File33 惑星ダナークズへの貨物輸送③ 良いタイミング
何とか仕上がりました
視点変換 ◇ケベック・マコーリー◇
「君のことは大々的に発表させてもらうよ。正義のために自ら犠牲になった民間人としてね。2時間待ってやろう。それまでに決めるんだな」
そう言い捨てて私は通信を切った。
実に爽快だった。
今頃あいつらは、下らないプライドを持ち出して、私を罵っているだろう。
それぐらいのことしか出来ない連中だからな。
たまたま現場に来た民間人の彼には悪いが、正義のための礎になってもらう。
あの連中は自分たちがテロリストだとバレたのち、たまたまSOSを受信して救助に来てくれた民間人の彼を殺害して貨客船を奪って逃走。
我々はテロリストを逃がさないためにやむなく発砲。
乗組員は全員が私の同志であり、今現在そのシナリオにそった画像と音声データを制作中だ。
あと2時間あれば出来上がる。
ダナークズの駐留艦隊が来るまでは最低でも3時間かかる。
時間はたっぷりある。
そもそも、架空検問をして金を巻き上げたり、冤罪をでっちあげて示談金をせしめたりするなどの悪行を始めたのはあいつらだ!
そして、綱紀粛正の制裁から逃れるために、私達乗組員をテロリストに仕立てあげようとしたのも向こうだ!
金持ちというだけで、信念も能力もないゴミが船の指揮権を握っていること事態が問題なのだ!
そして我々の正義がより正しく理解されるためには、脱出用のシャトルではなく、SOSを受信して救助に来てくれた民間人を殺害して奪った民間船で逃走をはかる。
そういう凶悪な人間どもであったとするほうが、我々の正義はより正しくなるにちがいない!
証拠の画像と音声データが出来上がるまでの2時間、たっぷり恐怖を味わうんだな!
しかし、それから1時間半ほどした時に、向こうの船から通信があった。
「どうしたのかね?天罰をうける覚悟でも出来たのかね?」
あの連中にそんな覚悟が出来るはずはないがな。
『出来てはいないだろうが捕縛はしたぞ』
画面に現れたのは、やはり民間人の彼だった。
だが彼は不思議な発言をした。
『お前らが言うところのテロリストの主犯格3人を拘束した。今すぐ引き取りにきてもらおうか』
その言葉どおり、画面の向こうには、艦長以下3人が、気を失い、拘束されていた。
まずいことになった。
このまま連中を引き取れば、あの民間人を解放しなければならなくなる。
そうなると、あの民間人が私とのやり取りをマスコミや軍上層部にしゃべってしまうかもしれない。
ここは無視を決めこんで砲撃を慣行するしかない!
私は同志に無言で指示をだし、砲撃の準備をすすめた。
だがそれは脆くも崩れ去った。
『素行不良の連中を捕縛したと言うのは事実か?』
あと3時間後にくるはずの救助部隊が今やってきてしまったからだ。
しかもやって来たのは、新しく銀河共和国防衛軍東部方面司令官に就任した、ギルワイド・アインランバ中将だった。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
マコーリーとの会話の最中、髭面のおっさんが会話に割って入ってきた。
「えーと…失礼だがどちら様で?」
『おお、失礼した。儂はギルワイド・アインランバ。中将の位を授かり、新しく銀河共和国防衛軍東部方面司令官に就任したものだ。それより、素行不良の連中を捕縛したというのは事実かな?』
軍人なのはわかっていたが、まさか東部方面の責任者だとは思わなかった。
だが、これで砲撃は無くなったはずだ。
「ああ。こいつらが間抜けでスケベなおかげでな」
拘束した3人の姿をみせる。
『儂らが到着するまでそいつらを起こしたりしないようにたのむ』
中将閣下は俺に頭を下げたあと、
『ケベック・マコーリー大尉。災難だったな。戻ったら暫く休暇を楽しむといい。艦のリストでも見ながらな』
