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ども、あいるですぅ。

ただいまぜっさんさむさにふるえておりますぅ。


「ふっ、くくっ、くっ」


現実逃避はやめよう。毎度のことだけど悲しくなるわ。


自分のアホさ加減に雄叫びをあげた日から3日が経った。

今は王都の裏通りでガラクタを入れていた袋に包まって少しでも暖を取ろうと必死になっている。


先ほどの声は息を吐く際に寒さで口が震えてあんな感じになった。

食料は昨日のうちに尽きた。馬車の時も含めて8日、よく持った方だと思う。今日はまだ何も食べてない。お腹の音がいつもより大きく感じる。


これから本格的な冬に入ってさらに寒くなるというのに、未だ仕事を見つけられてない。

これはもう、詰んだかもしれない。


腹の音が大きく鳴る俺の働き先はもはや見つけられないだろう。

俺の居場所はどこにもない。


そうだ、俺はこの世で要らない人間なんだ。デブでアホで色々と終わってて……



「……ッハァ!!」


いかんいかん!! 閉鎖空間にずっといるとなんだかネガティブな思考になってしまう!

日本の小説とか漫画だとこういうこと考えてる人って大抵死ぬんだよ。知らず知らずのうちに死亡フラグを立てかけてたやん。


駄目だ駄目だ。なにか楽しい事を考えよう。


そうだなぁ……うん。ダイエットに成功してモテモテになってる姿でも妄想してるか。

え、いい大人が何を考えてるんだって? ふふふ、歳がいくつになろうと、男ならモテモテになるのに憧れるのだよ。たとえ24のサラリーマンでもなぁ!


まあ俺はあくまでモテモテになりたいだけでいろんな人と恋人関係になりたいって訳じゃない。ハーレムを作りたいとかじゃなくてただもてはやされたいってだけだ。ここ重要。


背中を包丁で刺されたくなんかないしね。

この体じゃあたとえ痩せたとしてもハンサムになることはないと思うけど……


そこは前世で培った偉大な妄想力を駆使するとしよう。

自慢じゃないけど、これは他人に負けない自信がある。自分の理想の女性とカップルになってイチャイチャする妄想をする事で俺はブラック企業地獄の30連勤を乗り越えたからな。


現実に戻った時の悲しさと言ったら凄かったけど……どんなものでも俺の頭なら再現可能よ。

俺は偉大な妄想力を働かせてモテモテになる幻想を思い浮かべたーー



……………



「いや〜疲れた! 団長も人使いが荒いなぁ」

「まさか朝帰りすることになるとは俺も思わなかった」

「こんな大変な依頼なら言って欲しかったよね」

団長(あいつ)が重要な事を言わないのはいつも通り」


夜が明けて、朝日が昇る少し前、まだほとんどの人が寝静まっている時にその四人は王都の街を歩いていた。

彼らは兵団(レギオン)に所属する冒険者で町の外の魔物退治、治安維持に勤めている。


「………」

「どうしたの、リノンちゃん?」


そんな冒険者の一人がアイルの存在に気付き、彼を助けることになったのは奇跡的な事だった。


「あの袋……」

「どうしたん?」

「ゴミ袋がどうかしたのか?」

「あの中、人間が入ってる。魔力視でも確認したけど、弱々しい魔力が見える」


魔術師の言葉に周りの冒険者は大きく騒ぐ。


「え!? 死体!? ゴミ袋の中に死体が入ってるの!?」

「おいおいマジかよ……王都で殺人とか笑えねえぞ」


「二人とも落ち着いて……魔力があるってことは生きてるんだね?」

「だいぶ弱ってるだろうけど、たぶん」


「でもよ、なんで人が袋詰めにされてるんだ?」

「分からない。とりあえず様子を見てみよう」


「うわ、重! なにこれ!?」

「随分と肥えた人間が入ってたもんだな……貴族か?」

「うーん、そうは思いづらいけどね。身体中に泥が塗られてるし、そもそも貴族がこんなところで意味もなく転がってるとは考えづらい」


「訳あり、か……とりあえず、兵団(レギオン)に持って帰るか?」

「そうしよう。このまま放置じゃあ、幾ら何でも後味が悪い」


袋に入ってた人間、アイルは冒険者に拾われ、彼らに兵団(レギオン)へと連れて行かれることになった。


「にしてもこいつ本当重いな……」

「俺が交換で持とう。兵団(レギオン)までもうちょっとだ」




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