File21 惑星オルランゲアからの大規模代替輸送依頼① ストライキは、関係者はともかく、とばっちりを受けた方は迷惑極まりない
なんとか出来上がりました
俺達が受付に集まると、ササラは踏み台の上にあがり、それ以外の受付嬢は綺麗に整列していた。
ササラはマイクを受け取ると、何度か咳払いをしてから、俺達が集められた経緯が説明され始めた。
「貨物輸送業者の皆様。お集まりいただきありがとうございます。現時刻より30分前、12時17分発の惑星リーシオ行きスターフライト社貨物便1026便が、離陸直前にストライキを起こしました。その便には、近日中には惑星リーシオに輸送しなければいけないものが多々ありましたので、今回皆様に代替輸送をしていただきます」
集まった全員から、ため息や舌打ちが発せられる。
一部態度の悪いのがブーイングをするが、ササラに一睨みされるとおとなしくなった。
ササラの顔を見るに、彼女も相当に頭にきているらしい。
「さらに!現時刻より10分前、13時05分発の惑星リーシオ行きスターフライト社旅客便354便もストライキを開始。一部の御客様がチャーターを希望されました」
ササラの言葉に、その場に居た全員が驚愕の声をあげた。
惑星リーシオとは、じいちゃんたちドラコニアル人の主惑星である。
さらに、近日のうちにドラコニアル人にとってのお祭りがあることもあって、帰省客・観光客が多い。
それでストライキはたまったものじゃない。
テレビでも、最近のスターフライト社の不真面目さをバッシングしはじめている。
「積み込む荷物をどのように振り分けるかは既に終わっています。腕輪型端末に送った情報にしたがってください。なお、貨客船をお持ちの方は御客様を引き合わせますので、係員が付きます。その指示にしたがってください」
全員の腕輪型端末に情報が送られると、ぶつぶついいながらも、自分の船に向かっていった。
そして残された貨客船の持ち主には、係員が近づいてくる。
「ショウン・ライアットさんですね?今回担当をさせていただきますミィミス・ラッペリオともうします」
彼女は実に綺麗な姿勢のお辞儀をし、鈴の鳴るような美しい声で挨拶をしてきた。
そんな彼女は実に目立つ受付嬢だ。
それは彼女がサロック人。一つ目の種族だからというだけではない。
受付嬢の制服をピシリと着こなし、艶やかな長い黒髪はうなじのあたりで束ねられており、まさしく『出来る女』のオーラを放っている。
スタイルも良く、その存在を主張するバストは女性ですらも虜にする。
さらに、嘘か本当かは知らないが、彼女はその巨大で魅力的な瞳で、相手の嘘を見抜くと言われている。
もしササラがいなかったら、彼女こそ貨物配達受付の主任にふさわしいだろう。
「ショウンさんに運んでいただくのは『工業用部品』とお客様3名です」
「俺の船は速くないから、到着まで5日はかかるってのは説明してくれたのか?」
時おり、「聞いてない!」とか「だったら全開で飛ばせ!」とか言ってくるのがいるので、そのあたりを説明してもらい、それでもいいといってくる相手だけ、乗せるようにしている。
「祭りの開催日に間に合えばいいそうですから」
祭りまでは7日はあるから、それなら問題はないだろう。
そして俺には、1つ聞いておきたい事があった。
「仕事とは関係ないんだが、1つ聞いていいか?」
「何でしょう?」
「俺の作ったクッキーの末端価格ってのはどういうことなんだ?」
俺の質問に、ミィミスは真剣な表情で詰め寄ってきて、
「私達は仕事の頼み事をする時にお菓子を渡したりするんですが、ショウンさんのクッキーは10枚いり1袋で残業を交代してもらえるほどの価値があるんですよ!」
鼻息も荒くなりながら説明してくれた。
「そ…そうなんだ…」
が、部外者には全くわからない話だ。
「んっうんっ!それはさておき、御客様は先に停泊地に向かっておられますので、私達も急ぎましょう」
彼女は咳払いをしてたたずまいを改めつつ、俺の前を歩き始めた。
停泊地に到着すると、振り分けられた貨物が既に到着していたので、直ぐに貨物室を開ける。
そうして積み込みをしているときに、乗客がやって来た。
人数は3人。男1人女2人のドラコニアル人だった。
「お前が運び屋か。私と姉上、あと使用人1名だ、よろしくたのむ」
