File176 惑星カブルスへの貨物輸送① 慣れない仕事はミスが多くなる
「御助力ありがとうございました」
俺は立体映像のヴルヴィア評議員補佐官に、お礼をいいながら頭をさげる。
『いえいえ。こちらの名誉にも関わることでしたから』
彼女に、忙しいのでと断られていたら、スピード解決はしていなかったかもしれない。
もちろん、途中参加のコーウェン・フッキネス評議員にも感謝している。
「また会える機会があれば、何かしらお礼をいたしま『では、新華祭の時に是非ともお願いいたしますね!』は…はい…」
ヴルヴィア嬢は、社交辞令的とはいえ、本気でお礼はするつもりではあった俺の挨拶に食い気味に返してきた。
これは間違いなく新華祭への強制参加に加え、『宝珠煮卵』と『黄金煉瓦』を提供しろという意味に違いなかった。
こうして電話が終われば、次は改めて集まってくれた人達に頭をさげる。
「皆様。御協力ありがとうございました。お陰で慰謝料を払わされないですみました」
すると、さっきの婆さんが前にでてきて、
「私たちだってあんたに助けてもらったんだ。おあいこだよ。それにあの女がいってることは支離滅裂だったからね。あんなのを信じる人は居ないさ。結局は指名手配もされてたんだから、結局はこうなってたさ」
と、ありがたい事をいってくれた。
周りにいた人達も、婆さんの言葉にうんうんと頷いてくれていた。
「でももし皆さんが来てくださらなかったら、事情を知らない人達を味方につけて、慰謝料を払わされていたかもしれません。本当にありがとうございました」
今回、最初に助けた人達が集まっておらず、ヴルヴィア評議員補佐官が電話にでてくれなかったら、周りの人間から攻められて、録音していた音声があったとしても信じてもらえず、慰謝料を払わされたかもしれない。
指名手配になったというから後々誤解は解けるかもしれないが、色々嫌な思いにはなっていただろう。
そこに、マッテルトン空港から旅客機の出発案内が流れ、それにしたがい、お客さん達は搭乗ゲートに向かっていった。
助けてくれたお客さん達が居なくなれば、次は貨物配達受付の受付嬢だ。
「色々御迷惑おかけしました」
俺は深々と頭を下げる。
「いえいえ。元々言動が怪しかったですからね。信じる人はいませんよ」
受付嬢も、あの婆さん同様にありがたい事をいってくれた。
「それで、依頼を受けたいんてすが」
「はい。どうぞご覧ください」
受付嬢が見せてくれた一覧を眺め、同じ行き先の依頼を積載量いっぱいまでうけていく。
その行き先は惑星カブルス。
観光惑星として有名な惑星だ。
本来はここで一泊するつもりだったが、こうなってしまってはしかたない。
「これでお願いします」
「かしこまりました。では、宇宙港に到着したらこちらにご連絡を。停泊地は同じところにお願いいたします」
「了解した」
こうして依頼を受け、いざ宇宙港へとなったわけだが、
『今現在、宇宙港の管制塔は復旧待ちのため、宇宙港管制塔が復帰するまでの間、マッテルトン空港管制塔が代理をしている。大気圏内航空機の入港は禁止にしているが、緊急着陸があった場合はそっちを優先させてもらう。今現在かなりいっぱいいっぱいなんでな、もう少し待ってくれ。…旅客の宇宙船から出航要請?デカイのには待ってもらうようにいっといてくれ!』
宇宙港の管制塔が機能していないため、マッテルトン空港管制塔が代理をしているのだが、宇宙港と空港では管制塔の規模や勝手が違うせいか、処理が追い付かずにてんてこ舞いになっているらしい。
こちらは急ぐこともないので、今のうちに宇宙服を着ておくことにした。
それから約30分ほどたってから、ようやく無事に出発することができ、宇宙港の同じ停泊地に到着した。
管制塔だけなら復帰ができそうだが、非常電源は作業員の緊急脱出用に残しておきたいらしい。
俺達トランスポーターが貨物配達を請け負って搬出するのも、不測の事態で宇宙港がやばくなった時に、被害を少なくするための対処らしい。
アディルには船内に残ってもらい、俺は気圧調整室を通って船外に出る。
通路への扉を手動で開けていると、アディルから惑星上のギルド受付。受付から運搬係のドロイド達へと連絡が渡り、機械体のドロイド達が貨物をもってやってきた。
『惑星カブルス行きのホワイトカーゴⅢはこちらで間違いありませんか?』
チェック用の書類を持ってきたのが生身の女性だったのでびっくりしたが、良く考えれば機械式人造人間でなければ宇宙空間で平然としているわけはないので、直ぐに落ち着くことができた。
なにより、宇宙服の通信機から声が聞こえてきたのが一番の理由だ。
「ああ、間違いない。船長のショウン・ライアットだ」
『では積み荷の確認をお願いします』
ちなみに積み荷は、調味料・手芸用品やその材料・医薬品・衛生用品といったものだ。
チェックをしているうちに、人形のゴツいやつが、無重力なのを利用してコンテナを運んできた。
彼らは無重力での作業に慣れているのか、手早くコンテナを積み込んで固定していく。
こうして積み込みが終了すると、ようやく出発ということになるのだが、マッテルトン空港管制塔に連絡したところ、処理が追い付いていないため、順番待ちをすることになり、約20分経過してから、ようやく出発することができた。
今回の目的地である惑星カブルスは、惑星ビーテンツから700光年離れており、観光惑星として有名な惑星だ。
ではこの惑星はなにが有名なのか?
惑星自体は緑も多くて海も広く、火山・雪山・砂漠・草原といった多様な自然もある。
その為風光明媚な景色がいくつもあり、保養地としても人気がある。
しかし最大の特徴は、多種多様な原生生物や植物だ。
見たこともない植物や果物・小さくて可愛い草食獣・巨大で獰猛な肉食獣・不思議な生態の昆虫類・見た目の非常に美しい幻想獣など、他の惑星では見られない生態系をしている。
その大自然を、専用のバスや飛行船に乗って観覧する、いわゆるサファリを、惑星全体で行っているのだ。
原生生物は巨大で空を飛べるものが多数いるため、軌道エレベーターの設置が難しい。
そのため宇宙港はコロニー式で、惑星への降下はシャトル。離脱はマスドライバーによって行われている。
つまりは、理由はちがうが惑星メレンデレクと同じ方式だ。
到着したら少しばかり体験してみても悪くはないだろう。
とはいえ到着までは、超空間を利用しても2日と22時間はかかる。
毎度の事とはいえ、時間潰しをどうするかを考えていたところ、
『おう、ショウン。聞いたぞ。ついに相棒をみつけたんだってな!』
突如、ホーゼンのおっさんから電話がかかってきたため、今回はその心配はしなくても良くなってしまった。
何故なら。ホーゼンのおっさんはあんな見た目なのに長電話が好きだからだ。
次週はリアルがちょっと忙しいのでお休みするかもしれません…
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