File175 惑星ビーテンツでの突発事故④ 自分が正義だと思い込んでいる奴が一番タチが悪い
『はい。もしもし』
何回かの呼び出し音で、フィナ・ヴルヴィア評議員補佐官に繋がった。
よく考えれば会議中とかだったらヤバかったかもしれない。
「もしもし、ショウン・ライアットです。今お時間よろしいですか?」
『お久しぶりですねライアットさん。貴方から連絡が来るなんて、どうかしたんですか?』
「はい。実はコーウェン・フッキネス評議員の奥さんだって人が目の前にいまして」
『はい?』
俺の言葉に、ヴルヴィア嬢は思いっきり困惑した声を出した。
「驚くのはごもっともです。ですがその話を鵜呑みにするわけにはいかないので、確認のために対面して貰いたいんです。惑星ビーテンツの貨物輸送業者組合の受付の番号でかけるので、そちらに出ていただけませんか?お時間が大丈夫なら、ですが」
『わかりました。大丈夫ですよ』
流石は評議員補佐官。こっちのトラブルがコーウェン・フッキネス評議員のところに飛び火するかもと判断し、面通しを承諾してくれたのだろう。
「というわけでちょっと貸してもらいますよ」
「はい。どうぞ」
そういって、自分の腕輪型端末を切り、受付の立体映像電話を借り、ヴルヴィア嬢に再度電話をかける。
すると立体映像のヴルヴィア嬢が大きく映し出された。
「ご足労すみませんね」
『いえいえ。フッキネス評議員の名前がでているなら確認しておきませんと』
すると、自称コーウェン・フッキネス評議員の妻と名乗るババアが、
「ちょっと!くだらない電話なんかどうでもいいから、すぐに土下座して、慰謝料の4000万クレジットを支払いなさい!」
と、わめき散らし始めた。
しかも要求額が上がってやがる。
「おかしいなあ。あんたの旦那はコーウェン・フッキネス評議員なんだよな?」
「ええそうよ」
「彼女はコーウェン・フッキネス評議員の補佐官のフィナ・ヴィルヴィア嬢だ。あんたが妻なら知ってるはずだが?」
立体映像を指差しながらの俺の言葉に、ヴルヴィア嬢が服の左胸にある評議員補佐官の身分証明書を拡大してみせる。
それを見たババアは明らかに動揺し、目が泳ぎ始めた。
「あっ…あら…!ドラコニアルの秘書なんていつの間に雇ったのかしらあの人ったら!」
「秘書じゃなくて補佐官な。配偶者なのにそのぐらいのことも知らないのか?」
「夫は仕事のことは話さないし持ち込まないのよ!ひ…補佐官にだってあったことがないわ!」
そして、ヴルヴィア嬢と目を合わさないようにしながら、苦しすぎる言い訳を吐いた。
いやいや、往生際悪すぎだろうこのババア。
すると、ヴルヴィア嬢がババアに声をかけた。
『ひとつよろしいですか?』
「なによ!」
『貴女はヒューマンで間違いありませんよね?そして貴女のご主人も』
「ええそうよ!」
ババアは、ヴルヴィア嬢の質問にイライラしながら返答する。
すると、ヴルヴィア嬢はにっこりと微笑み、
『惑星リーシオ代表評議員であるコーウェン・フッキネスは、私と同じドラコニアル人で奥様もドラコニアル人です。そして私は奥様にもきちんとご挨拶をしました。ですので、貴女がコーウェン・フッキネス評議員の妻であるはずがないのですよ』
ババアに対しての最後通告を言い渡した。
ババアはカッと目を見開いて、身体をぷるぷると震わせていた。
おそらく、まさか本人を知っている人間が出てくるとは思っていなかったという驚きと、余計なことを言いやがってという怒りと、どの様な言い訳をしようかという混乱?が、まぜこぜになっている感じだ。
するとヴルヴィア嬢が映っている立体映像に、
『どうしたんじゃ?さっきから儂の名前がでとるようだが』
話題の中心であるコーウェン・フッキネス評議員がひょいと顔をだした。
しかも、評議員の身分証明書を着けた状態で。
『はい。実はこの女性が、自分は先生の奥様だと言い張っていまして』
