File29 首都惑星ヴォルダルへの貨客輸送③ エリートにもピンキリがある
前回誤字がひどかったので執筆時から見直しをなんどもしていたので遅くなってしまいました。
4/8 一部を改変しました
視点変換 ◇ウィルティア・ルナーシュ◇
ここのところ災難が続け様に起こっていました。
執務室が荒らされていたり、車がエンストを起こしたり、おかしな手紙が届いたりと色々に。
極め付きが、今日の専用シャトルの故障から始まった一連の事件です。
私の支援者の1人である、エルメダ・ハンズクリット婦人の息子で、評議員補佐官試験に合格したというジェームス氏を、ハンズクリット婦人のお願いもあって採用して1年。
私よりは年上で、仕事は出来るのですが、どうにも私は苦手です。
なにかと理由をつけて私の私室に入ろうとしますし、
アポイントメントの相手を勝手に断ったと思えば、会う必要のない人とのアポイントメントがセッティングされていたり、
私を信仰の対象の様に考えているらしく、それを他人に強制したり、
なにより、評議員補佐官という地位を盾に色んな人に傲慢に接しているのが見受けられるからです。
その彼が、厄介なことをしでかしてくれました。
評議員に支給されている専用の船に不具合があり、民間の旅客船を利用しようとしたのですが、彼はなんと、出発5分前にも関わらず、貸しきりにしろと関係者に捩じ込もうとしたのです。
まず、旅客船にとっての出発5分前というのは、乗客は全員が乗り込み、各部のチェックも終り、定刻までの出航許可を待つだけの状態です。
にも関わらず、乗客を全員下船させろと命令したのです。
当然関係者は驚き、それは無理だと反論します。
すると彼は、
「貴様!銀河共和国評議員のウィルティア・ルナーシュ様の意向に逆らうというのか?!」
と、勝手に私の名前を出して関係者を脅したのです。
私は、子供の頃から付き添ってくれているサラと一緒に彼を引き剥がし、関係者に御詫びをしてから、そそくさとその場を後にしました。
彼に注意をするも、
「あれくらいは当然のことですよ!従わないあの連中がおかしいのです!」
と、反省などする気は欠片も無いようです。
次の便も、同じように貸しきりにしようとしたので、貸しきりにするなら貨客船をチャーターしてはどうかと提案したところ、渋々了承してくれました。
しかしそのチャーターの方法も、ヴォルダル行きの貨客船にお願いするのではなく、ヴォルダル行きの船に強引に了承させるというものでした。
私とサラがため息をつきながら、その船がある停泊地に到着すると、そこには白い貨物船が停泊していました。
綺麗な船だなと思って見ていると、船の持ち主がやって来て、すぐにジェームス補佐官に絡まれていました。
その船の持ち主を見た瞬間、私は声を上げそうになりました。
それは、持ち主=船長が、ショウン・ライアットくんだったからです。
彼とは、中学1・3年の時に同じクラスでした。
そしてなにより、1年の時、誘拐されそうだった私を助けてくれたのがライアットくんでした。
その時から、彼は私の憧れになりました。
ライアットくん、いえ、ライアットさんの船は、綺麗で清潔感があり、貨客船としては二重丸の評価です。
にも関わらず、補佐官の彼は文句しかいっていません。
その上、宇宙港のルールや宇宙航行法まで無視しようとしたのには呆れました。
まあ、ライアットさんの私室には非常に興味がありましたが…。
出されたお茶菓子は、文化祭で人気になったクッキーで、懐かしく、そしてあの時以上に美味しくなっていました。
夕食も素晴らしく、貨客船の食事とは思えないくらいのものがテーブルに並びました。
でもその感動は、すべて彼によって台無しにされ続けていました。
クッキーは一番多く食べ、食事はおかわりまでしたくせに、品の無い味だとか、得たいが知れないだとか、失礼にもほどがあります。
おまけに、私に子供の頃から付き添ってくれているサラを、まるで自分の使用人のように扱い、身体まで要求しようとしたことは絶対に忘れません。
ハンズクリット婦人からのお願いがなければ、すぐにでもクビにしたくてたまりません。
ハンズクリット婦人は人格者で私の良き理解者であり、後援者の1人でもあるので、そうそう無下に出来ないのです。
なので私は早々に寝ることにしました。
サラも一緒にとさそったのですが、彼が私の部屋に向かおうとしないように見張るといって、承知してくれませんでした。
彼は、ショウンさんの船に積んであったお酒を浴びるように飲んで寝てしまったから大丈夫だといったのですが、万が一もあるし、場合によってはライアットさんに救援を頼む必要があるからと、押しきられてしまいました。
そして翌日。
決定的な事件が起こりました。
そのきっかけになったのは、元・貨物輸送業者の海賊の出現でした。
海賊自体は結果的に共和国防衛軍の艦隊に捕縛され、何事もなかったのですが、その時に彼が、評議員補佐官として、言ってはならないことをいってしまいました。
それは、シュメール人のライアットさんに向けて、『カタツムリ』と罵り、明らかな差別発言を繰り返したことです。