『ありがとうございます!』
軽巡洋艦側にも声をかけた。
まあ、俺とのやり取りを知らないから仕方がない。
それからさして時間もかからず、救助部隊が現場に到着した。
俺のホワイトカーゴⅡのような小型船は、惑星上からの習慣で左舷にしか入り口がないものが多い。
しかし、大型の客船や軍艦などはその限りではなく、両方に入り口があるのが普通だ。
なので、中将閣下の船(戦艦ツヴァイハンダーというらしい)は軽巡洋艦アールシェピースの右舷に接続し、その船内を通って中将達がやって来た。
中将閣下は、俺の船の状態を見て、俺がどうやって3人を捕縛したか理解した。
まあ、中将閣下でなくとも一発で理解できるだろう。
なにしろ、ラウンジには空の皿と酒の空き瓶が大量に転がっていたからだ。
「なるほど、酒と肴か。しかし、こやつらに酒を飲ませるのには苦労しただろう」
「まあ、そこは話術かな」
俺はそういって女の姿に変身し、にっこりと笑った。
「なるほど。これだけの美女に進められたなら酒も進むか」
中将閣下は酒の瓶やグラスを手に取り匂いを嗅ぐと、ニヤリと笑った。
どうやら睡眠薬を使ったのは見破られたらしい。
暫くはこのままでもとおもったが、俺はすぐに男の姿に戻った。
「いやぁよくやってくれた!」
そこに、ケベック・マコーリー大尉がやってきたからだ。
「まさか民間人の君がここまでやってくれるとは思わなかったよ!」
にこにこと笑いながら、俺の手を握ろうとしたが、それを払いのけ、
「なにをぬけぬけと。俺ごと吹き飛ばす気満々だったくせに」
奴を睨み付けながら、事実を話してやった。
勿論。中将閣下の表情が怪訝なものに変わる。
そこですぐさま、こっそりと録画しておいた映像を流してやる。
そこには、俺とマコーリーのやり取りが、しっかりと映っていた。
その全てを見終わった中将閣下は、マコーリーに鋭い視線を向けた。
「中将閣下これは連中を追い込むための方便であります!」
マコーリーは何とか弁解をしようとするが、そこにもう1人だれか入ってきた。
「見苦しいですよマコーリー大尉」
「なんのようだエボーク!」
入って来たのは、眼鏡をかけた線の細い青年だった。
エボークと呼ばれた青年は、中将閣下に近づき、
「中将閣下。これはマコーリー大尉の命令で制作していた偽映像です。マコーリー大尉が彼らに猶予をあたえたのは、この映像の制作時間をえるためでした」
データチップらしいのを、中将閣下に手渡した。
「エボーク貴様!」
「マコーリー大尉。私たちからみれば、あなたも艦長達と同じなんですよ」
拘束されている艦長達をみつめながら、そう吐き捨てた。
「中将閣下!こんな奴の戯言に惑わされてはいけません!そもそもこいつは…」
マコーリーは必死に言い訳をするが、中将閣下は聞く耳をもたなかった。
「ケベック・マコーリー大尉。あとは軍法会議の場で聞いてやる」
マコーリーは、艦長達同様に、中将閣下の部下に拘束されていった。
マコーリーがつれていかれると、中将閣下が俺に頭をさげてきた。
「部下が迷惑をかけた。組織の長として深く謝罪する」
「じゃあこれにかかった経費だけ払ってもらっていいか?」
実際のところ、料理はともかく酒が問題だった。
客用でもあったので、それなりの値段のものだったので、けっこう懐に響いたのだ。
だがまあ、死ぬよりははるかにましな被害だ。
「情報でよいか?任務中で多額の現金は所持してないのでな」
ダメ元で頼んでみたのだが、ありがたいことに、ポケットマネーで80万クレジットを情報で渡してくれた。
仕事が終わったら、早速買い物だ。
中将閣下は、質実剛健・豪放磊落な人物で、現場からの叩き上げです。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




