表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
251/263

File247 惑星ビーテンツ経由惑星ルニール行き貨物輸送④ 甘い人は利用されるが、味方も多い

「ではお話が終わったようなら下船をおねがいします。こちらにも予定がありますので」

 ヴィツェネラ嬢が黒服達に要求を突き付けはじめたのを確認すると、こちらの一番の要求を突きつけた。

「えー。噂のご飯を食べさせてもらうつもりだったのに〜〜」

  やっぱりそのつもりだったか。

「申し訳ないが、これ以上居座るつもりなら、本当に警察に通報しますよ。貴女が不法侵入したのは事実なんですから」

「うっ……」

 流石に今の一言は聞いたらしく、かなり怯んでいたが、流石は帝国貴族、最後の抵抗を見せてきた。

「じゃあシーモアがハマったっていうサラダのレシピを教えて! それが作れればあの子に対しての武器になるから!」

 何でコブサラダが武器になるのかは知らないが、ここで教えないとかいうとさらにゴネそうだ。

 これは本当に警察を呼ぶかなと考えた時、

『姉様。余り我儘を言ってると本気で警察に捕まりますよ。捕まったらギルテンス家は関知しませんからね』

 と、少佐殿クロネーラが助け舟を出してくれた。

「わかったわ。大人しく退出します。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」

 ヴィツェネラ嬢は頭を下げ、ようやく船を降り始めた。

 そしてその時ふと思い出した。

「そういえば、ギルテンス侯爵家(そちら)の筆頭執事のセバスチャンさんには自家製コブサラダのレシピと自家製マヨネーズの製法をお教えしてますよ」

 そう。この帝国貴族のギルテンス家との最初の接触者である執事のアルフレッドさんは、ルニールに来るまでの時間に、暇つぶしとばかりにこちらのレシピを色々教えたり、帝国のレシピを教えてもらったりしていたのだ。

 何しろ以前の『ホワイトカーゴⅡ』は今の『ホワイトカーゴⅢ』よりかなり遅く、惑星ビーテンツからルニールまでは6日もかかっていたからな。

 それを聞いたギルテンス姉妹は、妹は喜び、姉は嘆くという真逆の反応を見せてくれた。

 

 こうしてようやくヴィツェネラ嬢(やっかいごと)がいなくなったので、ようやくサンライト(なじみ)イエローリップル(のみせ)で昼食をとることができた。

 そして、早々にこの惑星を離れるべく、仕事を受けるために、貨物輸送業者組合トランスポーターギルド貨物配達受付トランスポートカウンターに向かったところ、なぜかレイリア・ヘイブリーズが、ルシアと呼ばれたバルカウ種=牛獣人の彼女と共に待ち構えていた。

 レイリアはなぜかもじもじしており、少々気持ち悪かった。

「依頼を受けたいんだけど、なんかあったのか?」

 一応事情を聞いてみる。

「あのさあ……ちょっとおねがいがあるんだけど……」

「金ならやらん」

 レイリアの口から出るお願いといえばこれしかないだろうと、即座に却下した。

 が、付き添いのルシア嬢の表情をみると、そうではないらしい。

「いえ実は……」

「孤児院のガキ共が、以前アンタにもらったフィナンシェをめちゃくちゃ気に入ってさ。どこで買ったの? って聞いてきてさ、友達の手作りだっていったんだ。それでさ……その……作ってもらえないかなと思って……」

