File31 惑星ダナークズへの貨物輸送① 自分の知らない所で流通している自分の情報は恐ろしい
今回から文字数を少なめにしました。
こうすればすこしは誤字が減少する
はず…
ウィルティア・ルナーシュ評議員閣下を、ラインハルト・シュタインベルガー准将閣下の艦に移送させ、
惑星ヴォルダルに到着して依頼終了の手続きをして報酬をいただき、
銀河共和国評議会管理本部で行われた、ジェームス・ハンズクリット補佐官の査問委員会と裁判に、証人として出廷させられ、
ヴォルダルからオルランゲアまでの仕事を受けて、
今回はなんのトラブルもなく、戻ってくることが出来た。
の、だが…
「お帰りなさいませライアットさん。腕輪型端末を検査機にかざして下さいませ♪」
ササラがおかしくなっていた。
いつもなら、
『やあスネイル。依頼が終わったならいつもの作業をよろしく♪ルナーシュ評議員とは中学生時代のクラスメイトらしいじゃないか。ロマンス的なものはあったのかな?』
ぐらいは聞いてくるはずだ。
まさか…よく似た別人とか姉妹だったってオチか?
「なあササラ…。悪いものでも拾い食いしたのか?」
俺は恐る恐るササラに声をかけてみる。
するとササラは急に表情が暗くなり、
「例の評議員補佐官の事件が報道されてから、私がライアットさんに普段から『スネイル』って言ってたのがバレてね。お前がシュメール人差別主義者なら懲戒免職にするって言われてね。それは絶対に違いますっていったら、矯正しなかったらやっぱり懲戒免職にするって言われて…」
「あー。うん。わかった」
ササラからすれば親愛の情からだろうが、他人から見れば、シュメール人の俺を侮辱しているようにしかみえなくなるというわけか。
まあ、これ以上は突っ込まないほうがいいな
ともかく、依頼終了の手続きをしてもらい、報酬をうけとった。
「それで、次のお仕事はどうされますか?」
後ろの方に、上司らしいすだれ頭の男性がこっちを凝視しているため、言葉づかいが丁寧なササラに違和感を感じつつも、頼まれたことを思い出した。
「ああその前に。ウィルティア・ルナーシュ評議員が、依頼を途中終了した形になって申し訳ないから、俺が自作したデザートを御詫びとして渡してくれって頼まれて金を預かったんでな。作って持ってきた」
そうして取り出したのは、直径30㎝・高さ5㎝の、固めに作った切り分けられるカスタードプディングの入ったケースだ。
それを10個。
これだけあれば十分に行き渡るだろう。
ひとつだけケースを開けて中身を見せる。
「おおー!でっかいプリン!これは末端価格が跳ね上がるよ!」
「人がつくったデザートをヤバイ薬みたいに言うな!」
だが俺は忘れていた。ここの受付嬢のほとんどが、ササラと同じ考えを持っていることを。
ササラがそれを受け取った瞬間、数名の受付嬢がササラの後ろにいるのに気がついた。
「エスンヴェルダ主任。美味しそうなデザートを頂いたんですねぇ♪」
「いいなぁ♪この前昇進祝いももらっていましたよねぇ?」
受付嬢2人がササラの左右につき、両腕に手を添えている。
そしてさらに、
「ライアットさん。いままでエスンヴェルダ主任が大変に失礼をいたしておりました」
単眼のサロック人であるラッペリオ女史が、いつのまにか俺の横に陣取っていて、丁寧にお辞儀をしてきた。
「いや、気にしてないから大丈夫だ」
ササラとは長い付き合いだし、彼女が俺を本気で侮辱していないのは理解している。
その彼女は今、自分の両脇にいる2人の受付嬢に、やんわりと拘束されており、自分に何が起きたかを理解し、戦慄していた。
「ありがとうございます。ところであのカスタードプディングは、エスンヴェルダ主任個人への進呈物でしょうか?」
顔を上げ、俺にそう質問してきた彼女の眼に俺は恐怖した。
彼女はにこやかに微笑んでいるはずだ。
だがその笑顔には恐怖しか感じない。
「いっいや、ルナーシュ評議員からは特に指定はうけてない。強いていうならオルランゲアの貨物配達受付の人達みんなにって話だったからな」
「ではこのカスタードプディングは私達にもいただく権利はありますね?」
