File34 カジノ専用コロニー『ロングショット』への貨客輸送① 意外な再会
去年と同じ店で柏餅を買ったのですが、
今年は間違えてなかったです
惑星ダナークズ宇宙港のフードコートは、他の星のフードコートと違い、かなり広く作られており、いろんな惑星の名物を提供する店が軒を連ねている。
それならばと、色々な名物を食べてやろうというのが普通だ。
だが俺はそれに反し、
「おいおい。せっかくいろんな所の名物が揃ってんのに、なんでお前はいつもの店の、いつものパン付きのミックスグリルのプレートなんだよ!?」
目の前にきたチャーリーの指摘どおり、全ての宇宙港に入っている飲食チェーン店『サンライトイエローリップル』のパン付きのミックスグリルのプレートを食べていた。
「験担ぎ。ルーチンって奴だよ。仕事終わりの宇宙港で最初に食うのはこれって決めてるんだ」
店が閉まっていたりしたら別だけどな。
「船乗りの伝統って奴か」
そう言いながら、チャーリーは秘書アンドロイドのティラナとともに、一緒のテーブルに座ってくる。
「で、なんか用か?」
「仕事に決まってんだろ。お前、『ロングショット』をしってるよな?」
「ああ。コロニー全部がカジノとリゾートホテルになってるって所だな。行ったことはないが」
カジノ専用コロニー『ロングショット』
『ロングショット=乗るか反るか』の名前の通り、様々なギャンブルが集められた個人企業コロニーだ。
噂だと、24億クレジットという大金をかけた命懸けのゲームが行われていて、冷えたビールを涙を流しながら飲んでいる男が居るとか居ないとか。
いつ配達があるかわからないので、宙航地図にはチェックをいれてあるが、行ったことはなかった。
チャーリーは、商売ならともかく、金を賭けるだけのギャンブルを、今はあまりやっていないらしい。
というか、ティラナがやらせないだろう。
「そこに、スロットマシンをとどけて欲しいんだよ」
「スロットマシンの販売でも始めたのか?」
チャーリーは元々手広く商売をしているので、そんなに不思議には思わなかった。
「そうではありません。今現在、カジノ専用コロニー『ロングショット』は、古いスロットマシンだけを集めた『クラシックスロットカジノ』という、スロットマシン博物館とカジノを融合させたような施設を建設中で、そこに並べるための古いスロットマシンを買い取ってるんです。例え動かなくても、本物ならパーツを寄せ集めて再生すると言う趣旨らしいので、無駄も少ないと思われます」
ティラナがチャーリーの話の補足をしてくる。
だがまあ理由は解った。
「それを運んでくれと」
「そういうこった」
「指名依頼を出しますので、お願いできませんでしょうか?」
「ティラナがそう言うなら引き受けるよ」
「おい!それは俺だけじゃあ引き受けないってことか?」
「お前とティラナじゃあ信用の度合いが違う」
「ちっ!じゃあ今から指名依頼にいくから一緒に来い!」
「飯が終わったらな」
苦虫を噛み潰したような顔をしているチャーリーをよそに、俺はミックスグリルのソーセージにかじりついた。
その翌朝に、古いスロットマシンを積み込み、コロニーに出発した。
コロニーまでは僅か1日。
なんのトラブルもなく、目的地にたどり着いた。
だが、間が悪かった。
到着日に『月のもの』が来てしまったのだ。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅡ』。停船許可を求む」
『こちら管制塔。そちらは『来客』ですか?それとも『搬入』ですか?』
画面に現れたのは、いかにもカジノの従業員といった服装の男だった。
俺達は『搬入』だと答えようとすると、チャーリーが横から割り込んできた。
「持ち込みだ。今そちらで買い取り実施中のクラシックスロットマシンを売りにきた。アポイントメントはチャーリー・レックでとってあるはずだぜ」
『少々お待ちを…ありました。チャーリー・レック様ですね。0番の停泊地へどうぞ。誘導灯を点灯します』
「了解です。ありがとう」
『いえいえ❤️』
俺が礼を言うと、従業員はやけにいい笑顔を向けてきた。
俺は船を誘導灯の指示にしたがって舵を切る。
「0番とは珍しいな」
「ここの停泊地は搬入用の0番と、コロニー所有者一族専用の00番。そして1から36番までの来客用で、38の停泊地があるんだ」
「ルーレットの番号ってわけか」
0番停泊地に船を泊めると、ダンディーを絵に描いたような、スーツ姿の男性が待ち伏せをしてくれていた。
「おまちしておりました」
「いや~どうもどうも。よろしくお願いします」
