでくる人物によりますよね」

 3人で、まともなのか不良なのか思案しているところに、ガチャンという、連結通路が接触した音が聞こえた。

『通路を設置して、空気を注入した。ドアを開けてくれ』

「了解」

 直ぐにマイクをいれて返事をし、扉のロックを解除する。

 そして扉が開くと、髪を短く刈り込んだ、いわゆる角刈りという髪型の、背の高いがっちりとした体格の男が腕を後ろに回した姿勢で直立しており、その後ろには、調査用の機械を持った兵士達が控えていた。

「銀河共和国防衛軍、第212派遣艦隊所属、軽巡洋艦『バルディッシュ』艦長、バルロス・クロイワーツ中佐だ。協力を感謝する」



 視点変換 ◇バルロス・クロイワーツ◇


 この船の船内に入ってから、私の胸の鼓動は早鐘のように脈打っていた。

「では早速調査を開始したい。貨物室(カーゴルーム)への入り口は?」

「ここです」

 開けられた貨物室(カーゴルーム)へのハッチを見つめてから、右手に視線を向ける。

「奥は?」

「シャワーとキッチンと寝室です」

「よし。貨物室(カーゴルーム)は3人。奥は2人だ」

「「「「「了解しました!」」」」」

 部下に指示をすると、私は船内を見渡した。

 その視線の先には、私の胸の高鳴りの原因がいる。

 通信(コール)の時に画面に映った『彼』を見た瞬間、私は自らが船に乗り込む事を決めた。

「積み荷の一覧(リスト)です。参考迄に」

「拝見する」

 私は乗組員のアンドロイドから渡された一覧(リスト)を見るフリをしながら、チラチラと盗み見をしていた。

 その凛とした強い意思をもった(たたず)まい。

 その憂いを帯びたような瞳。

 その抱き締めたら手折れそうな身体。

 全てが(いとお)しい。

 いつまでもいつまでも見つめていたい…

「艦長。キッチンとシャワールームと寝室に異常はありませんでした」

 そこに、部下が調査を終えて報告に戻ってきた。

 全く無粋な奴等だ!

 しかし、キッチンと寝室が終わったなら、貨物室(カーゴルーム)の調査待ちになる。

 こうなれば、貨物室(カーゴルーム)をみている連中の時間がかかるか、麻薬ではなくとも怪しいものが、出てきて欲しい。

 そうすれば、少しでもその姿を眺める事ができる。

 場合によっては、問い詰めるために私の船に連行して…

「艦長。貨物室(カーゴルーム)異常無しです」

 仕事が早くて優秀だな貴様等はっ!

 私は優秀な部下達への怒りで、思わず歯を食い縛った。

 だが、『彼』が犯罪に手を染めていないのは良いことだ。

「どうやら異常や不審物はなかったようなので、調査は終了です。ご協力を感謝します」

 私はそう告げると、爽やかな笑顔を『彼』にむけた。

「それと、我々共和国軍人の中に、違法な検問をする連中がいて、御迷惑を御掛けしていることを御詫びいたします。軍内部でも綱紀粛正を掲げており、改善に努力しております」

 これは軍から重要視されている事案だ。

「ですので、何かあった時には、此方に連絡を」

 私は、今では珍しい合成紙の名刺を手渡していく。

 そして『彼』に手渡す時、しっかりと手を握り、熱く見つめてしまった。

 その時思わずキスをしてしまいそうになったが、なんとか踏みとどまる事ができた。

「では失礼します」

 軽くウインクをし、また『彼』に逢えることを願いながら、私は任務を続けるべく、自分の船に戻った。



 視点返還 ◇ショウン・ライアット◇


「つつがなく終わってくれましたね」

「正式な検問の上に、真面目なので助かったな」

 ティラナと俺は、軍人達が出ていったのを見届け、検問が終った事にほっとしていたのだが、

「なあ…何であの中佐は俺に向けて爽やかな笑顔なんか向けて来やがったんだ?何で俺の手を握ってずーっと見つめて顔を近づけてきたんだ?なんで帰り際に俺に向けてウインクして来やがったんだ?!」

 チャーリーだけは、あの中佐殿の熱い視線とアプローチに困惑していた。

「多分…気に入られたんじゃないか?」

「冗談じゃねえ!俺は女が好きなんだ!お前みたいなシュメール人ならともかく、ガチムチなんて冗談じゃねえ!」

 チャーリーは、冷や汗をかきながらわなわなと震えていた。

「名刺はどうなさいますか?」

「名前と連絡先(アドレス)だけ控えておいてくれ」

 それでも、情報と縁を確保しておくのは流石だ。

「後、乗ってた船の名前は絶対に把握しておいてくれ!」

「わ…わかりました」

 そして、凄まじい圧力でティラナに念を押していた。


 こうして、突然の検問を乗り越え、何とか超空間跳躍(ハイパースペースジャンプ)を実行することが出来た。


 依頼人の心に恐怖と不安を刻んだまま…

キャラクターのセリフを考える時に、身の程知らずにも声優さんをイメージしてみたりするのですが、出来るキャラと出来ないキャラの差が大きいです。


ちなみにイメージ出来たキャラはこんな感じ


ササラ:田村ゆかりさん

フッティ・オルグド・ポールダル:細谷佳正さん

エルゼリア・コールマン:野田順子さん

チャーリー・レック:藤原啓治さん

ティラナ:名塚佳織さん

バルロス・クロイワーツ:安元洋貴さん


主役は思い浮かびません…



ご意見ご感想お待ちしています



2020年4月12日

声優・藤原啓治さんがお亡くなりになりました。

心より、ご冥福をお祈りいたします。

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― 新着の感想 ―
主人公はCV石田彰でやれば男女ともにいけるかも!
[一言] お目当ては誰かと思ったらチャーリーかよ! 老け専……ってほどじゃないな。35歳だったか。
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