 ルシア嬢が話そうとしたのを遮って、レイリアが理由を話し始めた。

 恥ずかしいのか、普段と違って随分おどおどしていた。

「それなのにどうしてライアットさんにお金の無心なんかしたのよ? しかもギャンブルの軍資金なんて」

「うぐっ!」

 その恥ずかしがるレイリアに、ルシア嬢が不意打ちを食らわせた。

 レイリアもそのあたりの自覚はあるらしく、ぐうの音も出ないようだった。

「私も、この子とは違いますが孤児院の出身なので、お菓子なんか貰ったら嬉しかったりしたので……」

「お願い! ちゃんとお金は払うから……」

 2人は頭を下げ、必死な態度でお願いをしてくる。

 正直さっさと出発したいが、こう、必死に頼まれるのを振り切るのは寝覚めが悪い。

 アディルの方を見ると、

「マスターの御心のままに」

 と、返してくれた。

「わかったわかった。じゃあ、今から仕事を受けて、明日の朝に出発するつもりだから、明日の朝に持って来てやるよ」

 まあ、出発を明日の朝にするぐらいは問題ないだろう。

「ありがとう! じゃあついでに60万クレジットを……「ふんっ!」ぐえっ!」

 そしてレイリアが調子に乗り、金の無心をした瞬間、ルシア嬢の拳が

炸裂した。

 その後はルシア嬢に手続きをお願いし、、惑星ウェルサードへの『機械部品』200t・『繊維』120t・『医薬品』100tの輸送依頼を受けた。


 俺達はその足でまた生鮮食料品店マーケットに向かい、フィナンシェに必要な材料を買いそろえた。

 生鮮食料品店マーケットから戻ると、直ぐに貨物が届いたので、すぐに積み込みにかかる。

 それが終われば頼まれたフィナンシェ作りだ。

 フィナンシェの作り方は意外と簡単だ、

1∶オーブンを180℃に予熱しておく。

2∶フィナンシェの型にスプレーオイルをふきつけておく。

3∶バターを鍋に入れて常に混ぜながら加熱し、きつね色になるまで焦げたら別の容器にうつす。

4∶別のボウルに卵白とグラニュー糖、はちみつを入れて混ぜ合わせる。

5 ∶薄力粉、アーモンドプードルを合わせてふるい、混ぜ合わせる。

※フレーバーを加える場合、粉類と一緒にココアパウダーや抹茶パウダーをふるう

6∶適度に冷めた3の焦がしバターをしっかりと混ぜ合わせる。

7∶型の8分目まで流して180℃のオーブンで10~12分焼成する。

8∶綺麗な焼き色がついたら焼き上がり。

ケーキクーラーにのせ、粗熱が取れたら型から外して完成。

 フィナンシェといえば、あのインゴットの形が一般的だが、丸いのもある。

 さらには卵白ではなく全卵を使うとマドレーヌになるのでついでにそれも作っておく。

 さらにはフィナンシェでのこった卵黄がもったいないので、レシピを調べて柔らかいプリンもつくってみた。

 普段は堅いクラシックなプリンばかりだったから、ちょっと新鮮だった。

 そうして全て作り終わると、アディルが用意してくれたガーリックトースト・ボロネーゼ・グリーンサラダの軽い夕食をいただき、いつもの日課をこなして就寝した。

 

 

 翌朝は、待ちきれなくて人の船にまでやってきた、わけではなく、トラブルで昼番からそのまま夜番をやらされたらしいレイリアとルシア嬢に、パンケーキの朝食を出してやり、その後孤児院に頼まれたものを届けることにした。

 孤児院の子供達は物凄く喜んでくれたが、レイリアとルシア嬢は夢の中だった。


 そうして俺達は、孤児院をあとにしながら、惑星ルニールを出発した。

 


『ホワイトカーゴ』は最高速度は1.2光年で巡航速度(一番燃料効率がよい速度)は0.4光年。

『ホワイトカーゴⅡ』は最高速度は1.4光年で巡航速度は0.4光年。

『ホワイトカーゴⅢ』は最高速度は3光年で巡航速度は1光年。


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
情けは人の為ならず、っていうか、ショウンの料理の味が、確実に帝国の貴族たちの舌にも広がり(蝕み)始めているというね。そのうち帝国側のお偉いさんまで勧誘に来そう。 そしてルニールの孤児院たちの子供たちも…
フィナンシェか、自分的にはタイムリーな話題だなぁ。某台湾グルメ系YouTuberが古来より伝わるいやげものに真っ向勝負でフィナンシェ専門店を開いたら過去の悪行を掘り起こされて謝罪動画作らされると言う訳…
幼い頃から末端価格で 取り引きされてる味を 覚えさせて良いのだろうか…(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