私は思わず彼の頬を打ち付けていました。
銀河共和国評議員として、
常識のある1人の人間として、
なにより自分の好きな人を侮辱された事に対して、我慢ができなかったからです。
彼はしばらく呆然としていました。
しかし次の瞬間。
なにを考えたのか、船の操縦桿を握っているライアットさんに襲いかかったのです。
今彼が操縦できなくなれば、私たちにはどうすることもできません。
私はもちろん、サラも彼も宇宙船の操縦などできるはずがありません。
ですが、それをサラが防いでくれました。
腕にしこんでいたスタンガンで、彼を気絶させてくれたのです。
これでようやく、ライアットさんとまともに話ができそうです。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
銀河共和国防衛軍の登場により、ボケナス三兄弟こと
『ガズン兄弟』はあっさりと捕縛された。
オルランゲアとヴォルダルはかなり距離が近く、この間で海賊行為を行うのは、自殺行為に近い。
あいつらはそれだけ、考え無しだったということだ。
そして、騎兵隊の隊長からの通信が入った。
『こちらは銀河共和国防衛軍主力艦隊司令官兼旗艦カシナート艦長、ラインハルト・シュタインベルガー准将です。通報者はそちらの船で間違いありませんね』
でたのはやっぱり、シュタインベルガー准将閣下だった。
あの一番でかい船には見覚えがある。
「感謝します准将殿。お久しぶりですね」
俺は親しげに声をかけるが、准将閣下は怪訝な顔をした。
『失礼ですがどちらでお会いしましたか?』
これは別に准将閣下が若年性健忘症にかかった訳ではない。
その証拠に、俺が女に変身すると、
「救助していただいたのと、そのあとの裁判では何度もお会いしましたね」
『あ!ライアットさんでしたか!大変失礼いたしました!』
一発で思い出してくれた。
「男の姿でお会いしたのは今回で2回目ですから無理もないですよ」
「お知り合いですか?」
「以前、軍の事件で色々ありまして」
「ああ。軍高官の息子の不祥事ですね」
評議員閣下もご存知の、馬鹿ガキ共のしでかした事件の裁判の証人として、裁判に出席中は女でいるようにと指示をうけたため、そのあいだずっと女の姿をしていた。
男になったのは、本人確認の時だけだった。
なので、覚えていなくても仕方ない。
そこに、起きなくてもいい奴が起きてきた。
「う…くそっ!どうなったんだ?」
『海賊は我々が捕縛しました』
俺・サラさん・評議員閣下が説明する前に、准将閣下が説明をしてくれた。
が、それが良くなかった。
「防衛軍?そうか!ルナーシュ様の危機に出動してきたわけか!」
補佐官は准将に近づき、明らかに馬鹿にしたような表情をし、
「おいお前!ルナーシュ様を貴様の所属する船に乗船させるので貴賓室を用意しろ!それから、艦長を挨拶にこさせろ!ルナーシュ様が御乗船くださるんだ、失礼のないようにな。それから、貴様の氏名と階級を聞いておこう。貴様の上官である艦長に良い評価をいってほしければな」
と、いつもの調子で命令をした。
多分、目の前の准将閣下が若いうえに、口調も丁寧なので、尉官程度だと思われたのだろう。
普通ならむっとする所だが、准将閣下は表情を変えることなく、平然と質問に返答した。
『自分は、銀河共和国防衛軍主力艦隊司令官兼旗艦カシナート艦長、ラインハルト・シュタインベルガー准将です』
しかも綺麗な敬礼と、腕輪型端末内の身分証明書の立体映像つきで。
その事実に、逆にうろたえたのは補佐官だった。
「しっ…失礼いたしました准将閣下!」
さすがに将官に対しては大きな口は叩けないのだろう。
同じ若手エリートでも、こうも貫禄の差がでるものなのだなと感心してしまう。
「とっとにかくっ!我々をそちらの船へ乗船させてください。そちらの船なら今日中にヴォルダルに到着するでしょうし、安全面も問題がないはずです」
補佐官は、准将閣下に改めて自分の要求を突きつけた。
『それは可能ですよ』
「よかった♪さあルナーシュ様。あちらの船に移りましょう。准将閣下もお早く。このような『カタツムリ』の船からは一刻も早く下船なさった方がいい」
准将閣下の答えに喜び、評議員閣下に忠誠のお辞儀をする。
あれだけ拒絶されたにも関わらず、あんな発言が出来るのはある意味感心する。
そして、俺を睨み付けようと視線を巡らせたその先には、女の姿のままの俺がいた。
その俺の姿を見た補佐官は盛大に舌打ちをした。
「おいカタツムリ!なぜ最初から女の姿をしていなかった!それならお前で楽しんでやったものを!この私に楽しんでもらえなかったことを、後悔するんだな!」
俺は一瞬、補佐官がなにをいっているのかわからなかった。
が、ようするに、
『カタツムリだとしらなかったら、この俺とベッドを共にするという名誉を与えてやったのに』
ということらしい。
もちろんその場にいた2人も理解したらしく、冷たい視線を向けていた。
准将閣下の軍服は白です!
部下に艦◯すはいません!
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