「ではさっそく見せていただけますかな?」
「もちろん!」
何者かは知らないが、買い取りをまかされて居るのだから、それなりに偉い人なのだろう。
運んできた荷物を搬出すると、ダンディー氏とチャーリーはすぐさまコンテナを開け放ち、中身のクラシックスロットマシンを眺め始めた。
「いやあ懐かしい!『ゲイン・ザ・カーペンター』の初代機とは!私が学生時代に最初に楽しませてもらったやつだ!」
「俺がハマったのは、この『ジェネラル・オブ・イエローゲート』だったな~」
「これも楽しい台でしたな。稼がせてもらいましたが、同時に散財させられた苦い記憶も甦ります。そういえば昔…」
ダンディー氏とチャーリーは、搬出も終わってないのに、スロットマシン談議に華が咲いてしまっている。
「あれが始まると長くなりますので、査定が終了するまで、当カジノでお楽しみください…」
補佐らしい、細めの中年男性にとっては毎度のことらしく、諦めた表情をしていた。
「チャーリー様もスイッチがはいると長くなりますので…」
顔がないにも関わらず、ティラナも呆れた顔をしているのがよく解った。
「じゃあお言葉に甘えて見物してくるよ」
ダンディー氏とチャーリーの熱弁を背中に受けながら、カジノのあるエリアへむかった。
カジノ。
誰しもが一攫千金を夢見てやってくる夢の場所。
だが、大抵は夢破れてしまうものだ。
しかし、一攫千金を考えなければ、華やかで楽しいところではある。
もらったパンフレットによると、ここはカジノ初心者や家族連れなどにおすすめのエリアで、本気のギャンブルというよりは、カジノにあるさまざまなゲームそのものを楽しむ事がメインのエリアらしい。
もちろん、本気のギャンブルをするためのエリアも存在していて、そっちは入場の際に制限とチェックがあるらしい。
もちろんこの初心者のためのエリアで散財するやつが居ないわけではない。
俺が入ったカジノはスタンダードなところで、内装は豪華でありながら嫌みや趣味の悪さは微塵もなく、家族連れがスロットに座っていたり、カップルが楽しそうにルーレットをしたりしている。
ともかく査定が終わるまではと、店内をふらふらすることにした。
そこでルーレットを試してみたが、1つも当たらなかった。
スロットもブラックジャックも当たらなかった。
どうやら向いてないと解ったので、併設されているカウンターバーに行く事にした。
このカウンターバーは、家族連れが多いこともあって、アルコールはビールとワインの赤白くらいで、あとは全てソフトドリンクだった。
ルーレットなんかの席に、デリバリーもしてくれるらしい。
ダーツやスマートボールなんかも置いてあり、そっちをたのしんでる連中もいた。
そこで一息ついていると、息を切らせた男が俺の横のカウンターに倒れこんだ。
「すみません。ビールを追加で…」
なぜ急いでいたのかは知らないが、こんなに人が多いところで走ることはないだろう。
そう思ってそいつの顔を見た。
「ケビン?!」
それは、中学生時代の唯一に近い友人のケビン・コールマンだった。
用語説明:カジノ専用コロニー『ロングショット』
『ロングショット=乗るか反るか』の名前の通り、様々なギャンブルが集められた個人企業コロニー。
円筒型のコロニーの内部を、リゾートホテル・室内ギャンブル・大規模施設ギャンブルの3つのエリアに分けており、様々なギャンブルを楽しむ事ができる。
室内ギャンブルエリア
ルーレット・バカラ・ブラックジャック・ポーカー・スロット・パチンコ・麻雀・花札・丁半などといった屋内でやるギャンブルのための店舗がいくつも立てられているエリア。
初心者・家族連れが楽しめるエリアと、本気の勝負をするプロのためのエリアがある。
0番停泊地の搬入口があるのもこのエリア。
大規模施設ギャンブルエリア
競馬場・競輪場・競艇場・オートレース場・多目的スタジアム・コロシアムがいくつもあり、パブリックビューイングエリアでは通常のスポーツに対してのブックメーカーも行われている。
リゾートホテルエリア
ホテルだけではなく、様々なショップやレストラン。
公園・スパ施設・スポーツジム・各種アミューズメントなどもある。
治安維持用の警備本部・経営者一族の自宅もある。
ついに現在のケビンくん登場です!(出てきただけですが)
スロットはよく知らないので、有名なパチンコの名前をもじっています。
ショウンがひいきにしている店の名前の元ネタが解る方はいるはずです。
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