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神など存在しなかった。






ジンさんに誘われて夕暮れ時、街を出発した。

大きい上に重すぎるハルバードは移動の際邪魔になるとのことで、街に置いてきている。今手元にある武器は銅剣だ。


日帰りの冒険で野宿がしたことない俺は精神年齢40間近にも関わらず、柄にもなく少しワクワクしていた。……鼻歌を歌いながら隣を歩いているジャンヌがいなければもっと心躍っていたかもしれない。


「ふんふんふん! ここは空気が美味しいわね!」

「なあジャンヌ、何故お前も付いてきた。というかどこで盗み聞きしてたんだ」

「『壁に耳あり障子に目あり』ってことわざを知らないの? アイルが私に隠し事をしようだなんて、10年早いわ!」


この世界にもことわざってあるんだな……

まんま日本の(ことわざ)じゃないですか。やだぁー。


この世界は日本と全く別ベクトルの世界の筈なんだけど……ひょっとして転生者、もしくは俺みたいな前世が日本人の奴がいるのかもな……

王都から離れることがあれば、そういう奴を探してみるのもありかな。


「アイル聞いてる? このジャンヌ様のお話を無視するなんていい度胸してるじゃない」

「俺とお前は冒険者、俺の方が一つ年上だ。おら、年上を敬えや」


ジャンヌは相変わらず俺のことを舐めきってるな。

初めてあったときに比べればまだマシか……


俺も最近はジャンヌのことを理解してきたつもりだ。

あいつが俺に何と言おうと、俺は全てを受け流せばいい……



「私より身長低い奴が偉そうな口聞いてんじゃないわよぅ」


かちん!


前言撤回、やはりこいつのことは理解できん。

この体の身長の事は地味に気にしてるんだ。それを馬鹿にするというなら戦争だ。


「ジャンヌ、俺はお前のことが元からいけ好かなかったが、そろそろ本格的に勝負をつけようじゃないか。ええ?」

「何よ。やる気? セクハラで訴えるわよ」


この野郎、俺が一番恐れていることを……

ジャンヌも最近俺が何を嫌がるかを理解してきてやがる……!


「たいした実力もないお前は来ない方がいいんだって」

「私がアイルの言うことを聞くと思う? 意地でもついて行ってやるわ!」

「うぐぅ……」


ジャンヌは拳を見せて意地の悪い顔を向けてくる。

意思はとても固そうだ。


「もう……好きにしろよ」

「フウウゥゥ!!」


ジャンヌが奇声をあげてスキップしている。


結局説得に失敗した……

口喧嘩は元から得意ではないがここまで敗北続きだとなぁ……



「少年、若いのに溜息とは感心しないな」


ジンさんがニヤニヤしながら肩を叩いて話しかけてくる。

近所のおじさん的なノリで話しかけてくるのやめてほしいんだが。


「ジャンヌがまた我儘を……」

「アイルはどうしてジャンヌちゃんと一緒に行きたくないんだ?」

「そりゃあもちろん、心配だからですけど……」

「それだよ!」


ジンさんが顔を近くに寄せてくる。

怖い怖い。


「アイルは嬢ちゃんが俺たちと一緒に危険なところに行くのが心配なんだろう? 『心配だから来ないでほしい』そういえば済む話じゃねえか」

「それは……そうですけど」

「お前ももうちょっと素直になれよ! 嬢ちゃんはいい子だからアイルがそういえば分かってくれると思うぜ?」


今更素直になんてなれるか。

それにジャンヌに対して怨恨が無いわけでもないんだ。


初対面の時に浴びせられた罵声を忘れるわけがない。


「別に、心配というのは建前で、邪魔だというのが本心ですよ」

「も〜なんでそうやって心に壁を作るのかなぁ。正直になれよぅ」


ジンさんがウザい。

そのニヤケ顔をやめて欲しい。


「ジンさんには関係ないでしょう!」

「わー! アイルが反抗期だ〜!」


怒ったふりをするとジンさんはスタコラサッサとはるか前方へ行ってしまった。

これで静かになる……


「うちのジンがすまないね」


ボケ役が多い『平和主義者(パシフィスツ)』唯一のしっかり者であり、苦労人でもあるべラルゴさんが平行移動でやってくる。

……今の動きどうやったんだろう。


「あの人はいつもあんな感じなんですか?」

「ジンは人の色恋を見るとな、アドバイスという名のちょっかいをかけてカップルを破滅に追い込む『ラヴクラッシャー』と呼ばれてるんだ」

「初耳なんですけど」


『ラブ』じゃなくて『ラヴ』になってるところがガチっぽい。

本当にそういう人居るんだな……



「それにしても……俺とジャンヌが恋仲ってそれ本当に思ってるんですか?」

兵団(レギオン)では周知の事実だね」


一体俺たちのやりとりのどこを見ていればそう感じるのか。

恋とは程遠い冒険者達の想像力には恐れ入る。


「表面上は険悪に見えても蓋を開ければびっくり、二人は互いが互いを気にかけているじゃないか」


気にかけている、ねえ……

ツン100パーセントデレ皆無のジャンヌが? ありえないだろ。


「僕も君達が恋仲にあるとは思えないんだけど、兄妹のようには見える」

「兄妹?」

「ジャンヌは君に対して強く当たっているようだけど、なんだかんだで一番信頼をしているのはアイルなんだよ。今回の件も、アイルとしばらく会えなくなるのが寂しいから、わがまま言って付いてきたんじゃないかい?」


んん……そうなの?

ジャンヌは俺の邪魔をして楽しんでいる悪女だと思っていたのだが……本当にそうならジャンヌってものすごく可愛らしい存在じゃないか。


兄妹、兄妹かぁ……


「もしジャンヌが今の会話を聞いていたら……『「私が姉よ!」』と、言うだろう」


ジャンヌが俺をど突いて後ろから現れる。

やはり聞いてやがったか。俺の予想と見事にシンクロしたな。


次の発言は恐らく……


「『「アイルの方が弟ね!」』と言うだろう」


シンクロしたぁ……

ジャンヌの思考回路が大体読めるようになってしまった。


ああ……どうせなら兵団(レギオン)の受付にいる綺麗な受付嬢のお姉さんの思考を読めるようになりたかった。なんでこいつなんだ。ちくしょう。



ジャンヌは負けず嫌いというか……正確にいうと俺より下に取られるのが嫌いというのか。なんと幅の狭いことか。


「おいジャンヌ。背中に乗っかるな。下りろ」

「弟は姉を支えるのが義務なのよ」

「なんじゃそれ」


『身長が高いから私の方が上……つまり、姉よ!』と……ものすごい暴論振りかざしてきやがった。身長は関係ないだろうが。


やっぱりこいつが俺の一緒に居たいだなんてありえない。

こんな妹(もしくは姉)は嫌だ!



「うん……やっぱり仲がいい兄妹だ」


べラルゴは元気にはしゃいでいるジャンヌと、彼女を必死に支えているアイルを見て優しく微笑んだ。




《ガチャの愚痴》 ※前みたく飛ばしてもイイヨ!



6%なんて矮小な確率を信じた私が馬鹿だった。


天はそんなに私の何が気に入らないのか!

90連で四つとかおかしいだろ! それに被り三つとかさあ!


グラブル始めてまだ一年経ってないからキャラとか全然居ない方だよ!? それなのに三つ被るなんてぇぇぇぇぇァァァァァァァァ!!!!

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