赤い鱗に黒い髪をした男と、青い鱗に白い髪の女と、白い鱗に黒い髪のメイド服の少女という組み合わせだ。
「責任者のショウン・ライアットです。荷物が積み終わりしだい出発しますので、少しお待ちを」
「わかった」
そういうと、3人は船から少し離れて積み込みを眺めながら、ミィミスと話しはじめた。
チャーター契約の細かいところの確認などだろう。
そのうちに積み込みが完了し、各部のチェックを済ませた後、
「おまたせしました。どうぞ」
お客を船に招き入れた。
乗客をソファーに座らせると、こちらから指示があるまでは歩き回らないようにとお願いし、操縦室に向かった。
シートに座り、貨物室の扉が閉まっているのを始めとして、全てのチェックを完了させると、管制塔に通信をいれる。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴⅡ』。出港許可を求む」
こちらの通信コールに答えたのは、奥さんと仲直りしてからは、またアツアツラブラブになったと噂のコビーだった。
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴⅡ』出港を許可する。船が多いからぶつからないように気を付けろ。そういや前にもこんなことがあったな』
「記憶に新しいね。原因も一緒だよ」
『災難だな』
「もうなれた」
コビーとの雑談を終わらせると、マイクを船内に切り替えた。
『出港許可がでたので出発します』
マイクを船内に切り替えて、出発を報告する。
「エンジン点火。微速前進」
宇宙港の外縁部まで船を進めたのち、超空間跳躍可能な宙域まで第一船速で移動すると、エネルギーチャージをしてから超空間に入ることになるいつもの流れだ。
ただし今回は、大量の船が同じように出発しているため、なかなか壮観だ。
「超空間跳躍の座標軸固定。目標惑星リーシオ。エネルギーチャージ開始」
そして数分でチャージは完了し、
「エネルギーチャージ完了。超空間跳躍開始」
超空間のトンネルをひたすらに進む事になる。
「超空間に侵入。これより自動航行装置に移行する」
オートドライブに後をまかせて客室にでる。
お客の3人は大人しくソファーに座っていてくれた。
酷いお客だと、トイレはまだしも、キッチンに入り込んで酒やら何やらを勝手に飲み食いしてる奴がいたりする。
そういうお客には追加料金をいただくことにしている。
とりあえずは説明をしておくことにする。
「無事出発しましたので、5日後の昼にはリーシオに着きます」
「そうですか。では5日間よろしくお願いいたします。私はフィナ・ヴルヴィアと申します」
「私は使用人のマリエラ・カデムです」
青い鱗に白い髪の女と、白い鱗に黒い髪のメイド服の少女は丁寧にお辞儀をしてきた。
「カリス・ヴルヴィアだ。ところで…」
そして、赤い鱗に黒い髪をした男が肩を組んでくると、
「姉上と使用人に手を出したら只ではすまさないからな…」
物凄い顔で睨み付けてきた。
気持ちはわからんでもないが、何となくシスコンくさいのは気のせいじゃないはずだ。
「ご不安なら女になっておきますが?」
「なんだ、お前はシュメール人なのか?」
このお客のシスコンぶりにあきれながらそう提案してみたところ、男は驚いた様子で、俺の首に回した腕を外した。
実は男でいろとか女でいろとか言ってくる連中は時々いる。
セクハラ目的は無視するが、トラウマがあったりする場合や、客が女性だけで、乗組員が男では不安だという場合だ。
事実、男の乗組員が女性客を襲ったという話が過去に何件もあるからだ。
まあ時々、女性客に男の乗組員が襲われたり、男性客に男の乗組員が襲われたり、女性客に女の乗組員が襲われたりすることもある。
もちろんこのお客が、シュメール人差別主義者なら話が変わってくるが。
「それで、どうします?」
「いや、男でいてくれ。お前まで女だと肩身が狭い」
とりあえずシュメール人差別主義者ではなかったらしい。
まあ、ドラコニアル人にはまず居ないんだがな。
新種族です!
単眼です!
モノアイです!
メインとはつなげれないエピソードばかり思い付いてしまいます
ご意見・ご感想・誤字報告などよろしくお願いいたします




