表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/262

File17 首都惑星ヴォルダルでの買い物⑤ 朝飯前の一仕事

お待たせしました。

視点変換 ◇???◇


私達は、ホテル・ヴァルス・ヴェーランの喫茶室で朝食を食べている。

昨晩の屈辱を噛み締めながら。

「あ~あ。せっかくリキュキエル・エンタープライズの社長に取り入れると思ったのにな~」

「全部あの女のせいよ!美味しいところを持って行きやがって…」

妹のぼやきに対し、私は昨日現れたムカつく女の顔を思い出していた。

「あの女が社長のマジ愛人なんじゃないの?」

「だったらあのクソガキが懐く訳ないじゃない!」

「そこから懐柔したんだよ多分」

声を荒げてしまったが、妹の言っている事は正しいと思う。

あの生意気なクソガキがあそこまで懐くのは、まずはあっちから攻略したに間違いない。

晋蓬皇国(しんほうおうこく)のことわざって奴を借りると、『将を射んと欲すればまず馬を射よ』って奴だ。

「私達もそっちから仕掛ければ良かったかなぁ…」

「姉さん、私のコーヒー飲まないでよ」

「いいでしょ別に」

「今は駄目でしょ。子供なんだから」

「それくらい誤魔化せるわよ」

私は今、カモを待ち受けるために子供の姿をしている。

カモは宇宙船の販売会場で、リキュキエル・エンタープライズの社長と仲良く話をしていた青年実業家だ。

なにしろ、大型船・超大型船のスペースで船を買ったほどだ。

そうとうもってるに違いない。


その時、喫茶室の入り口からムカつく奴が入ってきた。

「…姉さんあれ」

「ちっ…」

それは、昨晩私達の邪魔をした忌々しい女だった。

もちろん向こうは気がつくはずはない。

なにしろ今の私達は、親子にしか見えないからだ。


そいつは私達のすぐそばの席に座った。

私は妹に合図をおくり、体内通信を使うことにした。

こうすれば、会話の内容を聞かれることはない。

『にしても来ないわねあの男』

『あせることないわ。ここに泊まってるのは間違いないんだから』

周りから見れば、親子がニコニコしながら食事をしているだけに見えている。

私達はそれだけの経験を積んでいるのだから。


その時、喫茶室の入り口から、今度は警官が入ってきた。

先頭は制服を引き連れた私服だ。

『姉さん…』

『慌てないの。慌て出ていったら怪しまれるわ』

妹は不安そうにするが、ここで慌ててはいけない。

なにも、私達を捕まえにきたとは限らないのだから。


すると警官たちはあの女に近寄る。

私達の邪魔をしたあのいけすかない女だ。

私服は女の対面に座ると、

「見せろ」

とだけいい放つ。

いけすかない女も慣れた様子で、

「どうぞ」

とだけ言い、何かを手渡した。

「…どうやら間違いないようだな…」

私服は女を睨み付け、渡されたものを懐にしまった。

おそらく、証拠かなにかだろう。

それを対価に逮捕を免れるつもりらしい。

『どうやらあの女、同じ穴の狢だったみたいね』

『これをネタに、リオアース社長に入り込めそうね♪』

私達は、今後の作戦が旨い方向に転がっていくのを確信した。

でもその大物の前に、小物を釣り上げないといけない。

そしてその小物が来るであろう方向をみつめていると、いきなり身体に衝撃が走った。

私も妹も腕を掴まれ、頭を押さえられ、『脳』を収納している頭部を展開された。

もちろんその『脳』に向けて、何丁もの銃がむけられている。

「えっ!?なに?」

妹はパニックを起こし、状況が分かっていない。

しかしそれは、何にも知らない一般人の反応でもある。

そこで私は、今の自分の見た目を最大限利用し、

「ママっ!ママっ!」

と、精一杯子供らしくさけんでみた。

しかし、

「正体は判明しているぞネーダー姉妹。詐欺・窃盗が山ほどだ。身体の方も…捕獲できたらしい」

私服が私達の姓を呼び、罪状を読み上げ、身体も押さえられた上、『脳』を露にされた今、私達姉妹が逃げることはできない。

そんな私達とは対照的に、あの女は悠然とコーヒーを飲んでやがる。

考えるまでもない、あいつがサツを呼び、私達を売る代わりに見逃されたんだ!

「おいポリ公!そいつだって私等と同じ詐欺師なのに、どうして捕まえないんだよ!?」

私は精一杯の大声をあげてやる。

これでこいつの情報はリオアース社長にいくはずだ!

長い時間をかけて入り込んだらしいが、全部おじゃんにしてやる!

すると女はこちらをふりかえり、

「残念だけどそれはねえよ」

薄い光と共に、男に変わった。

それは、私達姉妹がカモにしようとしていた男だった。

つまりこいつは、男でも女でもあり、男でも女でもない雌雄同体のシュメール人だと言うことだ。

「騙しやがったなカタツムリ野郎!」

妹は唖然としていたが、私はへこむつもりはない。

それに、シュメール人だからといってこいつが詐欺師でないとは言えない。

「ふざけんな!そいつがシュメール人ならより詐欺がやり易いだろうが!」

それを訴えるべく声を張り上げたが、

「こいつは俺の知り合いで、リオアース一家とも縁がある。その上身分もはっきりしている。たまたま相談してくれたのでたすかったよ」

私服の警官が、にやついた顔をしながら、私の主張を絶ち切った。

その瞬間、私の意識は途絶えた。


視点返還 ◇ショウン・ライアット◇


「手間をかけたな」

「リオアース親子から食事の誘いを受けて、ロビーにいってなけりゃ気がつきませんでしたよ」

詐欺師の姉妹の『脳』が運ばれていくのを視界の端に入れながら、リュオウ警部に答える。

事実、レイアナに食事に誘われなかったら、なにも知らずにあの姉妹と行動していたかもしれない。

あの美少女御嬢様(がきんちょ)には感謝しなければいけないのかもしれない。

まあ、船の支払いは済ましてあるから、たいした金はもってないが。

「そういえば、船は買えたのか?」

「ええ。納船は6日後で、乗って帰るつもりなんです」

「随分面倒な手を使ったな」

「そのぶん安くなるんで」

初めはオルランゲアまで運んでもらうつもりだったが、自分で乗って帰れば二割引にしてくれるというので、そっちにしたのだ。

「だからこんなところに泊まってるのか?」

警部殿は、事情は理解しているだろうに、にやにやしながら嫌みをいってくる。

「分不相応ですよこんな高級ホテル。このまま別のホテルに泊まって、引き渡しの日まで首都観光でもしますよ」

「お前さんは星々を飛び回る癖に、惑星上に降りないからな。たまには観光もいいだろう」

「警部。容疑者の護送準備、終了しました」

世間話をしているうちに、制服の警官が警部殿に報告に来た。

「さて、仕事だ。そうそう、あの姉妹には賞金がかかっていたから、その支払いは後日だ」

「わかったよ」

そういうと、警部殿は部下を引き連れてホテルを出ていった。


これでようやく自由の身だ。

スタッフを呼び、朝食をオーダーすると、首都の観光案内のデータを眺めることにした。

用語解説


『脳』を取り出しての逮捕:これはつまり、ネーダー姉妹は脳を特殊なボックスにいれ、機械の身体を乗り換えることで、警察の目を掻い潜り、ターゲットの嗜好に合った外見に変えていたということ。

攻◯機動隊を御存じの方は御理解いただけると思います。


ネタが溜まっていても表現に苦しんでいる今日この頃です。


ご意見・ご感想などもよろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