「ああ、まあな…。というか、この量は1人では無理だろう」
その俺の返答をきくと、ラッペリオ女史以下の受付嬢全員がにっこりと笑顔をむけてきた。
「ではエスンヴェルダ主任。ライアットさんの応対をよろしくお願いいたしますね♪」
そして全てのケースを持ち去ってしまった。
「鬼~!悪魔~!独眼女~!」
ようやく拘束から解放されたササラは、怨嗟の声を上げながらも、奥から上司らしいすだれ頭の男性がこっちを凝視しているため、追いかけられないようだ。
ササラからの愚痴をしばらく聞いたあとで俺が引き受けたのは、惑星ダナークズへの医薬品の輸送だ。
消毒液やら医療用の縫合パッチやら、外傷の時に使用するものが殆どだ。
もちろん出発は翌朝だ。
朝起きて朝食を食べ終わり、燃料の補給をしている時に、荷物がやってきた。
それをきちんと貨物室に積み込んで固定し、怪しい物や人が紛れ込んでいないかをチェックする。
貨物室の扉をしっかりと閉めると、船外のチェックをしてから船に乗り、操縦室に入る。
全ての計器類のチェックを完了させると、管制塔に通信をいれる。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅡ』。出港許可を求む」
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅡ』出港を許可する。聞いたよショウン。受付に差し入れしたんだって?』
こちらの通信に答えたのは、珍しくコビーではなく、男勝りな筋肉美女管制官として有名なサマンサ・リエナビッチだった。
座り仕事だからこそ身体を鍛えるべきだと考え、管制官の職に就いてから筋トレを始めたらしいが、いまでは見事な筋肉を持ちつつも、見事なスタイルを保持している。
「了解、管制塔。耳が早いな。今回のはルナーシュ評議員からの御詫びの品だよ。作ったのは俺だけどな。それよりコビーの奴はどうしたんだ?」
『奥さんとのデートのために有給休暇だとさ。それよりショウン。たまにはこっちにもなにか寄越したってバチは当たらないよ』
「あんたは甘いものは苦手じゃなかったか?」
『だったら最高級のコルベスビーフのステーキ肉セットとか、レミマスルータンのザムン128世とかを寄越しなよ♪』
「さらっと高級品を要求するな!」
本気では無いだろうが、1セット4万クレジットのステーキ肉のセットや、1本30万クレジットは下らないコニャックを要求されてはたまったものではない。
『冗談だよ!まあ真面目な話、あんたのデザートの末端価格が上がっててね。なかなか回ってこないのさ』
一瞬耳を疑った。
なんで管制官の彼女が俺のデザートの末端価格なんて話題をだすんだ?
「おいまて…俺の作ったデザートがそういう扱いをされてるのは貨物配達受付内だけのはずじゃ?」
「オルランゲア宇宙港の女性従業員全員がしってるぞ。男性従業員や貨物配達業者たちは知らないだろうけどね」
いつのまにそんな裏のネットワークみたいなもんが出来上がってたんだ?
ただひたすら恐怖しか感じない。
今後は差し入れは控えることにしよう…。
ともかく出航許可はもらったのだから、さっさと出発することにしよう。
「エンジン点火。微速前進」
宇宙港の外縁部まで船を進めたのち、超空間跳躍可能な宙域まで第一船速で移動すると、エネルギーチャージをしてから超空間に入る。
「超空間跳躍の座標軸固定。目標惑星。エネルギーチャージ開始」
そして数分でチャージは完了し、
「エネルギーチャージ完了。超空間跳躍開始」
特に問題なく、超空間に浸入を完了する。
「超空間に侵入完了。これより自動航行装置に移行する」
超空間のトンネルに入ってしまえば、トラブルが起きない限りは平穏だ。
今回は乗客がいないから、その辺りのトラブルは発生しないだろう。
しないでくれよ?
コルベスビーフは神戸牛
レミマスルータンのザムン128世はレ○ーマルタ○・ルイ1○世がモデルです
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