そしてヴルヴィア嬢が事情を説明すると、
『はあ?知らんぞこんな女は。お前さん、うちの妻とはあったことあるじゃろ?』
『ですが、あの方が「私はコーウェン・フッキネスの妻だ」と主張しているそうです。不倫相手とかなんですか?』
『恐ろしい事をいわんでくれ!浮気なんかしたら妻に殺されるわい!それに儂は妻とは一筋じゃ!』
コーウェン・フッキネス評議員はあっさりと否定した。まあ当然だよな。
『と、いうことだそうです。これで間違いなく、あなたはコーウェン・フッキネス評議員の妻でない事が証明されたわけですが、なにか反論はありますか?』
ヴルヴィア嬢はいい笑顔を浮かべながらババアに質問する。
「ま…間違えたわ!私の夫はコーウェン・フッキネスじゃなくてええと…ええと…「通用するわけないだろ!」ひいっ!」
しかし、まだしつこく言い訳をしてきたので、思わず怒鳴り付けてしまった。
ババアは誰かに助けを求めようと周囲を見回すが、その場にいた全員がババアを睨み付けていた。
するとそこに、誰かが通報したのか、男女取り混ぜた警官数人がやってきた。
するとババアは、
「助けてちょうだい!この連中が私を恐喝するの!」
と、警官に助けを求めた。
しかし警官は、
「詐欺及び恐喝。さらには身分詐称の容疑があるのはあなたよ!ヘベリア・アーコット!」
そういって若い女性警官2人がババア=ヘベリア・アーコットを拘束し、もう1人の男性警官が逮捕状を突きつけた。
その事実に全員が唖然としていると、警官の1人が事情を説明してくれた。
「この女性は、詐欺・恐喝・身分詐称などの容疑で、本日から指名手配されたんです。しかし指名手配された当日に逮捕されるなんて、前代未聞ですよ」
その説明を聞き、詐欺師というには頭が残念な印象があるので、おそらく自分の主張は絶対に正しく、私は可哀想なのだから他人から施されて当然と思い込み、他人に強要してきたのだろう。
さらには今まで権力者の名前をちらつかせて上手くいっていたことが、さらに自分が特別な人間だと思い込んだに違いない。
そう考えるとこのババアが指名手配されるのは納得がいく。
が、もちろんババア本人は納得するわけがない。
「離しなさいよ!私は何にも悪くないわ!悪いのは私の要求を受け入れなかったこいつらが悪いのよ!」
自分は悪くないとわめき散らし、警官から逃げようとするが若い女性警官の拘束からは逃げられないようだ。
「私は色々苦労してきたの!大変だったのよ!ひどい目にばかりあってきたの!そんな私が可哀想だとは思わないの?私が助けて貰えるのは当たり前じゃないの!」
するとババアは、自分がどれだけ可哀想な人間かアピールし、同情を買おうとする。
すると、俺の船に最初に乗った婆さんが、そのババアの前に歩みより、
「苦労なら、ここにいる全ての人間がしてることさ。あんたがどんな苦労をしてきたかは知らないけど、あんたより過酷な状況でも真っ当に生きている人なんて腐るほどいるんだ。そもそも自分自身を『可哀想』なんて言うのは、特別扱いしてほしいだけだの我が儘だ。誰1人あんたを助けてくれるわけないだろう!」
と、ババア=ヘベリア・アーコットに説教をかました。
ババアはガックリとうなだれるが、後悔したわけではなく、逮捕されるという絶望にうちひしがれているだけだろう。
そして不意に顔を上げて、お前のせいだとばかりに俺を睨み付けるが、
「あんたがちゃんと順番待ちをして、全員下船させろって言わなかったらこうはなってなかった。ま、あんたの自業自得だよ」
と、しっかりと反論してやったところ、言葉にならない金切り声をあげながら、そのまま警官に引きずられていった。
こちらが遅くなってしまいました
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